アクセラが大幅改良で1.5Lディーゼルを設定新しい技術や装備を実用化するめどが立つとフルモデルチェンジを待たずにどんどん投入する近頃のマツダ。このほどマイナーチェンジした「アクセラ」にも、いくつもの新機能や新技術が投入された。 ハッチバックのスポーツには、これまで2.2L直4ターボのみだったディーゼルに、「デミオ」や「CX-3」に搭載されるのと同じ1.5L直4ターボが追加された。これでアクセラのエンジンは、スポーツには1.5Lのガソリンとディーゼル、それに2.2Lのディーゼルの3種類が、セダンは1.5Lガソリン、2.2Lディーゼル、それにガソリン2L直4エンジンにトヨタから供給されるハイブリッドシステムを組み合わせたハイブリッドの3種類が設定される。 まずは1.5Lガソリンエンジンを搭載した「アクセラスポーツ 15S プロアクティブ」(213万8400円)に試乗した。新色のマシーングレープレミアムメタリックは鉄の色。かつてマツダがある広島をはじめ中国地方で盛んだった「たたら製鉄」(古い製鉄法)をイメージしたという。一見地味だが、深みがあり、アクセラの彫りの深さ、抑揚の豊かさがよく出る色だと思う。マツダの赤に見飽きてきたところだったので新鮮に映った。5万4000円のオプション。 新技術G-ベクタリング コントロールを採用外観デザインの変更は最小限だ。パッと見てわかるのは中央のフロントグリルと両脇のヘッドランプをつなぐクロームメッキ部分の形状が変わったのと、アルミホイールの色とカタチが変わった程度。あと何がどう変わったのかはよくわからないが、フロントグリルが「アテンザ」や「CX-5」と同じような雰囲気をもつようになった。 今回のマイナーチェンジの一番のビッグニュースは「G-ベクタリング コントロール(以下GVC)」が盛り込まれたこと。これは、ステアリング操作に応じて、ドライバーのアクセルコントロールとは別に、システムがエンジンのトルクを自動的に加減することによって、四輪(前後輪)への接地荷重を最適化する仕組み。例えば、コーナーでクルマがターンインに差し掛かるとエンジンがトルクを瞬時にわずかに絞って減速Gを高め、前輪に荷重を移してハンドル操作の応答性を高める。定常旋回に移行すると、トルクを復元して車両を安定させる。ターンアウトの段階ではわずかに加速Gを高めてトラクションを確保するといった具合。要するに上手なドライバーがアクセルコントロールによって行っている一連の操作を、システムがその何倍も素早く、正確に行うものだ。 4月にテストコースでGVCを搭載したプロトタイプを試乗し、前後Gと左右Gの変化がマイルドになって、特に後席で身体の揺れが減るなどの効果を体感している。公道では運転席のみの試乗だったのと、元々悪い挙動のクルマではないということもあって、テストコースで感じたほどの明確な差を体感するのは難しかった。ま、おそらくこういうのは長期間乗ることで日々そこはかとなく良さを感じ、次に備わらないクルマに乗った際に不満を覚え、やっぱりマツダがいいなとなる仕掛け。コストアップの要素がないというのが素晴らしい。 1.5Lガソリン&1.5Lディーゼルに試乗エンジンとトランスミッションに変更はない。ガソリン1.5Lの自然吸気エンジンは決して力強くはないが、悲しくなるほど非力でもない。多人数乗車の機会が多い人、高速道路を走行する機会が多い人にはオススメしないが、それ以外の人ならOK。剛性感のあるボディやGVCをはじめとする優れた挙動が相対的に安く手に入るという意味では魅力的だ。 ただし、本命は新たに加わった1.5Lディーゼル搭載車だ。「アクセラスポーツ 15XD Lパッケージ」(268万9200円)に試乗してそう思った。最大トルク27.5kgmを1600-2500rpmという低いゾーンで発揮するということは、飛ばす飛ばさないにかかわらず、乗りやすいことを意味する。 ターボディーゼルエンジンは力強さはあるが、構造上アクセル操作に対する反応遅れを完全には解消できない。マツダのディーゼルエンジンには、EGR(排気再循環。NOx低減のために排ガスを再度吸気に混ぜる仕組み)をきめ細かく制御(増減)することで、アクセルに対する反応を正確かつリニアにする「DE精密過給制御」が入っており、通常走行時に多いパーシャル加速時にもリニアな反応を見せる。GVC同様、これもドライバーがおおーっと驚くような違いではなく、少しだけ、けれど毎回気持ちよく感じる技術。こういうマニアックな制御にファンは歓喜する。というか歓喜する人々がマツダ車を買っている。 随所に見える人間中心の開発哲学マニアックとは言っても「運転して心地良い」というのは必ずしもスポーティという意味ではない。人間中心というからには快適性、とりわけ疲れにくさを重視するべきだというのがマツダの考えで、アクセラをはじめ、マツダ車は理想のドライビングポジションにこだわる。人間が最も快適なのは寝ている間に自然にとる姿勢であり、宇宙飛行士が無重力空間で脱力した時の姿勢と考え、その姿勢に近い足首、膝、股関節、脇、肘の角度を保って運転できるポジションを理想とした。足を自然に伸ばした位置にペダルを配置し、オルガン式のアクセルペダルを採用する。 他のマツダ車同様、アクセラにもヘッドアップディスプレイ(初めてカラー化!)が一部グレードを除いて標準装備され、ドライバーの視線移動をできるだけ減らし、疲労低減が図られる。私個人はオルガン式ペダルは好みではないし、ヘッドアップディスプレイも邪魔に思えるが、こういうのは何を採用してもすべての人が満足することはあり得ないわけで、作り手が信念をもって標準装備し続けるのはよいことだと思う。 ほぼ完成を見たマツダのブランド哲学また、ディーゼルエンジンに以前から備わっていたピストン内部にダイナミックダンパーを備えてコンロッドの伸縮を抑え、振動とノック音を減らす「ナチュラル・サウンド・スムーザー」に加え、今回新たに燃料の噴射間隔を0.1ミリ秒単位で調整することでノック音を減らす「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」も加わり、ディーゼル特有のカラカラ・サウンドの低減が図られている。 ただし最近はヨソも優秀。PSAの1.6Lディーゼルはアクセラの1.5Lディーゼルよりもスムーズかつ静かで、308に積まれた場合、(少なくとも体感的には)動力性能でもアクセラを上回る。ミニの1.5Lディーゼルも、3気筒なのに驚くほど静かでスムーズだ。適価で出来の良い小排気量ディーゼル搭載車をお探しならば、そのあたりも試乗してから決めるべき。 今やマツダはマニアックな社員がマニアックなクルマ好きに向けてクルマをつくるブランドとなった。これはマツダが選択した戦略でもあるが、そこにしか活路がなかったとも言える。近頃の自動車のトピックといえば自動運転かPHV、EV、FCVといった次世代技術ばかり。どれも開発に途方もないコストがかかるため、グローバルでも年間販売台数150万台規模のマツダがすべてを自力開発することはできない。自動では動かないし、電気仕掛けでもないけれど、運転して心地良い、ドライバー(人間)中心のクルマづくりに徹しようというのが彼らの生き残り戦略なのだ。ということは、いつかレベル4の完全自動運転が実用化されれば話は別かもしれない。だが人間による運転が必要な時代のうちは、マツダを選ぶ意味があるということではないだろうか。 スペック例【 アクセラスポーツ 15S プロアクティブ 】 【 アクセラスポーツ 15XD Lパッケージ 】 |
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