ルーフの太陽電池で駆動バッテリーを充電できる新型「プリウスPHV」の試乗会は、新しい時代の幕開けを体感する有意義な日となった。その魅力ゆえに、おそらく筆者自身も購入するモデルになるはずだ。“おそらく”と付けたのは、まだ発表前なので、最終的な価格やグレード構成などの決断材料を待っているから。とは言ってもおおよその予想は付くので、その辺りも踏まえながらお伝えできればと思う。 今回はナンバー取得もできないタイミングなので、サーキットという限られた環境での試乗だ。触れられた時間も短く、まだまだ未確認要素もあるが、それでも見所は盛りだくさんだ。 まず、先代から採用している太陽光=自然エネルギーによる「ソーラー充電システム」の能力を大幅強化したうえに、駆動エネルギーとしても使えるようにして、計算上は年間で約1000km走行分のエネルギーを確保するという。もちろん、日照時間や屋根の有無といった駐車環境などに左右されるが、日本で最も日照時間が長いとされる長野県や沖縄県などでは、条件次第で1100kmを超える走行も可能らしい。 「もしかしたら充電も給油もしないでクルマを使えるかも!」そんなクルマ社会の未来を予感させる進化に心が躍った。 今までのプリウスから進化を果たすことが使命プリウスPHVを理解するためには、プリウス/プリウスPHVの開発責任者を務めた豊島浩二・MS製品企画ZFチーフエンジニアの発言を紹介するのが早いだろう。 「4代目(現行)プリウスは3代目プリウスからの“変化”モデル。しかし、2代目(新型)プリウスPHVは“進化”モデルです」 4代目プリウスも「TNGA」という新しいプラットフォーム構造を採用し、新ハイブリッドユニットを搭載しているが、モノ造りの発想としてはキープコンセプトであり、時代変化に合わせてモデルを変化させたに過ぎない。 しかしプリウスPHV(プラグインハイブリッド)は、HV(ハイブリッド)モデルに代わって次世代を背負っていく存在で、これからの時代をリードするべく進化を果たしている。その意味するところは、“変化”と“進化”という言葉を使い分けるほど、プリウスとプリウスPHVの間に明確な差が意図的に付けられているということだ。以下、具体的に見ていこう。 次世代AHSや11.6インチの大型モニターを採用まず見た目が大きく違う。相応の価格差が納得できる商品として明確に差別化されているのだ。左右8個ずつ配列されたLEDの照射パターンを駆使して、ハイビーム照射時に、対向車部分だけを自動でロービームにして眩惑を防ぐ「AHS(アダプティブ ハイビーム システム)」をトヨタブランドで初めて採用。 他にも、燃料電池車「MIRAI」との共通性を感じさせるフロントマスクや、軽量カーボン素材を骨格に使ったワイパーを装着できないほど造形に凝ったリアハッチ、プリウスよりワイド感が強調されたリアコンビネーションランプなどが目を引く。 また、トランク床下に搭載する大容量バッテリーを後方の追突から守るために、プリウスより80mm延長されたリアセクションと、バランス感やスケール感向上のために25mm延長されたフロントセクションが、見た瞬間からプリウスとの車格差を直感させる。 室内も特徴的だ。センター部にはタブレット端末のような11.6インチの大型モニターが鎮座している。慣れればとても便利だし、その存在が高級感も押し上げている。プリウスPHVからプリウスに乗り換えると、どこか寂しく感じてしまうほどだ。 運転姿勢の取りやすさと自由度の高さはプリウスと共通で、ハンドルとシート位置の調整範囲が広く、スポーツカーでもないのに潜り込んだスポーティなポジションが取れた。しかし、差別化の極みはやはり、走りと乗り味にあった! 135km/hまでモーターのみで加速可能まずはEVモードでスタート、ピットレーンからアクセルを踏み込むと従来のプリウス/プリウスPHVでは感じたことがない、鋭く力強い発進加速が始まる。コースに入ってさらに加速。上りセクションやカーブでの立ち上がりといったシーンでも、エンジンが一切かからないモーター駆動が気持ちいい。唯一、高速走行時に床までアクセルを踏むとエンジンが始動するが、これだけのモーターパワーがあれば、一般道でアクセルを床まで踏むようなケースはあまり無いだろう。 袖ヶ浦フォレストレースウェイのストレートは短く、やや上り勾配なので直線スピードは出にくいが、最終コーナーを60km/h程度で綺麗に立ち上がり、何km/hでエンジンが始動するのか加速しながら見ていると、70・80・90・100・110・120・122km/hで結局、1コーナーを曲がるためにブレーキを踏むことになった。この間、一切エンジンがかからない。135kmまでなら加速力が鈍らないままモーター駆動で走れるそうだ。 プリウスは2つの電気モーターを持っていて、1つは駆動用、もう1つは発電用に使っているが、新しいプリウスPHVは発電用モーターも駆動に使えるデュアルモータードライブを新搭載した。駆動用モーター1基なら最大出力72ps(53kw)だが、発電用モーター31ps(23kw)が加わるため、先代プリウスPHVで感じた100kg前後の大型バッテリーの重量ハンディを感じることなく、鋭い加速を実現しているのだ。 クラウンやレクサスに比肩する上質な乗り味もう一つ驚いたのが乗り味だ。新プラットフォームのTNGAを採用した現行プリウスの走行振動が少ない乗り味も悪くないが、新型プリウスPHVはハイブリッド版プリウスを軽く凌駕する上質な乗り心地を披露する。 プリウスと乗り比べると、手や体に伝わって来る走行振動の有無や程度がまったく違う。プリウスPHVの電動ドライブ時の世界観は、クラウンやレクサスLSの上質感や高級感に比肩する。高速走行時までエンジンが掛からない領域があるからこそ、そこで目立つ風切り音やロードノイズ対策を徹底的に施した効果だという。 さらに、足回りも含めて、乗り味がプリウスとは違う。率直に言ってプリウス以上に無駄な車体の動きがないお金の掛かったものだ。ボディの剛性感が高く、リアはどっしりと安定感も安心感もあるし、縁石などに乗った際にも乗り心地が破綻しない。カーブを曲がる際の素直なコントロール性も気持ちがいい。 重量級の大型バッテリーをリアのサスペンションの直上に配置してリアの落ち着き感を向上させ、どっしり構えたリアにバランスするようにフロントのスタビライザー(車体の傾きを抑えるアイテム)を強化するなど、価格相応の高級車的な乗り味に仕上げてきている。と、まだまだ書き足りないが、続きは一般道を試乗した後にしておこう。 EV航続距離やハイブリッドの実燃費にも期待EV航続距離はJC08モードで60kmを超えてきた。効率を高めた省エネ設計、大量の電力を蓄えるバッテリー、そしてプリウスの約1.6倍近くまで高められたエネルギー回生能力の賜物だろう。ほとんど給油しないで電気だけで使う人もけっこう増えるはずだ。 充電方法も今回は200V充電に加えて専用回線工事が不要な100V充電を用意。さらに急速充電(チャデモ、約20分で80%)、前半で解説したソーラー充電が可能になっている。走行中ならエンジンを強制的に回して30分程度で80%まで充電できるチャージモードも使える。 また、回生性能やバッテリー性能を考えると、ハイブリッドモードでも車両重量が軽いプリウスより実燃費は良さそうだ。 八方美人な商品力を手に登場する新型プリウスPHV、購入したくなる気持ちも解ってもらえるのではないだろうか。何はともあれ、一般道での試乗が楽しみになってきた。 スペック【プリウスPHV】 |
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