まるで“4ドア911”のようにすでにプロトタイプの開発同行記をお届けしたポルシェのラグジュアリー4ドア・スポーツカー、パナメーラの量産市販モデルの試乗会に参加した。ミュンヘン空港の第一と第二ターミナルの間に特設されたパビリオンでのプレスカンファレンスを終えた後に、そこに並んだ多くのギャラリーの視線を感じながら出発するという、自分がセレブになったようで何だか気恥ずかしい状況のイベントであった。 パナメーラ・シリーズを担当するDr.ゲルノート・デルナー(Gernot Doellner)はニュー・パナメーラの使命は「デザイン」「快適性向上」、そして「パワートレーンの進化」と説明する。 それではデザインに関する報告から始めよう。エクステリアでは、一体感の無かった取って付けたようなヘッドライト、もさっとしたフロント・エンド、さらに3ボックスと2ボックスを決めかねたような、もっこりしたリア・クオーターなど、決してスタイリッシュとは言えなかった先代のデザインが、ニューモデルではとくにサイドビューがまるで“4ドア911”のようにスッキリしている。Cピラーのキックが無くなったのが効いているようだ。 この伸びやかになったプロフィールのために、一見すると長くなったようだが、新旧の差は僅か34mm、すなわち全長は5049mmである。この原因は2920mmから30mm延長されたホイールベースにある。正確には前輪位置が前方へ移動し、フロントのオーバーハングが短くなっている。全高は5~9mmほど高く、全幅は6mmワイドに、それぞれ僅かに変わっているに過ぎない。またLEDヘッドライトは特徴的な4ポイント・デイドライビング・ライトが存在感を放っている。 デジタル化によるインテリア革命インテリアは革命的に変わった。“バミューダ・トライアングル”とあだ名を付けられた、どこに何があるかすぐには見当がつかないメカニカル・スイッチ類は消え失せ、代わってブラックパネルを持つタッチパネルとなった。とはいえスマートフォンのようなフル・センサーではなく、プッシュするメカニカル・タイプである。 一方、ドライバーの正面にはアナログ式のタコメーターが伝統に従って鎮座しているが、その両脇には7インチのデジタル・モニターがはめ込まれており、デフォルト状態では左右二個の丸形メーターだが、必要に応じた情報を呼び出すことが可能である。そしてダッシュボード中央には、12.3インチの大型デジタル・マルチ・ディスプレイがレイアウトされている。 今回のインテリア・デジタル化で、ようやく他のラグジュアリー・ブランドに追いついたカタチになったが、出来れば今後は“後だしポルシェ”ではなくて、“先進ポルシェ”が標榜できるようになって欲しい。 ダウンサイズと同時にパワーアップさて、ニュー・パナメーラは新しいパワープラントも手に入れた。「4S」に搭載されるのは、2基のターボを90度のバンク角に納めた排気量2894ccの新開発V6ガソリン・エンジンで、最高出力は440馬力、最大トルクは550Nmをそれぞれ発生する。組み合わされるトランスミッションは同じく新開発の8速PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)、カタログ上のダイナミック性能は0-100km/hが4.2秒(スポーツクロノパッケージ装着時)、最高速度は289km/hである。 「ターボ」には同じく90度のバンクに2基のターボをレイアウト(ホット・インサイド)した排気量3996ccのV8ガソリン・エンジンを搭載。こちらの最高出力は550馬力、最大トルクは770Nmである。注目の性能は0-100km/hが3.6秒(スポーツクロノパッケージ装着時)、最高速度は306km/hをマークする。また排気量4806ccからのダウンサイジングのお陰で、燃費は100kmあたり9.4Lから9.3L(およそリッター10km程度)となり、旧モデルよりも最大で100kmあたり1.1L向上している。 一方、ドイツおよび欧州向けにはディーゼル仕様の「4S Diesel」も用意されており、こちらは3956ccのV8ビターボで、最高出力422馬力、最大トルク850Nmを発生。0-100km/hは4.3秒(スポーツクロノパッケージ装着時)、最高速度285km/hと発表されている。排出ガス規制はいずれのエンジンもユーロ6をクリアしている。 911を彷彿させるダイナミック性能ルートはミュンヘン空港から郊外のテーゲルンゼーという湖畔の保養地へ向かう。南アフリカ・ケープタウンでのプロトタイプ・ドライブからすでに6ヶ月が経過したので記憶はやや薄らいでいる。そこでスマートフォンに残されている取材メモを見ながら記憶を辿っての検証である。 テストに臨んだのは「ターボ」、ミュンヘン空港を後にして先ずはアウトバーンでのハイスピード・クルージングだ。タイトな高速路進入路でクイッと曲がる挙動は、後輪ステアのお陰だ。このシステムは最大で2.8度、時速70kmまでは後輪が前輪と反対方向へ切れ(逆位相)、最小回転半径が小さくなって取り回しが楽になる。一方、それ以上の速度では後輪が前輪と同じ方向に切れ(同位相)、ホイールベースがバーチャル的に延長されたような効果をもたらし、高速域での安定性が増す。ニュー・パナメーラには、スタイルだけでなく走りも“4ドア911”と呼んでも言い過ぎではないダイナミック性能が与えられている。 8速PDKのシフトワークは規範的でショックはトルコン並み、シフトタイミングも瞬時におこなわれる。ギア比は6速が0.84で最高速に達し、7速(0.68)、8速(0.53)はさらなるオーバードライブとなる。 また、空車重量2トン、許容総重量では2.5トンにも達するパナメーラのブレーキは十分に信頼に足る性能を有していた。スタンダードのブレーキパッドには2021年からのEU規制に先行して銅を含まない素材が採用されているが、高速からの繰り返しのブレーキングでもコントローラブルで安定した制動力を発揮してくれた。もちろん9000ユーロ(約104万円)を投資すればおよそ20kg軽いセラミック・ブレーキディスクも入手可能だ。さらに頻繁なブレーキングによる温度に左右されない素晴らしい制動力は投資額に相応しい。 ちなみにダイナミック性能の進化を示すパラメーターにもなっているニュルブルクリンク北コースのラップタイムだが、ニュー・パナメーラは7分38秒を叩き出している。これは997シリーズの911 GT3を凌駕するタイムである。 快適性にも磨きをかけた4ドアGT改善されたのはダイナミック性能だけではない。4ドアGTということで快適性の更なる向上も留意されている。まず、ボディそのもののダイナミック剛性は8%向上。加えてPDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール)が4700ユーロ(約54万円)の追加料金でボディのアクティブ・ロール・コントロールを行う。これは48Vボードネットワークを採用したベントレーのベンテイガとは違って、局部的なDC/DCコンバーターを採用し、マックスウェル製のウルトラ・キャパシタがアクチュエーターに瞬時にエネルギーを供給することで、ロールを抑える。 またサスペンションやタイヤの細かな改善で、特にリア・パッセンジャーに伝わっていた微振動も感じられなくなった。「乗り心地、快適性の向上はシャシーの細かな改良の積み上げです。」とシャシー担当のDr.マンフレッド・ハラー(Manfred Harrer)は苦労を語った。 ニュー・パナメーラの正式公開は、10月に開催されるパリ・オートサロン。価格はすでに発表されており、「4S」は1591万円、「ターボ」は2327万円となる。日本へのデリバリー開始は来年初頭になるだろう。 スペック【 パナメーラ 4S 】 【 パナメーラ ターボ 】 |
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