次世代スバルの幕開け肌身で感じている方もいるだろうが、ここ近年のスバルは絶好調だ。水平対向エンジンや独自の4輪駆動システムであるシンメトリカルAWDなど、昔から支持を集めているこだわりの走りに加えて、やはり衝突被害軽減ブレーキなど予防安全のパイオニア的な役割を担うアイサイトの商品力と魅力がその後押しをしているのだろう。 数字を並べるのは好きではないがその成長があまりにも凄いので紹介しておくと、日本のみならず北米市場でも好調で、2011年対比で2015年を見ると売上高で2倍超えの3.2兆円。営業利益は驚異の15倍超えの5655億円。スバルの前身である中島飛行機から数えて生誕100周年の来年に向けて、今やグローバルでの販売台数は100万台を超える勢い。 そして、その好調は今後も継続するであろうことを、今日、肌身で感じてきたので紹介しよう。そう思わせたのが、新型インプレッサの存在。プロトモデルではあるが、タイミング的にほぼ市販モデルと捉えても良い状態。とは言えまだナンバーが付く前なので、伊豆の修善寺にあるサイクルスポーツセンターを借り切っての試乗会となった。 まず意識すべきはインプレッサそのものではあるが、より正確に言うと「次世代スバルの幕開け」とメーカー自らが言うほど、根底から全てを見直して劇的なる商品力向上を果たすべく造られた新プラットフォーム「スバルグローバルプラットフォーム」の効果。 結果を先に述べることになるかもしれないが、このインプレッサから採用が始まったので、スバルの中で末っ子のポジションを担うはずのモデルが、兄貴分のモデルを商品力で抜く“ねじれ現象”が当分の間起きる可能性がある。それを確信犯的に見越して次世代に向けて舵取りをしたインプレッサの乗り味等を順に紹介していこう。 社会的責任を果たすという思い『愛でつくるクルマが、ある』 多くの人が乗るクルマだからこそ、全ての人から愛されるグローバルクオリティを。資料の冒頭に書かれたこの表現に、無機質な機械であるクルマなのに…、と思う方でも次のように説明されれば意味が解るだろう。それはクルマ自体の作りもさることながら、スバルが自動車メーカーとして社会的責任を果たそうとする強い思いに表れている。その典型的な例が、現行インプレッサの価格帯を引き継ぎながら、乗員保護エアバッグは当然として、コストの掛かる歩行者保護エアバッグ、さらには最新のアイサイトver.3を全車に標準装備してきたことにある。 それは今現在のアイサイト搭載率83%を100%にする第一歩でもあり、このような装備は販売台数が多い売れ筋の価格帯のクルマに付けてこそ真価が高まるという思いがあるのだろう。まだアイサイトを体験したことのない方にお伝えしておくと、一度その世界を知ってしまうと、不思議と同様装備の無いモデルに乗ると慢性的な不安を感じてしまう。それほど、衝突被害を軽減してくれて、状況によっては衝突を回避してくれる“かもしれない”装備の安心感は計り知れない。 ちなみにスバルの調査では、乗員を含めて人が怪我をする人身事故率は61%減少。さらに詳しく見ると、クルマ対クルマの事故は83%減り、人対クルマは52%減ったというのがアイサイトの効果。もう解ると思うが、今の課題は歩行者など人との接触事故の被害をいかに軽減するかにある。クルマを運転する方は意識するべきだが、今はクルマの衝突安全性能が上がった効果もあり、死亡事故の半数以上が歩行者などの非乗員という状況。乗員をいかに守るかも大事だが、次世代への課題はいかに非乗員である車外の人を守るかが大事。 街中を走っている比率の高い、コンパクト系のボンネットが小さいモデルは、歩行者と接触したときに頭がボンネット上端の硬い部分に当たる確率が高く加害性が上がる。しかも歩行者と接触するケースでは、アイサイトなど最新の衝突被害軽減装備でもケアしづらい横からの飛び出しが多い。だからこそ、歩行者保護エアバッグの標準装備にスバルがこだわるわけだ。『愛でつくるクルマが、ある』の意味、伝わっただろうか。 内外装ともに質感向上。特に室内は好印象もちろんオーナーが直接的に得られる分野にも多くの愛がある。まずはデザイン。主観になるが、カッコよく内外装ともに質感が向上。外装はガンダム的な男性心を刺激する硬派な角張り系のスバル調は継承しつつ、要所に丸みを取り入れて空気とも親和性の高いエレガントさを見せているのが好印象。ちなみに空気抵抗を示すCd値は0.278と、プリウスなどのモノフォルム形状のモデルに近い数値を実現。 そして特に変化を感じるのが室内。オーナーなら車格があがったことを乗り込んだ瞬間に感覚として掴めるはず。まず車内中央に鎮座するセンターコンソールの幅が21mmも広がり高級感が向上。カップホルダーは縦ではなく横に並ぶようになったうえに、ナビゲーション周りのデザインもスッキリとして質が高まった。またメーター中央とダッシュボード中央のモニター表記が、色使いも鮮やかで分かりやすくなったのが好印象。さらに肌に触れる箇所の触感にもこだわるなど、スバルが苦手とされていた要素が見事に改善されている。 もちろん、もともと得意だった室内の広さなどは正常進化で強化。後席の足元は26mm拡大しているのに加えて、センターコンソールの厚みが増えた分だけ前席の座席間にも余裕が生まれてユッタリしている。しかも、ドアウィンドウ下部の肩口を左右各15mmほど広げており、座った時の窮屈感もない。 驚きは、それだけ室内の幅を広げているのに、ミラー部で測るボディ最大全幅が拡大しておらず、さらに言えば最小回転半径など取り回し性能に影響を及ぼしていないこと。他にも居住性向上だけでなく荷室容量も5リットル分増えているし、荷室開口部も100mm広くなり積載性が上がっているなど、改めてプラットフォームを原点から作り変える効果を実感した。 上位モデルを喰う車格超えの走り肝心の走りは、もう解るだろうが当然として進化している。まずボディは体感として強靭でありガッチリしている。2.5トンのSUVを時速90kmで斜めから衝突させる次世代の衝突試験も考慮して造られた効果も含めて、ボディの横曲げ剛性で90%、ねじり剛性で70%。それだけでなくハンドリングを左右するサスペンションだけをみても、フロントのサスペンション支持を含めた横剛性で70%、リアはサブフレーム支持を含めて100%も向上。もう、この数字を見ただけでどんな走りかは想像できてくるのではないだろうか。 そう、乗り味はまず走行振動が抑えられたしっとり系。サイクルスポーツセンターは、路面の凹凸が少なくとっても綺麗なこともあるが、無駄なところが動かずに上質に走る印象で、この世界観は兄貴分のモデルを喰う車格超えのレベル。気になるのはタイヤが発生する音くらい。それを踏まえると、試乗車には17インチと18インチが用意されていたが、18インチの発生音はコーッという高周波帯で、17インチはゴーッという低周波帯。この評価は好みで分かれるはず。 次にハンドル操作の素直さとダイレクト感は見事だ。ハンドル周りのパーツの取り付け剛性の高さも寄与するのだろうが、前述した各部の無駄な振動が無いことも相まって、タイヤが路面を噛んでいる感覚が鮮明にわかるので安心感がとても高い。しかもフロントタイヤの駆動がハンドルの手応えに与える影響がとても少なく、絶えずスッキリしているのも好印象。 マニアックな視点を入れると、旋回時の車体の傾きを防ぐリアのスタビライザーをボディ直付けにした効果が大きい。リアサスペンションのサブフレームをボディに取り付ける部位のゴムブッシュは、どのモデルでも大型でグニュとしたゴム感を出しやすい。そのグニュ感を低減しつつ、さらには追い込んだような走りを含め、どのようなハンドルの切り込み速度にもダイレクトで素直な反応をドライバーに与える大きな役割を担っているのがリアスタビライザーのボディ直付だと直感。もちろんボディがしっかりしているから、そのような変更の効果が的確に出るのも見逃せないが、工場の生産工程を踏まえると、乗り味を求めてとっても面倒な作りを採用した作り手側の努力分野だ。 17インチと18インチ。ベストな選択は?また17インチ(2.0i アイサイト)と18インチ(2.0i-S アイサイト)で悩む方のためにさらに掘り下げていこう。18インチだとハンドルからの手応えはより鮮明になり、運転が上手くなったかのように操作性があがりスポーティに走りやすくなる。それを基準に考えると、17インチはハンドル操作をした瞬間の反応は穏やかになるが、丁寧に操作すれば奥深いグリップ感を得られるし、路面追従性も上がるので個人的には好き。 また18インチにはブレーキを使ったトルクベクタリング機構が入るが、これは正直もう少し煮詰めが必要とも感じた。通常時に活躍するイメージで捉えていたが、乗って得た印象の限り、雪道などでハンドルを切り込んでいった際に曲がる力が操作通りに発生しない(曲がらない)時に、横滑り装置の予備段階で入るお助け制御的なもの。言うなればスキール音が発生する直前くらいから制御が入り出す感覚。 実際のケースに当てはめると、何かしらの状況判断ミスによりオーバースピードでカーブに入った時に、こっそり制御を入れてヒヤッとしないようにするお助けアイテム。考えは良いのだが、制御が入るとクルマがグイッと曲がるのが解りすぎるし若干唐突。しかもまだタイヤに余力はあるのに、路面のアンジュレーションを拾って瞬間的にタイヤ負荷が高まった時にも制御が入り、ハンドルの操作と曲がり方が調和しなくなる。これを踏まえると、カッコよさでは18インチだが、素直さと懐の広さが好みの僕は17インチといったところ。 本音の要望としては……最後にエンジンとトランスミッションも進化。個人的には、従来から使っているチェーン式CVTの進化ではなく、多段ATにしてもらいたかったのが本音。今のままでもダイレクト感はあるし、十分すぎるほど加速は気持ち良いし、CVTでもダイレクト感のあるステップ式のMT運転もできる。なによりスタートがとってもスムーズだし、実燃費に優れるのはわかる。価格帯を踏まえると求めすぎかもしれない。しかし、あれだけボディが良いから、さらにとことんスポーティにも使えるトランスミッションが欲しかったのも事実。 最近はこの締め方が多いが、今回も思ったのだから仕方ない。旋回時の安定感を出せるが若干コツコツ感が生じやすい伸び側を若干抑制した足回りの動きがあり、それにより路面の綺麗なサイクルスポーツセンターでは好印象で終始したインプレッサ。その真価は、様々な路面の一般道での乗り心地と、販売価格が出た時に全て判断できるだろう。何はともあれ、今の時点でスバルのクルマへの“愛”は十分過ぎるほど感じることができた。 スペック例【 インプレッサ スポーツ 2.0i-S アイサイト(プロトタイプ) 】 【 インプレッサ G4 2.0i-S アイサイト(プロトタイプ) 】 |
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