間違いなくスタイリッシュさを増した新型ポルシェ パナメーラの国際試乗会は、ドイツ・ミュンヘン空港のターミナル間にある広場に設けられた特設会場を拠点に行なわれた。たくさんの人が行き交う中に新しいパナメーラがずらりと並べられた様は、まさに圧巻。試乗に向かう際にも、熱い視線に晒された中で発進させることとなった。 外の光の下で見たそのフォルムは、ひと目でパナメーラと解るアイデンティティを備える一方、間違いなくスタイリッシュさを増している。とりわけ911のそれと似た輪郭を描くようになったサイドウインドウ、そしてルーフからリアエンドにかけての造形が、スポーティさを際立たせている。それに較べるとフロントは、特に強い陽光の下では、やや平板に映らなくもない。似合うのは陰影がしっかりと出る、濃色系のボディカラーではないかと思う。 何しろ最大で21インチのタイヤ/ホイールを履き、オーバーハングが短縮されているだけに、遠目にはコンパクトにすら思えるが、たまたま隣に先代パナメーラが並んだ時には、逆に実際以上にワイドに見えて驚かされた。見慣れた日本の街中で、一体どんな表情を見せるのかは、今から興味深いところだ。 ハイテク化されたインテリアには弊害もインテリアは最新のハイテクを随所に盛り込みつつ、一方でポルシェの文法をしっかりと踏襲したデザインとされている。メーターナセル内の5連メーターのうち、アナログ計は中央の回転計だけで、その左右には実は7インチのTFTモニターが据えられている。必要に応じてアナログ計的にも、各種情報の表示にも、あるいはナビゲーションの地図表示にもと、様々なコンテンツが映し出される。 更に、ダッシュボード中央には12.3インチの大型タッチスクリーンが陣取る。また、センターコンソールには静電タッチ式のスイッチが設えられている。ずらりメカニカルスイッチが並んでいた先代に較べれば、雰囲気が格段に洗練されたのは間違いない。 難点は、階層構造のメニューは覚えるのに時間と慣れが必要なこと。また、エアベントの開閉、ルーバーの向きを変えるのまで画面から操作しなければいけないのはやり過ぎだろう。手で操作した方が、よほど早いのに。この辺り、機能と使い勝手のうまい落とし所に到達するまでには、少しの時間が必要だろう。 「ターボ」らしいピックアップが快感今回の試乗車は最高出力550psのV型8気筒4.0Lツインターボエンジンを積む「パナメーラ ターボ」と、同440psを発生するV型6気筒2.9Lツインターボエンジンを搭載した「パナメーラ 4S」の2モデル。まずは「パナメーラ ターボ」のキーを受け取り、空港をあとにした。 従来の4.8Lから排気量が縮小されたエンジンだが、スペックの通り動力性能に不足はなく、流れの速いアウトバーンで、更にその流れの先を行く加速を、いつでも右足ひとつで引き出すことができる。先代で感じたワープしそうなほどの浮遊感はわずかに薄れた気もしたが、代わりに8速化された新しいPDKが瞬時の変速でエンジンの美味しいところを探り当て、小気味良いレスポンスを演出している。 特に快感なのが、追い越しなどの際、半分くらいのアクセル開度まですっと踏み込んだ時のいかにもターボらしいピックアップ。迫力あるサウンドも相まって、アウトバーンを我が物にできたような全能感を味わえた。 ボディの剛性感はもっと上を期待したい実は今回、ターボは2台の別の個体を試すことができたのだが、好印象だったのは21インチタイヤを履き、新開発の前後3つのチャンバーを持ったエアサスペンション、リアホイールステアを組み合わせた仕様だった。しっとりとした重みを持ち、リニアリティも抜群のステアリング、低速域ではコツコツとした硬さがあるが、速度を上げるにつれてフラットになる乗り心地、200km/hオーバーが100km/hにも感じられるようなスタビリティなど、これまた完全に新設計のシャシーはポテンシャルの高さを実感させてくれた。 一方、これに電子制御式スタビライザーの「PDCC Sport」を加え、20インチタイヤを履いた別の個体は、乗り心地や直進性がやや落ちる感があった。仕様の差なのか、個体の差なのかは、改めてテストする必要がありそうだ。 また、ボディの剛性感、剛性ではなくあくまで“感”は、圧倒的というほどではなかったとも言っておく。前席は左右ともフロア振動も出ていたから、一般的には良くてもポルシェの車体としては、もっと上を期待してしまう。この辺り、量産に入った時には良くなっていることを願いたい。 リニアリティと俊敏さが際立つ「4S」続いて、本当は順番が逆の方が良かったんだけど……と思いつつ乗り込んだのが「パナメーラ 4S」。しかしながら、その走りっぷりにはまったく不足に思わせる要素はなかった。個人的には、むしろこちらをこそ気に入ったぐらいだ。 確かにターボのようなキック力は無いが、代わりに回転の上昇につれてパワーが盛り上がるリニアリティに富んだ味付けとされたエンジンは、軽やかな吹け上がり、そして澄んだ味わいのスポーティなサウンドとも相まって、爽快なドライビングフィールを味わわせてくれる。しかも鼻先はターボより明らかに軽く、市街地での取り回しも軽快なのが嬉しい。 4Sのサスペンションはターボほどは硬められておらず、乗り心地はしっとり、しなやかな印象だ。それでいて200km/hオーバーでもスタビリティに不満は無いし、コーナリングも、まるでひと回り小さなクルマに乗っているかのように俊敏。これなら、あらゆる条件、あらゆる舞台で、大いに満足させてくれるに違いない。 ナビ連動の「ポルシェ・イノドライブ」も採用電子制御コ・パイロット機能「ポルシェ・イノドライブ」にも触れておきたい。これはナビゲーションをセットすると、目的地までのもっとも高効率なドライブパターンを導き出して走行する機能。速度標識を認識しての自動減速、加速も行ない、アウトバーンでもとても役立ってくれた。単に自動運転化に進むのではなく、いかにそれを効率的で気持ち良いものとして行なうかを考えたワザありのシステムだが、果たして規制速度と実勢速度の乖離が大きい日本では、どう働くのかは興味深いところと言える。 試乗を終えて、しみじみと実感したのは、スポーティとコンフォートの両面を進化させるという新型パナメーラの狙いが、まさにストレートに達成できていたということに尽きる。単なる走りについての話に留まらず、ユーティリティや先進装備なども含めたトータルパッケージとして、欲張りな目標が見事に具現化されている。強いていえば、全方位に進化した一方で、圧倒的な強みや個性が感じにくくなっている感があったのも事実だが、今後、いつもの通りラインナップが増えていくにつれて、その辺りのフォーカスも明確になってくるだろう。 大成功を収めても手綱を緩めることなく、むしろ更にアグレッシヴな進化を希求した新型パナメーラ。この1台に、まさにポルシェの今の勢いが端的に表れていると言うことができそうだ。 スペック(パナメーラ 4S)【 パナメーラ 4S 】 スペック(パナメーラ ターボ)【 パナメーラ ターボ 】 |
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