BMWの最新ディーゼルに一気乗りもうだいぶ前から、ヨーロッパではディーゼルターボエンジンを搭載したクルマの人気が高く、国によってはガソリン車より数多く売れているというのはよく知られた事実だろう。最近になって、その傾向に若干陰りが出てきているという情報も皆無ではないが、そういったヨーロッパで好評なディーゼルモデルが次々と日本でも発売されている。 そんななかにあってBMWも、主要なディーゼルエンジンを新開発の新世代ユニットに変更するとともに、そのラインナップを一段と充実させて日本市場に送り込んできた。そこでBMW試乗会があったのを機に、MINI、1シリーズ、3シリーズの3モデルから1車種ずつのディーゼルモデルを選択して、河口湖周辺を走らせてみた。 MINIクーパーSD 3ドア、BMW 118dスポーツ、BMW 320d Mスポーツ、がその3モデルで、いずれもコモンレールダイレクトインジェクションに可変ジオメトリーターボを組み合わせ、しかもディーゼルとしては珍しいアルミ合金製クランクケースを採用するなどしてガソリンエンジンと大差ない重量に抑えたという、新開発の2リッター4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載している。 ファミリー最高レベルの好燃費【MINIクーパーSD】最初に乗ったのはMINIクーパーSDの3ドアだった。MINIのディーゼルエンジンには大きくいって2種類、チューンの違いまで入れると4種類ある。まず3ドアと5ドアのクーパーDに搭載されるのが1.5リッター直3ターボで、116psを発生。同じく3ドアと5ドアのクーパーSDが2リッター直4ターボの170ps仕様を搭載する。 一方、ボディがクラブマンになるとクーパーDでも2リッター直4ターボの150ps仕様を搭載し、クラブマンのクーパーSD用は同じ2リッター直4ながら190psにパワーアップされる。トランスミッションも3ドアと5ドアが6段ATなのに対して、クラブマンの場合はいずれも8段ATが組み合わせられる。 試乗した3ドアのクーパーSDは、170ps/4000rpmのパワーと360Nm/1500-2750rpmのトルクを発生する2リッター直4ディーゼルターボに6段ATを組み合わせたモデルで、JC08モード燃費は23.8km/L、税込み車両本体価格364万円。試乗車はレザーシートをはじめとする多彩なオプションを装着していたが、走りに関係する機能部品的オプションとしては、ジョン・クーパー・ワークス・パッケージがあげられる。 ディーゼルでもMINIらしい走り【MINIクーパーSD】MINIクーパーSDで走り出して、エンジン以外で印象に残ったのは、脚が硬いことだった。ここにはジョン・クーパー・ワークス・パッケージのスポーツサスペンションが大いに関係しているはずだが、なかなか骨のある乗り味のクルマだと思った。 しかし冷静に観察すると、タイヤからの突き上げはキツくないし、硬いけれども決して不快な乗り心地ではない。剛性の高いボディがサスペンションやタイヤの硬さを見事にいなしている、という印象なのだ。 その硬めの脚は当然、いわゆるゴーカートフィールを明確に演出していて、ステアリングとスロットルを巧く連係させれば、クーパーSDは俊敏に向きを変えてくれる。MINIという素材のキャラクターも効果的に作用して、エンジンがディーゼルでもスポーティなクルマは実現できると、実感させてくれたのだった。 パンチの効いた力強い加速【MINIクーパーSD】では肝心のディーゼルエンジンはどうか。まず音だが、アイドリング音をクルマの外で聞くとたしかにディーゼルだと分かる。けれど、いったんキャビンに収まってしまえば、エンジン音は確実に耳に入ってくるものの、ディーゼルかどうかの判断は不可能に近くなる。しかも不快なバイブレーションも感じられない。 そこで、走り出す。低速トルクの強力なディーゼルエンジンのキャラクターから期待するとおり、クーパーSDは踏み込むと同時に一気にトルクを立ち上げ、車重1290kgの3ドアボディを力強く加速させる。そのグイッとくる感じ、「クーパーSD」という名と、その外観に恥じないパンチだといっていい。 そのまま踏み続けると、クーパーSDは気持ちよくスピードを上げていく。したがって、動力性能はまったく充分という印象だが、トップエンドに至ってもガソリンエンジンのように盛り上がる感触はなく、比較的早くトルクが収束していくのがディーゼルらしい。 エンジン音は高回転まで回すとそれなりに高まるが、その音質はガソリンエンジンとほとんど区別のつかないもので、ここでも音や振動の点でディーゼルを明確に意識させられることはなかった。 世界的にも貴重なコンパクトFR【118dスポーツ】続いては1シリーズのディーゼルモデル、118dに乗った。エンジンは2リッター直4ターボで、150ps/4000rpmのパワーと320Nm/1500-3000rpmを発生、8段ATと組み合わせられて後輪を駆動する。縦置き横置きの違いと駆動輪、それにトルクの数値は異なるものの、MINIのクーパーDクラブマンとほぼ同仕様のパワートレーンだといえる。 この118dには実は3仕様がある。試乗した118dスポーツの他に、118dスタイル、118d Mスポーツがあり、車両本体価格はそれぞれ365万円、365万円、385万円とされる。JC08モード燃費公表値はいずれも22.2km/Lである。 全長4340×全幅1765×全高1440mm、ホイールベース2690mmという1シリーズのボディサイズは、今やフロントエンジン/後輪駆動の4/5ドアモデルとしては世界でも最小のものといえる。つまり1シリーズ自体が、貴重なクルマなのである。 マイルドかつ滑らかな加速感【118dスポーツ】MINIのような癖のあるデザインではなく、正統BMWの雰囲気を受け継ぐインテリアに収まって走り出す。ベースは同じ2リッター直4ディーゼルターボでもチューンが異なるのと、車重が1480kgとクーパーSDより200kg近く重いことの相乗効果で、発進の印象はクーパーSDよりマイルドに感じられる。 クーパーSDのような、踏んだ途端にグンッと出る感じがなく、必要にして充分な勢いでスムーズに走り出す、という印象なのだ。それ以降の加速感も同様で、あくまで滑らかに、淡々とスピードを上げていくように感じる。8段ATの変速がスムーズなのと、エンジン音がクーパーSDより抑えられているのも、そういった印象を強調しているのかもしれない。 スポーツの名を持つとはいえ、比較的ソフトなサスペンションに16インチのタイヤを履いた試乗車は乗り心地にも硬さを感じさせず、まさにファミリーカー向けという印象を与える。筆者は個人的に、シフトパドルが備わっていないのが寂しく感じたが、シフトパドルを含めて、もう少しスポーティで骨っぽい乗り味を望むのなら、20万円を上乗せしてMスポーツを手に入れれば、その望みは叶えられるのではないかと想像できる。 いずれにせよ、このクルマの後継モデルは前輪駆動になってしまうという説が現実味を持って語られている昨今、現行1シリーズが独特の価値を持つクルマであることは、記憶しておくべきだと思う。 BMWの2Lディーゼルターボで最も高性能【320d Mスポーツ】新世代ディーゼルBMW3台乗り、最後は320d Mスポーツである。BMWサルーンの定番というべき3シリーズのMスポーツに搭載されるのは、2リッター直4ディーゼルターボのなかでも最も高性能な190ps/4000rpmと400Nm/1750-2500rpmを発生するユニットで、当然ながら8段ATと組み合わせられる。公表JC08モード燃費は21.4km/L。 このエンジンとトランスミッションの組み合わせは、搭載方法の違いなどを別にすればMINIクーパーSDクラブマンと共通するが、全長4645×全幅1800×全高1430mmという立派なサイズを持つに至った現行モデルは、320d Mスポーツの場合に車重は1570kgに達する。プライスもそれなりに高価で、ベースグレードでも車両本体価格は512万円になる。 320dの場合も、車外で聞くアイドリング音はガソリンエンジンとの違いを感じさせるが、キャビンに収まってしまうとディーゼルかどうかを音で判断することは難しくなる。高回転、といっても4000rpm前後だが、まで回してもその傾向は変わらない。 粗さはなく、雰囲気はある【320d Mスポーツ】前記のようにボディが大きいため車重はそれなりに重いが、さすが190ps/400Nmのエンジン、118dの150psユニットよりもパンチがあり、踏めば明確にトルクの膨らみを実感させながら、爽快にスピードを上げていく。今回は試すチャンスがなかったが、高速クルージングも充分にパワフルかつ快適なものだろうと想像できる。 試乗車はMスポーツだったから、若干固めたサスペンションに18インチのポテンザを履いていた。したがって、脚の動きはそれなりに締まったものだが、乗り心地に粗さはなく、適度な俊敏性と適度な重量感が同居した印象の上質な乗り味を提供してくれた。 それに加えて、Mスポーツの常でステアリングの操舵力が重めなのも、それを好むかどうかは乗り手次第ではあるものの、このクルマの特徴のひとつだといえる。つまり、ディーゼルエンジン搭載のスポーツサルーン、という雰囲気が明確に演出されているわけだ。 かつてのネガを感じさせない新世代ディーゼルターボエンジンを積んだMINI、1シリーズ、3シリーズは、いずれもかつてのディーゼル搭載車に顕著だったネガを事実上感じさせない、洗練されたクルマに仕上がっていた。今回は存分に試すチャンスがなかったものの、エンジン軽量化の恩恵で、コーナリングもガソリンエンジン車に遜色ないレベルにあるのではないかと想像できる。 だから、軽油価格の安さと好燃費によるランニングコストの低さや、ディーゼルエンジン独特の低速トルクの力強さに美点を見出してディーゼルターボ搭載のBMWを選ぶのは、まったく適正な行為だといっていいだろう。 だがその一方で、やっぱりガソリンエンジンの回転感が好きだという層も確実に存在するはずで、そういった人々のために多彩なガソリンエンジン搭載車がBMWにはラインナップされているが、そんな中のやや特殊なモデルに「330e」というプラグインハイブリッドがある。これはエコ系の最先端といえるクルマで、ゼロエミッション走行も可能だが、走行モードの選択やバッテリーのフル充電など、通常のガソリン車と比べると余計にやるべきことが幾つかある。 その点ディーゼルターボモデルは、近くに軽油を扱っているスタンドさえ見つけてしまえば、給油インターバルも通常より長く、面倒がないのもメリットのひとつではないだろうか。 スペック例【 MINI クーパー SD 】 【 118d Sport 】 【 320d M Sport 】 |
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