アウディの目指す世界はR8に乗ればわかるアウディの好調な販売の原動力であるブランド力の向上に大きな役割を果たしてきたR8がフルモデルチェンジした。少しでも早くインプレをチェックしたい人は先のページに飛んでもらうとして、R8は“アウディらしさ”の象徴とも表現できるモデルなだけに、少しその役割や背景を紹介しておこう。 「そもそもアウディってどんなクルマ?」「ドイツ・プレミアムブランドの中での特徴は?」といった質問を受けることがしばしばある。実は、R8に乗ればすべてが明確になる。その機会を見つけるのはなかなか難しいとは思うが…。 他のハイパフォーマンス・ブランドにも言えるが、アウディで言えばRSのように、メーカーのモデル・ライン全体の性能を象徴するようなハイパフォーマンス・ラインが存在する。中でもブランドのDNAを決めるモデルがR8で、そのパフォーマンスはアウディの市販モデルが将来追求していく道筋を示している。R8に乗れば、アウディが目指している世界、アウディらしさがわかるのだ。 サブブランド「アウディ スポーツ」が日本でも!レースで技術を磨き、市販車でその技術を実用化する。「レースは技術の実験室である」の信念の下に、アウディはレース活動を続けている。空力、効率の良いエンジン、四輪駆動システム、ドライバーの疲労を軽減する様々な技術など、レースで鍛えられた技術は無数にある。レースカーと市販モデルは表裏一体なのだ。 もちろん、厳密に言えば市販モデルとレースモデルでは求められる要素が異なるケースもあり、そこを整理して反映させるために「アウディ スポーツ(Audi Sport)」というレース活動も業務の一つとして行うアウディのサブブランドが存在する。日本でも今年から展開が始まっていて、RSモデルとR8はここに属することになった。簡単な話が、メルセデスAMGやBMW Mのような明確なサブブランド展開を、アウディも日本で始めたのだ。 意識しないまま高性能に浸れるという美学R8に乗るとアウディらしさがわかると書いたが、典型的な例を紹介しよう。同じスーパースポーツの姉妹車であるランボルギーニ ウラカンには、駐車場に続くスロープなどでフロントスポイラーを擦りにくいように、車高を上げるリフター機構が付いている。しかしR8にはそれがない。R8は見た目こそ低いのだが、実はそのままでリフターを使ったウラカンと同レベルの地上高が確保されている。 空力性能やカッコよさはもちろん、使い勝手も併せ持たせる。特別な操作を必要とせず、気負うことなく、誰にでも高性能モデルを普段の足として使って欲しい。先に言ってしまうと、新型R8が見せてくれるのは“高性能であることを意識せずに高性能の世界にどっぷりと浸かれること”に美学を求めているような世界だ。そう考えると、他のアウディ車もレベルの差こそあれ、同じようなDNAを持っていることに気づくはずだ。 直噴ターボ全盛時代に自然吸気V10を選択ちなみに、並み居るスーパースポーツの中でR8の特徴を挙げると? という問いには「ふだん使いできるスーパースポーツモデル+官能的なNAエンジン」の組み合わせにあると説明された。 R8のリアウインドウ越しには、5.2L V10自然吸気(NA)エンジンが搭載されている。ここ近年のハイパフォーマンスモデルは、より高性能を求めてターボ化するのが通例だが、あえてその選択をせずに、気持ち良さやコントロール性を重視してきたところは興味深い。また、先代(初代)R8では、4.2L V8 NAモデルと5.2L V10 NAモデルがあったが、新型ではV10のみになっている。 そのV10は最高回転数が引き上げられ、8700rpmまで淀みなく回る。組み合わされるのは7速のデュアルクラッチ式トランスミッション、アウディでいう7速Sトロニックだ。また、今回はV10プラスという、エンジンは同じだがパフォーマンスをより追求した仕様も設定されている。ノーマルV10比で、最高出力が70ps増しの610ps、最大トルクが20Nm増しの560Nm。0-100km/h加速では、V10は3.5秒、V10プラスはさらに速い3.2秒をマークする。 鳥肌モノの回転上昇を見せる自然吸気V10今回の試乗コースは富士スピードウェイだ。ドアを開け閉めした時点で、バスッと気密性が高く、各部の振動が少ないことに気がつく。コクピットに収まると、相変わらずペダル位置が手前なことは気になるが、先代以上に包まれ感があり、着座位置も若干低められて、運転に集中できる環境も高められているようだ。 まずはV10でコースインする。昔であれば選ばれた人しか操れないような最大出力540ps、最大トルク540Nmのクルマが、ショックもなくスムーズに走り出す。凄い時代になったものだ。 アクセルを踏み込みたい気持ちを抑え、一般道をイメージした加速を試してみたが、エンジントルクの圧倒的余裕や、ターボラグとは無縁なNAエンジンの素直さによって、“超”を付けたくなる滑らかな変速と速度上昇に舌鼓を打つ。やはりデュアルクラッチは大排気量NA車にこそ合う。なぜならターボ車の場合、MTのようにクラッチが直結するデュアルクラッチでは、ターボが働くまで素の排気量で加速する間、ややトルクが不足する感覚までがダイレクトに伝わってしまう。その点、NAエンジンで5.2Lもあると、回転数など関係なくどこからでも余裕のトルクを発生するからだ。 ちまちました話はこれぐらいにして、R8の本領をレポートしていこう。アクセルを床まで踏むと、直噴とポート噴射を使い分けるデュアル燃料噴射が、回転域により最適な噴射を行ないつつ、8700rpmまで鳥肌モノの鋭い吹け上がりをみせる。加速が良いクルマは幾らでもあるが、ずっとアクセルを踏み続けたいと思わせる官能的な回転上昇はR8の大きな魅力だ。アクセルの戻しにも鋭い反応(回転落ち)を示すため、少しだけ荷重をリアに移したい時など、数ミリのアクセル操作に的確に反応する素直さも素晴らしい。 新型で最も進化したのは旋回性能それ以上に魅了されたのがコーナーリング性能だ。最初のコーナーを曲がっただけで、先代R8に対して最も進化したのが旋回性能だと直感した。 全幅が約40mm広い1940mmになり、アルミとカーボンの複合成型によって15%の軽量化と40%の剛性向上を果たしたボディ。さらに前後重量配分もタイヤの太さに最適化されたフロント42%、リア58%の理想値を実現している。これらの素性により、その旋回力は路面に吸い付くようなレベル。感覚論になるが、先代ではタイヤが滑るか横滑り防止装置が介入していた首が痛くなるような速度域でも、新型は不安も無く涼しい顔でこなせる。正直、同じVWグループならランボルギーニのウラカンなど、ピュアスポーツ・ブランドのスーパーモデルが求めるべきパフォーマンス領域では、と思ったほどだ。 クワトロはビスカス式から電制多板クラッチへ同時にこの速度域で何かあったら、人間の反応速度を超えて一般的には対処が難しくなるものだが、日常使いできるスーパースポーツモデルとして、安全と安心まで確保しているのも凄い。それを可能にしている要素のひとつが新たな電子制御4輪駆動システムだ。 先代は機械的なビスカス式の4輪駆動方式だったが、新型は電子制御多板クラッチ方式。基本はフロント20:リア80だが、状況に応じて前輪の駆動を自在に操れる。旋回時にオーバースピードなどでリアが滑りそうになった時には、あからさまにフロント駆動が強くなりグンッと車体を引っ張って、リアの滑りを収めながらクルマを前に進める。この“スピンさせようと思ってもできないほど賢い4輪駆動制御”によって、ダイナミックモードで走ると「こんなに鋭くノーズが入ったら普通はリアが滑って破綻する!」と思えるほど鋭い操舵への反応を示しながら、かなり豪快な旋回を楽しめる。 また新型R8に設定されたパフォーマンスモードを選択すれば、それら安定性を手助けしてくれていた横滑り防止装置の介入も必要最小限になり、腕に覚えのあるドライバーも楽しめる。完全にアシストをオフにしてドリフトすることも可能だが、 この速度域で冷静にクルマをコントロールするのはプロの領域だ。 最後にハイパフォーマンス版のV10プラスだが、アクセル操作に対するエンジンの反応が鋭く、さらには吹け上がりも鋭くなり、感覚的には別物のクルマになる。しかし、停止時からの発進などで多少乱暴な反応にもなるので、個人的には「ふだん使いできるスーパースポーツ」としてノーマルのV10がしっくりくる。 価格はV10 5.2 FSI クワトロで2456万円、V10 プラス 5.2 FSI クワトロは世のスーパースポーツ勢と真っ向勝負となる2906万円となる。 スペック【 R8 V10 5.2 FSI クワトロ 】 【 R8 V10 プラス 5.2 FSI クワトロ 】 |
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