8年ぶりのフルモデルチェンジアバントとはアウディにとって、ステーションワゴンを意味する呼称なのはご存知のとおり。A4アバントは1992年のアウディ80アバントから数えて今や6世代目になるが、これまでに80とA4を合わせて、A4系アバントの累計生産台数は220万台を超えているという。 テレビCMでもアピールしているように、そのアウディA4アバントが8年ぶりにフルモデルチェンジした。それはA4セダンと同じく、進化型モジュラープラットフォーム「MLB evo」をベースにして新設計されたもので、開発に当たっては走行抵抗の削減をメインテーマに設定したという。 それを実現すべく軽量化とエアロダイナミクスを磨き込み、車重は最大で120kg減量、欧州仕様ではワゴンボディでクラストップのCd=0.26を達成している。エンジンは2リッター4気筒TFSI(直噴ガソリンターボ)で、FWDの190psとクワトロ用の252psの2種類があり、いずれも7段Sトロニックと組み合わせられる。 その結果、スタート/ストップシステムやエネルギー回生機構を標準装備するなどしたエンジンの効果もあって、特にFWDモデルでは従来型と比べて33%の燃費向上を達成しているという。さらに、先進システム「アウディプレセンスシティ」に「アクティブレーンアシスト」を加えるなど機能を拡充し、予防安全と乗員保護の面でも進化している。 ボディサイズは僅かに拡大ボディサイズは先代より僅かながら拡大されて4735×1840×1435mmになり、ホイールベースも2825mmへと若干延長された。それにともなって居住空間が広くなったほか、ラゲッジスペースも5人乗り状態で505リッター、後席バックレストを畳んだ2人乗り状態で1510リッターと、それぞれ15リッターと80リッター拡大された。 モデルレンジはFWDの2.0TFSIと同スポーツ、クワトロの2.0TFSIと同スポーツの4車種で、税込みプライスは順に547万円、585万円、626万円、653万円となる。今回、横浜とその周辺を舞台に試乗したのは、FWDの2.0TFSI スポーツで、車両価格585万円にS lineパッケージなどのオプションを加えて、662万5000円のクルマだった。 スムーズな変速、静かな室内が印象的アウディらしくかっちりと仕立てられたコクピットに収まると、目の前にはディスプレイ部分の大きなメーターパネルと水平基調のダッシュボードが広がる。ダッシュのエア吹き出し口の下側は、スポーツの場合アルミパネルが張られているが、アルミがいいかウッド調がいいかは好みの分かれるところだろう。 シートは座り心地、ホールド感とも上々で、ハイトアジャストを使って低めの着座位置を手に入れることもできる。コンソール上に位置する7段Sトロニックのセレクターは、最近のクルマとしては比較的オーソドックスなデザインに仕立てられていて、僕のようなオールドボーイにも違和感なく操作できるのが好ましい。 それをDレンジに送ってスロットルを軽く踏み込むと、A4アバントは滑らかに走り出した。2リッター4気筒直噴ターボは、190ps/4200-6000rpmのパワーと320Nm/1450-4200rpmのトルクを生み出し、7段Sトロニックを介して前輪を駆動、1580kgの車重を走らせる。 パフォーマンスは取り分け印象的というわけではないが、実用的にはまったく充分以上という印象で、スロットルの踏み加減に応じて常に望むだけの加速が手に入る。7段Sトロニックの変速がスムーズなこと、メーターの100km/hはDレンジ7速で1500rpmというギアリングの恩恵もあって、室内が静かに保たれることも印象に残った。もちろん必要とあれば、ステアリングパドルを駆使して積極的に変速することもできる。 FWDとクワトロの乗り心地の違いは?スムーズという表現は、新型A4アバントの多くの点に当てはまると感じた。そのひとつが上記の加速感だが、もうひとつはその乗り心地である。サスペンションが適度にソフトなのに加えて、試乗車がスポーツの標準サイズである225/50R17タイヤを履いていたこともあって、路面の当たりがソフトなこともスムーズな乗り心地に貢献している。 つまりA4アバントのシャシーは、路面の細かい凹凸の吸収に優れている印象を与えるのだ。ただし、路面に大きな凹凸やうねりがあると、ちょっと印象が変わってくる。そんな場面ではサスペンションがそれをフルに吸収しきれなくなる印象で、ボディが若干上下動する。しかしそんな場合でも、それは強い突き上げを伴うようなものではなく、あくまで緩やかな上下動に終始するのだが。 今回はFWDモデルにしか乗らなかったが、2か月ほど前にA4セダンを試乗したときには、FWDとクワトロの両方を走らせるチャンスがあった。このときはダンパーの違いによるものか、FWDよりもクワトロの方が乗り心地にしなやかさを感じたので、A4アバントでも同様の相違を感じる可能性はあると思う。 選択が難しい今回の試乗ルートにはコーナリングを本気で試せるようなセクションはなかったが、腰の据わった低い姿勢から繰り出されるコーナリングは安定していると同時に、正確なステアリングは気持ちのいいレスポンスを示す。したがって、首都高のコーナーなどの日常的な場面でも、スポーティな感触を味わわせてくれるのを実感した。 さてこのA4アバントのFWDモデル、その最大のライバルは同車のクワトロではないかと思った。FWDでも走りにまったく不足はないが、クワトロだと悪天候下のドライビングの際などに安心感が増すのに加えて、エンジンチューンの違いから、ある程度の燃費の悪化と引き換えにパフォーマンスもひと回り高くなる。 さらに今回は直接確認できなかったけれど、乗り心地などもクワトロの方が上質な可能性もある。ちなみにFWDとクワトロのプライスの違いは、標準モデルで79万円、スポーツで68万円と、大きいようなそれほどでもないような、微妙な設定である。 スペック【 A4アバント 2.0TFSI スポーツ 】 |
GMT+9, 2025-6-26 07:40 , Processed in 0.083791 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .