“40.1”=ボルボ最小のクロスオーバー「新型XC40」先月、ボルボは本拠地スウェーデンはイエテボリに世界のジャーナリストを招き、次期型40シリーズの方向性を示す、2台のコンパクトカーをお披露目した。とりあえずは無機質に“40.1”そして“40.2”と呼ばれていたこの2台、ボルボのファンはもちろん、そうじゃない人にとっても、かなり衝撃的ではないだろうか。 デザイン担当上級副社長として、かつてVWなどに在籍していたトーマス・インゲンラート氏が就任して以来、ボルボのデザインはまさに大変革の中に居る。氏がゼロから手掛けた第一弾モデルとなる新型XC90を見れば、トールハンマーをモチーフにしたヘッドライトなどのディテールにしても、シンプルながら艶めいたフォルムの美しさにしても、明らかに今までとは違ったボルボに仕上がっている。海外モーターショーなどでお披露目済みの新型S90、V90のスタイリングも、やはり同じ文脈にある。 ところが、この2台はそれらとはまた完全に異なるテイストを醸し出している。特に“40.1”は、逆スラントしたフロントマスク、キャビンの辺りで一旦途絶えるショルダーライン、塗り分けの通り上下に分割されたCピラー等々により、これまでのボルボのイメージを大きく覆す仕上がりと言える。スプーンカットと呼ばれるえぐり、Cピラーに隠されたリアドアノブなども、やはり目をひくポイントだ。 目下、ユーザーの買い物リストのトップに位置しているのが、コンパクトSUVである。新型40シリーズは、これをベースにする「XC40」からの発表となるだろう。 “40.2”=SUVテイストを盛り込んだ「次期V40」それに較べればオーソドックスに見える“40.2”にしても、90シリーズより明らかにシャープさが強調された線と面、ヘッドライトからラジエーターグリルにかけての連続的な意匠、やはり大きなえぐりが入れられたボディサイド等々、やはり個性は強い。 更に言えば、ノッチのついたフォルムから次期「S40」かとも想像される一方、実はコレ、リアゲートを備えたハッチバックとなっている。つまり、次期「V40」となる可能性が濃厚なのだ。北米での販売を前提としていることも、あるいはこのフォルムに影響を与えたのかもしれない。 「若いユーザーは、父親のクルマの縮小版のようなものを決して欲しがりません。また、セダンやSUVといった既存のカテゴリーにも縛られたいとも思っていないのです。たとえば同じブランドの中でも、ビジネスシューズに、もう少しカジュアルにも使えるシューズ、そしてスニーカーがあるように、もっとデザインは自由であるべきではないでしょうか。もちろん、同じDNAを持ちながら。」 こう言うのは前述のインゲンラート氏。各モデルが、ターゲットに合わせた明確な指向性をもったデザインとされるべきだというその考え方は、上から下まで統一性を持たせようとした結果、退屈になり、あるいは行き詰まって無理が出てしまっている目下のプレミアムブランド全体の風潮を見るに、大いに納得させられるものがある。 気がかりは、それがボルボだとすぐに解ってもらえない可能性は無いのかということだ。それについては、先に触れた特徴的なヘッドライトのシグネチャーや、アイアンマークを備えたラジエーターグリル、C字型のテールランプ等々のディテールが、十分に担保してくれると確信しているようであった。 斬新なデザインや応用力のある設計を実現する「CMA」今回行なわれたのは、単なる次期40シリーズのデザインプレゼンテーションではない。その土台となる小型車用新プラットフォーム「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)」のコンセプトも、同時に発表となっている。 CMAは、ボルボが親会社であるジーリー(吉利)と共同で設立したCEVT(China Euro Vehicle Technology)を拠点に、とは言いつつもボルボが主導権をもって開発されたものだ。重視したのは様々な車体やパワートレインへの対応能力、今の時代に欠かせないコネクティビリティやインフォテインメント、そしてボルボのコアバリューであるセーフティ性能だという。 同時に2モデルがお披露目されたのは、まずそのプラットフォームが幅広い車体バリエーションに対応することを示す意味もあったに違いない。ハッチバックでもSUVでも、あるいは他の形態にも、自在に展開できるという意味である。 尚、CMAはジーリー車にも使われる。但し、ボルボではマルチリンク式のリアサスペンションがトーションビーム式とされるなど、細部は相当異なる模様。CMAは、その意味でもフレキシビリティに富んだ設計というわけだ。 EVの航続距離は350kmがターゲットパワートレインは内燃エンジンはもちろん、PHVやEVなど幅広く設定する。「T5 Twin Engine」の名が与えられるPHVは、3気筒1.5Lターボエンジンに電気モーターを内蔵する7速DCTを組み合わせたもので、「XC90」のPHVと違って前輪駆動となる。DCTの片方のインプットシャフトに電気モーターが接続された構造は、ホンダがフィットなどに使っている「i-DCD」とよく似ている。システム最高出力は250psを実現するという。 50km以上のEV走行距離を実現する9.7kWhの大容量リチウムイオンバッテリーは、センタートンネル内に収められる。これはCMAが当初からPHVの設定を前提にしていたからこそ出来たもので、室内スペースを侵食しないだけでなく運動性能、そして衝突安全性能にも貢献する。 EVについては、まだスペックの詳細は明らかにされなかったが、最大航続距離は350kmを実現したいとしている。そうなるとバッテリーはかなりの大容量となるはずである。 ボルボは2025年までに100万台のEV/PHVを販売したいとしている。この40シリーズが担う役割は、非常に大きいに違いない。 コンパクトカーにこそ高度な安全装備が必要コネクタビリティ、つまりはインターネットへの接続であったり、インフォテインメントについては、90シリーズと同等のものがこのコンパクトモデルにも用意されるという。今回、インテリアは公開されなかったのだが、ダッシュボード中央に縦型タッチスクリーンを備えるSENSUSが採用されることになるのだろう。セーフティ性能についても同様。現在、90シリーズが実現しているものは、余さず投入されることになる。 「大型車とのコンパティビリティを考えても、あるいは運転者のうち若者や初心者など運転に不慣れな人の割合が多いという事実からしても、コンパクトカーにこそ高度な運転支援機能、安全装備が必要です。もちろん90シリーズは、更にその先を目指して開発を進めていきます。」ボルボ セーフティセンターでセーフティに関するディレクター、シニアテクニカルアドバイザーを務めるヤン・アイバーソン氏は言う。 これは、“2020年までに新しいボルボ車が関わる事故による死傷者をゼロにする”というボルボ社が掲げる『ヴィジョン2020』を達成するためには必然とも言えるだろう。 今後4年以内に「結果」を出すボルボの自動運転技術については、新型S90より導入される「パイロットアシスト」が用意されている。これについても将来は、このセグメントに降りてくるはずだ。より簡単に、楽しく。更にはクルマ以上の体験を……というのが今の若いユーザーのデマンドである。そのためにはコネクタビリティ、自動運転といった要素は、ますます重要になるということだろう。 「今後4年以内に、ボルボを再び世界的なプレミアムカーメーカーと互角に競うブランドにすることを目指します。」 ボルボ カー グループのプレジデント兼CEOであるホーカン・サミュエルソン氏はそう高らかに宣言した。昨年、初めて50万台を突破した販売台数も、80万台を目指すというから意欲的だ。新型40シリーズが、そのキーとなることは間違いない。2017年のデビューが、今から楽しみになってきた。 |
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