STIがニュル24hに参戦し続ける意味先日のニュルブルクリンク24時間レース(以下、ニュル24h)において、「スバル WRX STI」がクラス2連覇を飾った。スバルのモータースポーツを司るSTIは、このレースに2008年から9年にわたって参戦し続けており、今回を含めて実に4回のクラス優勝を果たしている。 レースだけに、そこに参戦する目的としては当然“勝利”があるわけだが、実はSTIやスバルとしては“それ以外”にも目的があるという。今回はニュル24hの現場で、STI代表取締役社長の平川良夫(ひらかわ よしお)氏にインタビューすることができた。そこでの話をもとに、今後のSTIやSTIを支えるスバルについて、皆さんにご報告していこう。 平川氏はまず、そもそもSTIがニュル24hに挑戦する意味をこんな風に語ってくれた。「スバル/STIは今、様々なモータースポーツに関わっています。アメリカではグローバル・ラリークロス選手権、日本ではスーパーGT、そして欧州では今回のニュル24hといった具合です。もちろん、それぞれのカテゴリーによって違った狙いがあるわけですが、ニュル24hの場合は何と言っても、スバル/STIのエンジニアリングサイドを広く知ってもらうために参加しています。 お客様が乗るクルマと同じ車体(WRX STI)をベースにして、レースのレギュレーションの範囲で手を加えているので、ニュル24h用のマシンというのはお客様のクルマの延長線にある存在です。そしてこの中で技術的な追求をしていくことによって、我々は今後のクルマ作りに活かせるような知見を得ていくのです。 レース車両と市販車は違う、という意見もあるでしょうが、我々はここニュルでのレースだからこそ市販車に活かせるものがあると思っています。ニュルは完全なサーキットというより、路面コンディションやめまぐるしく変わる天候など、リアルな使用環境とオーバーラップしている部分が多々あるわけです。 例えばドイツに住むスバルのお客様であれば、アウトバーンを250km/hオーバーで走ることもあります。路面ミューが低い上に、今回のように雹(ひょう)が降ったりする天候も同様です。そうした場面に出くわすことは当然、市販車でも起こりうるわけです」 レヴォーグ STI Sportはこれまでと違うさらに平川氏は、5月27日から先行予約が始まった「レヴォーグ STI Sport」についても触れた。 実はレヴォーグ STI Sportは、STIがこれまでに手掛けてきたモデルとは異なる存在だ。それはこのモデルが、「レヴォーグの最上級グレード」と位置付けられていることからも分かる。プレスリリースにはさらに、“スバルとSTIのコラボレーション”によって、レヴォーグが持つ走行性能や質感をさらに引き上げた、と記される。 具体的には、内外装の仕立てはもちろん、専用のチューニングを施した可変減衰力サスペンション「DampMatic II」を採用し、専用コイルスプリングを与えた足回りや、ステアリングギアボックスの取り付け剛性向上による操舵応答性を高める改良などが挙げられる。 そして、もうひとつ重要なのは、これまでのようにSTIから発売されるのではなく「スバルのカタログモデル」にラインナップされるということだ。 “混血”でより強く逞しくでは、レヴォーグ STI Sportとは、どんな成り立ちを持っているのか? これまでのSTIのモデルは、スバルが発売した車両をベースに、STIが独自開発していた。しかし、レヴォーグ STI Sportは、スバルとSTIが最初から協力して開発を行い、世に送り出すモデルになる。ここが重要なポイントだ。 平川氏は次のように語っている。「開発の過程において、これまでにない動きをしてきました。スバルとSTIが開発をオーバーラップすることで、互いの良いところを引き出したわけです。 これまではSTI自身で、STIの走りの楽しさや商品の枠組みを考えましたが、レヴォーグ STI Sportでは商品としての価値を広げるために、スバルの血液の中にSTIの血液を注入する……というような感覚で、より強い商品にしようという狙いがあります。 ダーウィンの進化論のように、純血では途絶えてしまうので混血でより強く逞しくなって生きて行くということです」 「STI Sport」をシリーズ化へ今回のレヴォーグ STI Sportは、STIが新たな次元へと移行していく証でもある。 「レヴォーグ STI Sportは、スバルがレヴォーグで問いかけた価値をさらに広げる方向に仕立てました。目指したのは“理想のレヴォーグ”。これをスタートとして、将来的には「STI Sport」というシリーズを展開していきたいと思っています。 狙いのひとつには、STIの認知度アップがあります。たとえばアメリカでは、「スバル」に比べて「STI」の認知度はまだまだ低い。その一方で、「STIが欲しい」というコアな声もあり、我々はその声にも応えていく必要がある。今回のレヴォーグ STI Sportは、そのための取り組みの第一歩でもあるのです。 ただ、そうした戦略を採っていくには、まずはマザーマーケットの日本市場において、お客様にスバルの商品の楽しさや良さを“真に”理解してもらう必要があります。そのために、人気のあるレヴォーグという車種で、今後のスバルとSTIが展開していく世界観をわかりやすく伝える必要があった。そうした想いからこのモデルは生まれているのです」 レヴォーグ STI Sportは単なる追加モデルではなく、今後のスバルとSTIのブランドとしての価値を広げ、高めていく重要モデルなのだ。それは、STIが世界中のモータースポーツに挑戦し続ける意味とも重なる。 今回のニュル24hは、とても厳しい環境の中でサバイバルレースが展開された。そんな中にあって、「スバル WRX STI」は様々な困難を乗り越えてクラスの頂点に輝いた。レヴォーグ STI Sportには、そこで培われたノウハウや技術はもちろん、想いそのものがエッセンスとして注入されているに違いない。スバルとSTIが我々に伝えようとする想いは、その走りから感じ取れることだろう。 |
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