特徴は?スバルを長年支えてきた初代~4代目レガシィ。2009年に登場した5代目は日本の何倍も売れている北米市場の要望が優先され、車体が大型化した。それはそれで別のクルマとして魅力的だが、この国には大きいとそれだけで愛車候補から外さざるをえないユーザーも少なくなく、4代目までのちょうどいいサイズのレガシィを懐かしむ声はやまなかった。 そこでスバルは日本専用に新たなモデルを開発、2013年の東京モーターショーでお披露目し、翌14年に発売したのがレヴォーグだ。レオーネ、レガシィ、レヴォーグ……、スバルの基幹モデルは「レ」で始まるのだ。なお“日本専用モデル”として登場したが、現在は欧州や豪州にも展開されている。それはそれでいいじゃないか。せっかくいいクルマができたんなら世界中で売るべきだ。 エンジンはいずれも水平対向の直噴ターボで、1.6リッターと2.0リッターの2種類がある。どちらもスバル独自のCVT「(スポーツ)リニアトロニック」と組み合わせられる。サイズがちょうどいいのに加え、国産車としてはいち早く高効率の新世代ターボエンジンを採用したこともあって、売れ行きは14年度が4万1571台(17位)、15年度が2万4332台(29位)と好調。SUV全盛の時代にあって、国産ステーションワゴンとしてほぼ唯一人気を博している。 そのレヴォーグも発売から2年と少したち、今回、マイナーチェンジが行われた。 第一印象は?今回のマイナーチェンジでは、パワートレーン(エンジンやトランスミッション)には変更がない。外観上の変更点も新デザインのアルミホイール採用など最小限にとどまる。新たに最上級グレードとして1.6リッターと2.0リッターの両方に「STI Sport」が追加されたことが最大の変更点だ。 STIとは、モータースポーツを担うスバルの子会社で、モータースポーツによって培われたテクノロジーを活かしたコンプリートカーも開発している。従来は完成したスバル車をベースにチューニングするかたちで商品化していたが、今回はSTI Sportというレヴォーグの最上級グレードをスバルとSTIが共同で開発するという初めての手法がとられた。 とはいうものの、STIと聞いて短絡的に「スポーティー」とか「レース」とかいう言葉を想像すると肩透かしを喰らう。今回、スバルとSTIは最上級グレードの開発に際し、質感の向上を目指した。スバルの調査によると、レヴォーグは輸入車(同価格帯となるレヴォーグより少し下のクラスの新車や同クラスの中古車)と迷って購入したというユーザーが多いモデルだ。「輸入車よりもスポーティーだが、質感は輸入車ほどではない」との評価が多いため、動力性能はそのままに質感を高めようというのが目標となった。 質感には動的質感と静的質感があるが、報告すべきは動的質感の向上だ。レヴォーグSTI Sportは本当に乗り心地がいい。最上級グレードのフロントダンパーにダンプマティックIIが採用されたことが大きい。ビルシュタインのそのダンパーは異なるふたつのオイル経路(バルブ)を用いることで、小さな入力にも大きな入力にも適切に対応できるというシロモノ。つぎはぎだらけの舗装のよくない路面など、小さな入力はコンフォートバルブが受け持ち、コーナリング時などの大きな入力はメインバルブが受け持つ。 通常はさまざまな入力を考慮してひとつのセッティングにするしかなかった。スポーティーなレヴォーグだと、どうしても大きな入力を優先して硬めの乗り心地とせざるを得なかったのだ。これがダンプマティックIIの採用で、これまで優先できなかった路面の細かな凹凸などの小さな入力にも巧みに対応してくれるようになったため、快適だ。いっぽうでミニサーキットのどのコーナーでも腰砕けになることはなかった。いいことづくめ。 まとめると?ダンプマティックII付きのレヴォーグには感心した。レヴォーグが最初に登場したとき以上の衝撃を受けたといっても過言ではない。今後、STI Sportというグレードをほかのモデルにも採用する計画。メルセデス・ベンツのAMGやBMWのMのような位置づけにしたい考えだ。ほかのモデルでもあの乗り心地が得られるのだとしたら、スバル全体の評価が一気に変わる可能性さえあると思う。 動的質感の向上だけでなく、STI Sportにはボルドー色のレザーシート、赤いリングのメーター、STIロゴ入りのステアリングホイールが採用されるなど、静的質感の向上にも力が注がれた。これらに関しては乗り心地の向上ほどには感心しなかったが、スバルの内装といえば黒一色という印象が強いので、まずはそこからの脱却ということだろう。 動的にせよ静的にせよ、質感の向上を目指す今回のマイナーチェンジからは、よくいえば「スポーティー」、見方によっては「汗臭い」といった従来のスバルのイメージから抜けだそうという思惑が見てとれる。あまり性急にやり過ぎたり、スバルのファンダメンタルである水平対向エンジンやシンメトリカルAWDといった部分が疎かになるようだと、”汗臭さ”こそを愛した生粋のスバルファンが戸惑う可能性もあるが、そのあたりはラインアップのバランスをうまくとっていただき、従来のファンも離れず、新しいファンもいっぱいやってくるブランドになっていただきたい。 スペック・価格・燃費【 レヴォーグ 1.6 STI Sport EyeSight 】 【 レヴォーグ 2.0 STI Sport EyeSight 】 |
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