コンバーチブルも最新の3代目へもともとは経済的で実用的な超小型車として1959年のイギリスで産声を上げたミニを、2001年にBセグメントのプレミアムな小型車、いわゆるニューMINIとして甦らせたのが、他でもないBMWだった。 そうやって、フィアット500などのフォロワーを生むBセグメントのプレミアムコンパクトというカテゴリーを最初に創造したMINI。そのなかでも、初代の時代から取り分けプレミアムな香りを強く発散してきたのがオープンモデルのコンバーチブルだが、それが他の主要モデルに遅れながらも、いよいよ3代目の新型に生まれ変わった。 初代の時代からCピラー部分の分厚いデザインのソフトトップを採用、しかもその開閉に電動メカニズムを用いるなどしたのがプレミアム感を鮮烈にする手法のひとつで、当然ながらプライスもハッチバックより歴然と高価な設定だった。にもかかわらず初代も2代目も世界で16万台を超える数が販売されたというから、成功作であるのは間違いない。 明確に拡大したボディさてその3代目だが、MINIというクルマのキャラクターからして当然ながら、初代および2代目のコンセプトをストレートに踏襲したクルマとしてデザインされている。つまり、3ドアハッチバックのボディをベースにして、4座のオープンに仕立てられているわけだ。 だから、3代目のハッチバックがそうであるように、ボディサイズが明確に拡大された。すなわち、全長3835(クーパー)/3860(クーパーS)×全幅1725×全高1415mmと、ベースとなったハッチバックがそうであるように、全幅がついに3ナンバーサイズに突入した。 だが現車を目の当たりにしてみると、ハッチバックが3代目にモデルチェンジしたときほど、ボディサイズに対する違和感を覚えなかった。すでにハッチバックを見慣れていることに加えて、オープンのキャビンやソフトトップとボディとの程よいバランスが、そう感じさせるのではないだろうか。 イージーローディング機能を新たに採用ボディサイズの拡大は、当然ながら居住空間に好ましい影響を与えている。それが明確に表れているのがリアシート空間で、先代コンバーチブルと比べてニールームが約4cm、ショルダールームが約3cm拡大されているという。 身長170cmの当方、自分のドライビングポジションを取った運転席の後ろに座ってみたら、膝がバックレスト後ろの窪みに収まって、なんとか座ることが可能だった。ただし後席はバックレストがかなり起きているので、長時間の着座は遠慮したい気分だったが。 トランクルームも先代より拡大されて、容量が25%ほど増加した。結果、ソフトトップを閉じた状態で215リッター、オープンにした状態で160リッターの容量が確保されたという。しかもそこには上部のリッドが開くイージーローディング機能が備わって、モノの出し入れがし易くなっている。 グレード間の燃費差は意外に小さい日本で当面発売される新型MINIコンバーチブルは「クーパー」と「クーパーS」の2モデルで、前者は136psと220Nmを発生する1.5リッター3気筒ターボを、後者は192psと280Nmを生み出す2リッター4気筒ターボを搭載、いずれも6段ATを介して前輪を駆動する。 タイヤはクーパーが195/55R16を、クーパーSが205/45R17を標準で装着、車重はクーパーが1320kg、クーパーSが1360kgと公表されている。エンジンの気筒数と排気量がいずれも異なる割には、重量の違いが少ないという印象をうける。JC08モード燃費も、クーパーが16.7km/L 、クーパーSが16.3km/Lと、両者の差がこれも意外なほど小さいが、その秘密は走ってみたら実感できたので、後ほど報告したい。 さらにこの2モデルに加えて、231psと320Nmにチューンした2リッター直4ターボに6段ATを組み合わせた最上級グレード、「ジョン・クーパー・ワークス・コンバーチブル」がすでに発表されていて、こちらも後日、日本で発売される。 MINIコンバーチブルの日本でのプライスは、ジョン・クーパー・ワークスを含んで発表済みで、クーパーから順にいずれも消費税込みで、342万円、397万円、483万円となる。 大人に似合うモルトブラウン三浦半島の西海岸先端近く、佐島をベースにして開かれたMINIコンバーチブル試乗会にはクーパーとクーパーSの2モデルが用意されていて、僕が乗ったのは後者だった。 MINIの広報車というと、高価なオプションが満載されていることが多いが、今回もまたそうだった。車両本体価格397万円に加えて、モルトブラウンのレザーチェスター張りスポーツシートや18インチのホイール&タイヤその他を含むデビューパッケージが42万円、メルティングシルバーメタリックの塗装が5.9万円、ダイナミックダンパーが7.7万円等々、総計88.4万円のオプションが装着されて、合計価格は485.4万円になる。 いかにもブリティッシュな感じの色、モルトブラウンのスポーツシートは、たっぷりとしたサイズで身体を優しく包み込んでくれる。そのクルマのシートが身体に合うかどうかには個人差があると思うが、僕の場合は少なくとも2世代目以降のMINIとは相性がよく、コンバーチブルのシートも違和感なく落ち着いて身体をあずけられた。 より上質な走り味を手に入れたシートと乗り手の相性がいいことも関係あると思うが、まず印象に残ったのは乗り心地が良好なことだった。クーパーSコンバーチブルの標準が17インチなのに対して、試乗車は18インチのダンロップ・SPORT MAXXを履いていたが、路面の当たりは角の取れたもので、よほど鋭い突起でも越えない限り、不快な衝撃を実感させられることはなかった。 かつてオープンボディというのは、限られた例外を除いてクローズドボディより歴然と剛性感が落ちるのが普通だった。けれど、昨今はそうではないクルマが増えているが、この3代目MINIコンバーチブルなども、まさにその典型ではないかと思う。 ボディの2/3近い部分がキャビンという開口部でありながら、上記のようによほど鋭い突起でも越えない限り、オープンで走っていてもタイヤの上下動によってボディがブルッと震えることはない。つまり通常は、ボディが緩い感触を実感することはまずない、ということだ。 と同時に、フルオープン走行時の風仕舞いのよさも印象的で、サイドウインドーを上げておけば、高速道路でクルージングスピードに達しても、被った帽子が飛びそうになる気配など皆無だった。しかも必要とあれば、トップの前半分だけを開けたサンルーフモードを選ぶこともできる。 ゆっくりと流しているだけでも愉しいそれに加えて、ステアフィールの好さも印象に残った。この日の試乗ルートにはワインディングはなく、コーナリングを味わえるのは料金所から高速道路に入るランプウェイくらいだったが、それでもステアリングが常に充分な路面感覚を伝えてくるのは感じ取れた。 実際、ステアフィールがいいというのは大切なことで、今回のようにワインディングを攻めるチャンスがなかったとしても、スポーティなクルマを走らせているという実感を、ステアリングホイールを握る手をとおして感じることができる。つまり、BMWが言うところのゴーカートフィールの一端を、そこから実感できるわけだ。 結果として、ゆっくりと流しているだけでも、ドライビングが愉しい、という気分になれる。エンターテインメントとして乗るクルマには、そういう要素が極めて重要なのである。 低回転での粘り強さが印象的クーパーSの2リッター直4ターボがもたらすパフォーマンスは、もちろん充分なものだった。というか、今回のテストルートでは、その実力を存分に味わうステージはほとんどなく、横浜横須賀道路で軽く踏み込んで、一瞬のうちに制限速度に達してしまうのを味わった程度だった。 そんなわけで、むしろ印象的だったのは低回転での粘り強さだった。佐島周辺の海岸沿いの狭い道で、最小限のスロットル開度を保って走っていると、タコメーターの針は1000~2000rpmのあいだを上下しているにすぎないが、それでも常に望むだけの加速が手に入る。 そういった意味で、深くスロットルを踏み込む必要がほとんどないから、日常的な走行パターンでは、燃費が悪くなる要素がまず考えられない。JC08燃費の数値が、クーパーの1.5リッター3気筒ターボとほとんど変わらないのもこれで納得、というわけだ。 気持ちいいクルマに仕上がっている冷静に考えてみれば、コンバーチブルより車重がプラス100kgの新型クラブマンでも、3気筒のクーパーで充分よく走るのだから、動力性能的にはクーパーでまったく充分だと思う。 けれども、それを承知の上でクーパーSを選んだとしても、燃費に関するデメリットは最小限に抑えられるはずだ。だから、イザというときの余裕のために敢えてクーパーではなくクーパーSコンバーチブルにするというのも、悪くない選択だろう。両者の価格差が55万円に抑えられた微妙なプライス設定も、なにやらその気にさせる。 その一方で、パフォーマンス的には充分なクーパーを選び、クーパーSとの価格差を好きなオプションを装着することに費やして、自分好みのクーパーコンバーチブルを仕立てるというのも、賢くも愉しい方法かもしれない。 つまり新型MINIコンバーチブル、「ミニ」という名前とボディサイズのあいだの違和感さえ気にしなければ、購入すべきモデルや乗り方を思い悩むだけの価値があるモデルだと思った。なによりも、ドライビングして気持ちいいクルマに仕上がっているのが最大のポイントである。 スペック【 MINI クーパーS コンバーチブル 】 【 MINI クーパー コンバーチブル 】 |
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