M4ベースのサーキット・スペシャルBMWのハイパフォーマンスカーの開発・生産を担うBMW M GmbHは、2015年に世界で6万2368台を販売した。この数字は5年前の2010年(1万6967台)と比較すると、約3.7倍である。ただし、これはMパフォーマンス・モデルの2万7881台を含んでおり、トップ・パフォーマンス・バージョンであるMモデルだけを見れば3万4487台となっている。 Mモデルも2010年に対して2倍強に増えているが、M社はさらに過激なモデルを求める顧客を満足させるべく、M4クーペのスペシャル・バージョンである「M4 GTS」を開発し、世界700台限定で発売すると発表した。 昨秋に東京モーターショーでワールドプレミアとなり、日本でも大いに話題を集めたM4 GTSは、M4クーペをベースに、サーキット走行にフォーカスしたスペシャルなチューニングを施したモデルである。M社はこれまでにも、M3 GT(1995年)、M3 CSL(2003年)、M3 GTS(2010年)と歴代M3ベースのスペシャル・バージョンをリリースしてきたが、現行型ではクーペがM4にスイッチしているため、M4がその素材に選ばれた。 今回は間もなく開始されるデリバリーに先駆けて、4月4日にスペイン・バルセロナ近郊にあるカタロニア・サーキットにおいて、その実力を試す機会を得た。 M4クーペから80kgの軽量化を実現パドックに並べられたM4 GTSは、遠目からでも明らかにただ者ではないオーラを放っていた。ベースモデルのM4も、ノーマルとは一線を画すアグレッシブな外観を纏っているが、今回のGTSは、専用のエアロパーツやオレンジのアクセント、市販車初採用となる専用のOLED(有機EL)リアコンビランプ、そしてマットブラック仕上げのボディが相まって、それを遙かに超える迫力満点の佇まいを見せている。 M社が誇るモータースポーツ・テクノロジーが惜しみなく注ぎ込まれたこの限定モデルは、大幅な軽量化が施されている。ボンネットフードやフロントバンパー、ルーフ、リアバンパーはCFRP製に変更されている。また、CFRP製のフロント・スプリッターとリアウイング、リアディフューザーを装着。リアウイングのステーも軽量なアルミニウム製となっている。専用のエグゾースト・システムは、ノーマルのM4のものに対して20%軽いチタン製だ。フロントが19インチ、リアが20インチの星形スポーク・デザインが印象的な専用ホイールも軽量な鍛造アルミニウム製である。 軽量化はインテリアにも及んでいる。軽量なフルバケットシートを採用したほか、ドア・パネルをカーボン製に変更。ドア・グリップもベルトとした。さらに、リアシートも省略されている。シートベルトは6点式を備えているが、公道走行での利便性を考慮して3点式も残してある。結果、M4 GTSの車両重量は1510kgと、ベースのM4クーペから80kgもの軽量化を実現した。 ウォーター・インジェクションに注目コクピットに乗り込むと、アルカンターラのステアリングやシート、ダッシュボード、センターコンソールなどが、スポーティネスを感じさせてくれる。各部にあしらわれた「GTS」のロゴもスタイリッシュだ。そしてシート後方に張り巡らされたロールケージが、このクルマがサーキット走行を前提に開発されたことを物語る。 12時の位置にオレンジのマーカーをあしらったステアリングは、とても感触が良く握りやすい。シートのサポート性も非常に高く、適切なドライビング・ポジションが取れる。 エンジンをスタートすると、ノーマルよりも音圧が高い、迫力ある乾いたサウンドが響き渡る。専用に強化された7スピードM DCTドライブロジックをDレンジに入れてスタートし、ピットレーンを出たところで右足を踏み込むと、間髪入れずに強烈な加速Gに襲われた。 M4 GTSの3.0リッターの直6直噴ツインターボ・エンジンは、市販車初採用となる「ウォーター・インジェクション」を備えた専用ユニットである。ウォーター・インジェクションとは、吸気モジュール内の集合部に水を噴射する機構で、これにより吸気温度を下げ、空気の膨張を防ぐことでシリンダー内への空気の充填率を上げ、さらに燃焼温度を下げることが可能となる。これにより、約8%のパワーアップが可能となるのだ。 この結果、M4 GTSでは、最高出力368kW(500ps)/6250rpm、最大トルク600Nm/4000-5500rpmという、ノーマルのM4を51kW(69ps)と50Nmも凌駕するスペックを実現したのである。また軽量化されていることもあり、パワー・ウェイト・レシオは約3.02kg/psと、ベースモデルの3.68kg/psから大幅に向上している。 0-100km/h加速3.8秒、305km/hで速度リミッター作動アクセル・レスポンスも驚くほど俊敏だ。ターボ・ラグなど全く感じることはなく、回転計の針は右足の動きに恐ろしいほど敏感に反応する。7スピードM DCTドライブロジックの変速制御も申し分なく、オートマチック・モードでも常に適切なギアへ瞬時に入り、ストレートでは途切れなく猛烈な加速を見せる。約1kmのメインストレートでは、速度計の針は260kmまで達した。ちなみに0-100km/h加速は3.8秒、最高速度はリミッターにより305km/hに制限されている。 軽量化と共に低重心化も図られたことで、ハンドリングもアジリティ抜群でしかも極めて正確だ。ステアリングを切り込むと、ピッとノーズが反応し、瞬時に狙った通りの走行ラインをトレースすることが出来る。これには60%も強化された専用のスプリングと専用開発の3ウェイMコイルオーバー・サスペンション、専用チューンのスタビライザーも大きく寄与している。 あまりにコーナリング・スピードが速く、加速が強烈なので、リアのブレークを常に気にしていたが、フロントに265/35R19、リアに285/30R20のミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2を装着した足回りは素晴らしいトラクション性能を見せ、コントロールを失うことはなかった。また、Mカーボン・セラミック・ブレーキも素晴らしい制動性能とコントロール性を発揮した。 投資的にも有望なコレクターズアイテムまた今回は、事前にM社のエキスパートが調整してくれたが、シャシー・セッティングを変更できるのもM4 GTSの特徴である。調整式のフロント・スプリッターとリアウイングは、サーキット向けのセットアップでは、最大でフロントが12kg、リアは40kgのダウンフォースを発揮する。また、ショックアブソーバーは、ロースピード6段階、ハイスピード14段階、そしてリバウンド・スプリングは16段階の調整が可能となっているので、コース特性に応じて最適なセットアップに変更出来るのである。 今回は残念ながら、1周4.727kmのレーシング・コースをわずか6周しか走行できなかったが、M4 GTSの圧倒的なポテンシャルは確認することが出来た。ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェのラップタイムが7分27秒88というのも納得である。サーキット走行メインのハイパフォーマンスカーとして、素晴らしい出来栄えと言って良いだろう。 ちなみにドイツでは14万2600ユーロ(約1760万円)のプライスタグが付けられているM4 GTSだが、すでに生産予定の700台は全て完売している。なお日本での価格は1950万円で、30台が上陸する予定、さらに右ハンドル仕様も注文可能だと言う。BMWジャパンによれば、問い合わせは殺到中だが、まだ完売には至っていないとのこと。(※筆者の独自取材によるもので、確認等は特にしていません)。 銀行の残高に余裕のある方はお急ぎBMWディーラーの門を叩く事をお勧めする。将来的な投資としても有望なアイテムになることも間違いない。 スペック【M4 GTS】 |
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