最高に贅沢なドライバーズカーときおり冷たい風が吹き下ろす南フランスのリゾート地・ニースでメルセデスのオープンカーの最新モデル2台に試乗した。1台は「Sクラス カブリオレ」。 2+2シーターの高級クーペのオープンカーなので、メルセデスの最上級ドライバーズカーだ。もう1台はメルセデスのスポーツカーのエントリーモデルであり、バリオルーフという電動ハードトップの「SLC」。タキシードとブラックタイが似合いそうなSクラス カブリオレと、ジーパンTシャツで乗れるSLCをレポートする。 Sクラスというと最高級セダンのイメージが強いが、クーペも用意されている。ちょうどベントレーのコンチネンタルGTと同じセグメントだ。そんなメルセデスの高級クーペをベースにしたカブリオレが1961から71年に生産された「W111」で、気品にあふれるスタイルは富豪の間で人気が高かったという。 そのSクラス カブリオレが44年ぶりに復活したのだ。オープンのスタイルはボディのエッジラインがシャープで、リアエンドのスタイルはむしろハードトップよりもスポーティだ。高級クーペはビジネスシーンでも似合いそうだが、オープンモデルこそ大人の贅沢という感じがする。 贅沢なカブリオレはソフトトップに限る多くの高級カブリオレがそうであるように、Sクラスもソフトトップにこだわっている。2+2シーターはキャビンの開口部が2シーターよりも大きいので、ハードトップは技術的に困難だし、見た目もソフトトップのほうがセレブだ。スタイルもいいし、性能はSクラス譲りなので、足りないものはないだろう。このクルマこそ、メルセデスの頂点に君臨する最高に贅沢なドライバーズカーではないだろうか。 三層構造のソフトトップは異なる素材を組み合わせているので、振動や騒音を上手に吸収してくれる。音の残響も少ないので、むしろハードトップよりも快適かもしれない。とにかく静かなキャビンの静粛性に驚いた。60km/h以下なら20秒くらいでルーフをドロップできる。オープンカーって、こんなに爽快なのかと感動する。 雲の上を走るようなS500と速さのAMG S63エンジンは「Sクラス カブリオレ S500」が4.7L V8ツインターボ、「メルセデスAMG Sクラス カブリオレ S63 4マチック」は5.5L V8ツインターボを積む。この2台はかなりキャラクターが異なる。 AMG S63はパフォーマンスも高いが、1000Nm近いトルクを無駄なく路面に伝えるために4マチック(AWD)で武装している。オープンカーでもパフォーマンスに妥協はなく、0-100km/h加速はツインクラッチのAMGスピードシフトMCT 7を駆使すると3.9秒。この速さならポルシェターボ Sカブリオレ(同3.1秒)がライバルになってきそうだ。 S500はS63のような速さはないが、まるで雲の上を走っているようなしなやかな乗り心地が得られる。この感覚はポルシェやベントレーでは味わえないかもしれない。開口部が大きいカブリオレだが、荒れた路面でも、ボディはミシリともいわない。驚くほどボディ剛性が高いのだ。 名前をSLCに変え、SL風にフェイスリフトライトウェイトスポーツカーの「SLK」がフェイスリフトを機に「SLC」というモデル名に変わった。SLCの「C」はCクラスと共通のパワートレーンを使う意味があるらしい。SLKの「K」はショートホイールベースの「短い」という意味で、SLの「S」はスポーツ、「L」は軽いという意味だったが、SLCになっても基本的なコンセプトは変わらないという。 スタイリングは前のモデルよりも精悍さを増している。すれ違ったが、兄貴分のSLと間違えてしまいそうだ。3サイズで比べるとSLのほうがよりワイドなので実物は低く見える。SLはポルシェと並んでスポーツカーの黄金比を持っているのだ。 トレッドがSLよりも狭いSLCはやや背が高く見えてしまうが、そのコンパクトなボディが使いやすさにもつながっている。ニースの裏山の山岳路はアルトワークスで走りたくなるほど狭い道が続くが、なんのことはない。コーナーのインをギリギリまで攻めることができる。 日本には直4ターボとV6ターボを導入予定SLCはSLと同じ電動格納ハードトップが特徴だ。40km/hまで開閉が可能で、ルーフを格納しても335Lのトランクスペースが確保されている。 テスト日はあいにくの小雨だったが、止んだらルーフを開け、降ったら閉め、というのを繰り返した。そんなときバリオルーフはあっという間に開閉できて便利だ。開けるとアルプスの冷たい風が吹き込むが、シートヒーターと、首周りを温風で温めるエアスカーフがあれば快適にオープンドライブが楽しめる。特にエアスカーフが効果大で、熱いシャワーを浴びたときのように首筋を温めてくれる。 パワートレーンは3つのエンジンが搭載される。「SLC 300」は245psの2リッター直4ターボ。もっともホットなモデルは「メルセデスAMG SLC 43」で367psの3リッターV6ターボだ。このエンジンはCクラスのC450に搭載されるエンジンと同じ。そして「SLC 250 d」は2.2リッターディーゼル。国内はSLC 300とSLC 43が導入されそうだ。 気軽に楽しめるSLC 300SLC 300は気軽に楽しめるスポーツカーだ。ポルシェのような本気モードにならなくてもいい。9Gトロニック(9速トルコンAT)が備わるので、100km/hまではクロスギアレシオで想像以上に加速がシャープ。公表されるデータでは0-100加速は5.8秒の速さを持っている。新型ボクスター(2L直噴ターボ)が5.1秒であることを考えると、SLC 300も頑張っている。 ライバルとなりそうな「アウディ TT」や「ポルシェ ボクスター」と比べると、SLCは乗用車ライクなテイストと言える。サスペンションもストロークするし、乗り心地は快適だ。スポーツモードにセットすると、サスペンションはダンピングが高まりステアリング・レスポンスが機敏になる。 サーキットも意識したSLC 43リアルAMGではないが、AMGのDNAを持ったSLC 43はトルクフルなV6ターボを搭載する。ワインディングで不用意にアクセルを踏み込むと、簡単にリヤがブレークする。機械式LSDもオプションで用意されるなど、サーキットを少し意識して開発されたようだ。非公式だが、ニュルを7分50秒くらいで走る実力を持っている。 SLCは実用性とスポーツ性を兼ね備えたメルセデスカーだが、そのキャラクターは決してチープなものではなかった。SLCの成長によってSLの存在感が脅かされるかもしれないが、それはそれで面白い兄弟対決がみられそうだ。 スペック例【 メルセデス・ベンツ Sクラス カブリオレ S500 】 【 メルセデス・ベンツ SLC 300 】 |
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