多種多様なスポーツカーが純正承認ピレリが新型スポーツタイヤを2種、発表した。フラッグシップスポーツの「P ZERO(ピーゼロ)」とスポーティタイヤの「DRAGON SPORT(ドラゴンスポーツ)」だ。 P ZEROはご存知の方も多いと思うが、長い歴史を誇るスポーツタイヤ。1987年にフェラーリF40のタイヤとしてデビュー以後、様々な派生モデルを追加しながら進化を続けてきた。今回の新型は、P ZERO直系の「第4世代」に該当するモデルだ。新型P ZEROは、驚くべきことに発表時点で60ものOE(オリジナルエクイップメント)承認を獲得していた。OE承認とはカーメーカーが様々なテストを課して、純正タイヤとして認可したことを表す。 既に承認を獲得したのはフェラーリ488GTB/F12tdf/GTC4Lusso、ランボルギーニ・ウラカン/アヴェンタドール、ジャガーXF/FタイプSVRといった従来からピレリと結びつきが強いメーカーだけでなく、マクラーレン540C/570S、ポルシェ・ボクスター/ケイマン/パナメーラ、メルセデス・ベンツEクラス、BMW 7シリーズ/X1、アウディR8/S6/A6/RS3/A3、VWゴルフR/シロッコR、ボルボS90/V90等々。本当に数多くのプレミアムカーの純正承認を得ていた。 ピレリの中でもP ZEROは以前からOE承認を強く意識したモデルで、欧州カーメーカーとの共同開発が通例だが、発表時点で60もの承認を得たタイヤはライバルも含め、今まで聞いたことがない。ちなみにピレリは現在700以上のOE承認タイヤを製造、販売しており、その数はダントツだ。 基本特性が相当に優秀でなければ、OE承認は簡単に取れるものではない。新世代のP ZEROが重視した性能は、従来からのプレミアムスポーツタイヤへのニーズであるドライ&ウェットハンドリング、ハイドロプレーニング、快適性、耐摩耗性に加えて、ウェットブレーキと転がり抵抗のハイレベルな両立、軽量化、そして静粛性だという。 「P ZERO」の名の下に3種のモデル新型の非対称パターンは剛性と摩耗に配慮した機能的でオーソドックスな印象。ピレリならではのデザインセンスを巧みに盛り込む。縦方向の主溝は旧型より明らかに太く、ショルダー部の横溝もはっきり目立つ。縦溝はハイドロプレーニング、横溝はウェットブレーキの向上を意識した、と考えられる。 3種の異なるデザインを用意した点も大きな注目ポイントだ。基本となるスポーツカー用の「P ZERO」に対し、ラグジュアリーサルーン用はピッチを細かく刻み、アウト側ショルダー部の横溝を貫通させずノイズ低減を図った。一方、スーパーカー用は「P ZERO CORSA(ピーゼロコルサ)」の新型という位置づけで、溝を減らしブロックを大型化。セミスリックに近い高剛性パターンを作り上げた。 構造、材料面でも要求性能に合わせて本当にきめ細かくリソースを用意した。例えば305/30ZR20という同一サイズでも、アウディR8用はポリエステル2プライ+高張力ベルトキャップ+タイプAコンパウンド、ランボルギーニ・ウラカン用はレーヨン1プライ+中張力キャップ+タイプCコンパウンド、フェラーリ488用はレーヨン2プライ+高張力キャップ+タイプCコンパウンドといった具合に、クルマに合わせて様々なチューニングを施しOE承認を獲得したわけだ。 重要なのは、これら承認タイヤが履き替え用のリプレイス市場でも手に入る点だ。カーディーラーかピレリショップで注文すれば、新車と同じ純正タイヤが手に入ることを知らないユーザーは少なくない。見分け方はサイドの承認マーク。例えばアウディは「AO」か「RO」、ランボルギーニは「L」、フェラーリは「F」、ポルシェは「N」、メルセデスは「MO」、BMWは「★」といったマークが入っているので確認しよう。 限界コントロール性が実に見事新型P ZEROのアジア向け試乗会は、F1グランプリ第3戦が終わったばかりの上海国際サーキットで開催された。あいにくの雨でドライグリップは試せなかったが、非常に高いウェット性能が把握できた。 ピレリは以前から限界コントロール性を最重視し、ピークグリップはあえて抑えていた印象を受ける。しかし新型P ZEROは、ピークグリップも非常に高く、なおかつコントロール性もハイレベル。雨が降りしきる中でのウェットグリップは想像以上だった。 ポルシェ911とメルセデスAMG GTは同乗走行だったが、ランボルギーニ・ウラカンとアウディR8は自ら試乗できた。タイヤの横剛性やパターン剛性がしっかり確保されており、不自然な変形が見られないので安心して荷重をかけられる。コーナーの進入ではブレーキングでニュートラルステアに移行でき、アンダーステアが発生しにくい。 コーナーの頂点を過ぎて加速するとリアが滑り出すが、ここでも不自然な変形は皆無。しっかりトラクションがかかりながら回頭を助けるように少しずつスライドするので、上海サーキットの回り込むコーナーでもフロントが逃げず、アクセルコントロールが楽しめる。このときの限界コントロール性が実に見事! ピークを過ぎても急にグリップダウンせず粘ってくれるのでコントロールしやすいのだ。ピレリらしい、とても懐の深いタイヤだ。F1ビードと呼ぶ、ビード(ホイールと接する部分)の剛性均一化技術が効果を発揮しているのかもしれない。 ウラカンとR8はOE承認タイヤで、高い剛性の中にもしなやかさ、ストローク感があり足回りとのマッチングが素晴らしかった。おそらく乗り心地も良いだろうと推測できる。摩耗は綺麗で安定しており、ハイドロプレーニングも発生しにくかった。ウェットでも安心して、しかも相当高い次元で楽しめるタイヤだ。短時間の試乗ではあったが魅力の一端を垣間見ることができた。 要求に応じたきめ細やかなチューニング新型P ZEROは18~22インチの全77サイズ(2016年の国内販売は60サイズ)を用意。ランフラットやPNCS(ピレリ・ノイズ・キャンセリング・システム)という新技術を搭載したサイズも設定している。PNCSはタイヤの空洞共鳴音を抑制する技術で、ウレタン材を8個、インナーライナーに貼付。タイヤが太鼓のように足回りパーツと共鳴して“コーン”と発生するノイズを抑制するシステムだ。カーメーカーの要求に応じて搭載する方針で、現状ではマクラーレン、アウディ、ボルボの純正タイヤに採用したという。 このようなきめ細かさは元来、日本のタイヤメーカーが得意だったはずだが、集中的にプレミアムセグメントに力を注ぐピレリの本気度はすごい。極めて多品種少量生産になるため、販売の現場では、例えばフェラーリ用はあるけれどアウディ用は在庫がない、などという事態が頻繁に発生しないだろうか、、そんな心配が杞憂に終わればいいと思う。 スポーティコンフォートな「DRAGON SPORT」もうひとつの新型DRAGON SPORT(ドラゴンスポーツ)は、アジアパシフィック地域に向けたスポーティタイヤだ。一般的なリプレイス用で17~20インチの設定。OE承認は目指していない。特徴はドライ&ウェットグリップとコンフォート性。スポーツを名乗りながら乗り心地をアピールする点が面白い。 パターンデザインは新開発の非対称タイプを採用。4本の縦溝を基調に横溝がしっかり刻んであり、ウェットの安全性を重視したコンセプトが把握できる。アウト側ショルダー部は横溝を貫通させずドライグリップ向上と低ノイズ化を図った。旧型DRAGONより溝のピッチが細かく、ブロックが小さい。サイドやショルダーも比較的丸く、スポーツ指向というよりコンフォート性が目立ちそうだ。 サーキットでは中低速コーナリングとスラロームを試した。グリップは高めで粘りがあり、滑り出してもコントローラブル。剛性は高くないが、横方向の変形が小さいためハンドリングはなかなかスポーティに感じる。 剛性不足のコンフォートタイヤでスラロームをすると必ずリアがブレークしてスピンに陥るが、DRAGON SPORTは操舵中にわざとアクセルをオフしてもリアが滑り出さない。スピンしにくく安全性が高い特性だ。 マッチするクルマは多いだろう後日、DRAGON SPORTをオデッセイ・アブソルートに装着して日本の高速道路で試乗する機会を得た。225/45R18という低偏平サイズだが当たりはマイルドでゴツゴツ感は皆無。しなやかでフラットな乗り心地が快適だった。高速直進安定性はなかなかよく、微小舵角域がシャープすぎず収まりが良い。操舵時のレスポンスは穏やかだが挙動遅れが気になるほどではない。気楽にドライブできるタイヤだ。 乗り心地を悪化させたくないハッチバックやセダン、ミニバンのインチアップに最適。がっちりした剛性のスポーツ系とは異なるので間違えないでほしい。雨の日の安全性を重視した、スポーティコンフォートと考えれば、マッチするクルマは多いだろう。 【 P ZERO(ピーゼロ)・2016年導入予定サイズ 】■18インチ ■19インチ ■20インチ ■21インチ ■22インチ ■ランフラットサイズ ■P ZERO CORSA 日本導入=2016年4月より順次 【 DRAGON SPORT(ドラゴンスポーツ)・2016年導入予定サイズ 】■17インチ ■18インチ ■19インチ ■20インチ 日本導入=2016年4月より順次 |
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