10年ぶりの刷新ここ数年、世界中で最も明確な伸びを示しているクルマのカテゴリーは、疑いもなくSUVだろう。その結果、これまでこの分野には馴染みのなかったスポーツカーや超高級車のブランドまでもが、続々とSUVのマーケットに参入してきているのはご承知のとおりだ。 そんな状況のなかで、ドイツのプレミアムブランドとしては比較的早くこの世界に参入したアウディのトップオブSUVたるQ7が、2世代目にフルモデルチェンジした。先代のデビューは2005年、日本市場では翌2006年に発売されているから、10年ぶりの刷新ということになる。 そのスタイリングは、最近のアウディのデザイン傾向を明確に表現したもので、明らかに角張ったフロントグリルをはじめとして、全体にエッジーな処理が目につく。しばらく続いていた、流れるようなボディラインから決別しつつあるのだと思うが、慣れ親しんだアウディのスタイリングが持っていたデザインとは、少々違う傾向に進みつつあるのは確かなようだ。 先代よりも若干サイズダウンこれまでよりエッジーでシャープなデザインの効果もあってか、新型Q7は従来型より締まって見えるが、実はそれはデザインのせいだけではない。全長が35mm短くなり、全幅が15mm狭くなるなど、実際にボディが先代より小さくなっているのだ。 とはいえそのサイズは、全長5070×全幅1970×全高1735mm、ホイールベース2995mmと、今もクラス最大級だが、それでもモデルチェンジするたびに大きくなるクルマが大勢を占めるなか、Q7のサイズを削ったアウディに好ましいものを感じるのは僕だけだろうか? 同時に新型Q7のボディは、最良のモデルで0.31という、クラストップの空気抵抗係数を実現しているという。さらに車重の大幅な軽量化を達成しているところも大いに好ましい。アルミと高強度スチールの組み合わせによるボディで71kg、ドライブトレーンで20kg、サスペンション、ステアリング、ブレーキなどのシャシーで合計100kg以上もの減量を達成。最軽量モデルの2.0 TFSI クワトロでは同カテゴリーで最も軽いとされる2000kgの車重を実現している。 ラゲッジ容量&利便性を向上新型にフルモデルチェンジすると同時に、キャビンの居住空間やラゲッジスペースが先代モデルより拡大されるというのはよくある話だが、ボディサイズが縮小されたQ7の場合もそれが達成された。 キャビンの前後長が先代より長くなっているほか、オプションの7シーターパッケージの場合、独立式3列目シートのヘッドルームやショルダールームがとりわけ広くなっているという。 ラゲッジ容量は、7シーターパッケージの場合、7人乗り状態でも295リッターが確保され、3列目シートを畳んだ5人乗り状態では770リッターが得られるという。一方、ラゲッジルーム後端のシル高は先代より46mm低くなり、電動パワー式開閉のテールゲートと相まって、荷物の積み下ろしが容易になっているとされる。 エンジンは2リッター直4と3リッターV6の2種類搭載されるパワーユニットは、先代にあったV8が削除され新型は2種類。昨今の傾向から当然のごとく両方とも直噴の過給機付きTFSIユニットで、ひとつが2リッター直4ターボ、もうひとつが3リッターV6スーパーチャージャー。いずれも直噴は筒内噴射にポート噴射を加えたデュアルインジェクションに進化している。 パワーとトルクは、前者が252psと370Nm、後者が333psと440Nmで、いずれも8段ティプトロニックATと組み合わせられ、セルフロッキングセンターディファレンシャルを根幹とするクワトロフルタイム4WDを介して4輪を駆動する。その4WDシステムを8段ATのハウジングと一体化したのも新型Q7の特徴のひとつで、これによって駆動系の大幅なコンパクト化と軽量化が達成された。駆動力は通常、前輪40:後輪60の割合で配分されるが、状況によって前輪に最大70%、後輪に最大85%までの比率で配分を変える。 シャシーも当然新設計で、サスペンションが4輪ダブルウィッシュボーンから4輪5リンク式に変わって軽量化されたほか、エンジン搭載位置の変更などによって重心が先代より50mm低くなっている。その一方で、最大245mmのロードクリアランスを確保するなどして、オフロード性能も上げているという。 さらに、アダプティブエアサスペンションやオールホイールステアリング=4輪操舵などが新たにオプション設定されたほか、アウディドライブセレクトによって合計7つの走行モードを選ぶことができる。しかもドライブセレクトは、アダプティブサスペンションとも連動して作動する。 それに加えて、追突事故を回避する方向に働くアウディプレゼンスシティや、最悪の場合の衝突に備えるアウディプレゼンスベーシック、あるいは高速道路などでの車線維持をサポートするアウディアクティブレーンアシストなど、多彩なアシスタンスシステムを備える。日本での販売車種は2.0 TFSI クワトロ と3.0 TFSI クワトロの2モデルで、税込みプライスは804万円と929万円。そのそれぞれに、オプションのアダプティブエアサスペンションやオールホイールステアリング装着車を選ぶことができる。 エアサス装着の3.0 TFSI クワトロに試乗横浜をベースに試乗したのは、3.0 TFSI クワトロにアダプティブエアサスペンションスポーツや20インチホイール&タイヤなどを含むS lineパッケージほか、豊富なオプションを装着したクルマで、プライス総額は1216万円に達する。 大型SUVらしく、それなりに高く、見晴らしのいいドライバーズシートに落ち着き、Dレンジをセレクトして走り出すと、最初に印象的だったのは乗り心地のスムーズなことだった。昔のクロカン4WDと違って、今どきのSUVの乗り心地が粗くないのは常識だが、ニューQ7のライドはその常識をさらに超えていた。 試乗車は標準の19インチに対してオプションの20インチタイヤを履いていたが、それによるバネ下の重さを感じさせることもなく、路面の凹凸をスムーズに乗り越えていく。そこにオプション装着されたアダプティブエアサスペンションが効果を発揮しているのは間違いないが、標準の金属スプリングサスペンションの乗り心地がどうなのか、気になるところではある。 しかもQ7の乗り心地、ソフトなだけで締まりがないかというとさに非ず、たとえアウディドライブセレクトをソフトなコンフォートモードにセットしていても、適度なフラット感が演出されている。 ドライブセレクトは、コンフォートモードの次にオートモードがあり、さらにその次にアクティブモードが位置する。それを選ぶと、スロットルレスポンスが明らかに鋭くなると同時にステアリングの操舵力も変化、さらにサスペンションも締め上げられる。 今回の試乗コースにはワインディングロードはなかったから、そういう舞台での有効性について試すことができなかったが、一般道や首都高、あるいは高速道路といったルートでは、アクティブモードのやや上下動の速い乗り心地は、当方としては少々落ち着かない印象をうけた。乗り心地の快適さに加えて、室内が静かに保たれていることも、普通に走って印象的なことのひとつだった。 オールホイールステアリング装着で最小回転半径が-40cm前記のように、テストルートにはワインディングはなかったから、高速道路のランプウェイなどで試した範囲での話だが、コーナリングにも安心感がある。たとえコンフォートモードでもボディのロールは適度に抑えられていて、安心してコーナリングを愉しめるのだ。 その安心感の一因はステアフィールにあると思った。コンフォートモードではステアリングの操舵力は軽めではあるものの反応は正確で、路面の感触が確実に伝わってくる。と同時に、これもあくまで日常的な走りの範囲での話だが、ブレーキにも不満はなく、自然な感触で常に充分な制動力を提供してくれる。 未舗装路での使用を想定したオールロードモードについては書くべき材料を持たないが、少なくともオンロードに関していえば、新型Q7、顕著なネガ、つまりここは嫌だな、と感じさせる部分はなかったといえる。ボディサイズが大きい割に運転席からの見切りがいいのも好ポイントのひとつだとつけ加えておこう。 5.7mとされる最小回転半径は、同カテゴリーのライバルのなかでも小さい部類だが、オプションの4輪操舵=オールホイールステアリングを装着すると、さらに40cmほど最小回転半径が小さくなる。車庫入れが大変な状況にある御仁は、装着を検討する価値はあるだろう。 最良の選択候補のひとつといって間違いない最後になったけれど、333ps/5500-6500rpmのパワーと440Nm/2900-5300rpmのトルクを生み出す3リッターV6スーパーチャージャーエンジンと8段ATからなるパワートレーンにも、好ましい印象をうけた。このエンジン、心地好いサウンドを奏でてスムーズに回り、必要にして充分以上のパワーを発揮する、気持ちのいいパワーユニットに仕上がっているのだった。 これも僕の好みからいうと、コンフォートモード状態がレスポンスに関してもちょうどいい感じだった。ダイナミックモードでは少々反応過剰気味になって、いささか落ち着かなくなる。とはいえ、このあたりは乗り手の好みにもよるので一概に判断はできないが。 2リッター直4ターボについては乗るチャンスがなかったので何ともいえないが、昨今の同様のエンジンはどのメーカーもなかなかの実力を持っているので、おそらくQ7を走らせるのに不足はないだろうという推測はできる。 というわけで新型Q7、10年ぶりのフルモデルチェンジに相応しく、気合の入った出来のいいクルマだというのが、横浜とその周辺で走らせた範囲で感じた正直な印象だった。気になる点や不快な部分がまず見当たらないことに加えて、乗り手に心地好さを感じさせる要素をしっかりと備えている。 筆者個人としては、このサイズのSUVを所有したいという思いは皆無だが、これと同様の乗り味を二回りほど小さいサイズで実現したクルマがあれば、ちょっと欲しくなるかもしれないとは思った。ま、それはいわゆる、無いものネダリにすぎないけれど。 けれども、このカテゴリーのSUVを自身のガレージに収めたいと真剣に考えている向きにとって、ニューQ7は最良の選択候補のひとつだといって間違いないと思う。興味のある御仁は早速ディーラーに出向いて、試乗してみることをオススメしたい。 スペック例【 3.0 TFSI クワトロ 】 |
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