MTモデルは最大トルクが7.1kgm増しポロGTIの試乗を始めてすぐ、前にクルマがいなくなったので、アクセルペダルを蹴飛ばすほどではないものの、わりと勢いよく踏んでみた。ギアは2速。びっくりした。前輪が路面をグイグイ掴んで強烈にクルマを前へ進めていく。80年代のFWDホットハッチのように急加速でステアリングホイールが暴れるわけではないが、暴れたいのを必死にこらえているような手応えがある。 ポロGTIってこんなに速かったっけ? こんなに激しいキャラクターだったっけ? 言っても最大トルク25.5kgmでしょ? もっと優等生だと思っていたが、MTにした途端にこんなになっちゃうのかな……信号待ちの間に資料にあたって事情を知った。MTモデルの場合、最大トルクがDSGモデルに比べて7.1kgm増しの32.6kgm/1450-4200rpmなんだそうだ。DSGモデルだと32.6kgmはキャパオーバーとなるらしい。最高出力はDSGモデルと同じ192ps/4300-6200rpm。 単純なシフト操作でも実に楽しいいったん道路脇に停車した。よし、そういうことならこちらもそういう心構えで臨もうじゃないか! ダイヤルを回していつもよりちょっとシートバックを起こし、それに伴いミラーの角度も調整し、左右のドライビンググローブを交互に引っ張って緩みを直すかのような仕草だけして気分を高め、クラッチペダルを踏み、ギアを1速に入れ、後方を確認し、エンストした。 言い訳じゃないが、クラッチペダルがすごく軽いのだ。スポーティモデルのクラッチペダルはもう少し重いと相場が決まっている。そんな時代錯誤な……とおっしゃるかもしれないが、ポロのは本当に軽いのだ。 あらためて発進。12月の夕方は早くから暗い。ヘッドライトオンで山道を駆け上がる。GTIのエンジンは最高出力を発揮する6000rpmを少し過ぎたところまで一気に吹け上がる。TSIエンジンは本来実用型なので官能的というわけではないが、実直に速い。運転を楽しむのにこれ以上のパワーはいらないと思わせる。くねくねした箱根の一般道だと2速が中心で、時々3速へ入れてちょっと踏んですぐまた2速へ落とすことの繰り返し。それだけのことが実に楽しい。 コクコク派かグニャグニャ派かDSGだと自動的にギアが選択され、マニュアルモードにしたってパドルを引くだけで完璧に変速できてしまうのに対し、MTだとうまく変速できるとは限らず、悔しい思いをすることもある。いつもはうまくいくのに人を乗せている時に限って失敗し、顔から火が出そうになることもある。その代わりうまく決まった時には万能感に包まれる。信賞必罰。これこそがMTの魅力ではないだろうか。次はもっとスムーズに運転してやろうと思わせる。人間は自動運転も夢見る一方でマニュアル変速もしたがる面倒な生き物だ。 ポロGTIのシフトレバーは自然な位置にあって操作しやすい。節度感があって、コクコクと小気味よくギアチェンジすることができる。MT好きはシフトフィールがコクコク派とグニャグニャ派に分かれる。私自身はコクコク派の代表的モデルであるユーノス・ロードスターで運転を覚えたため以前はコクコク派だったが、ルノー・スポールの何かに乗った際、こっちの方がミスなく素早い操作がしやすいと感じてグニャグニャ派に寝返り、けれどもやっぱり気持ちいいのはこのポロGTIみたいに節度感あるタイプかな……と、結局まだ結論が出ていない。最近ちょっと乗ったアルト・ワークスが完全にコクコクタイプで、ストロークも短くて気持ちよかったので、コクコク派に傾き気味だ。 DSGとMTの両方を試してみるべきポロGTIには電子制御ダンパーが用いられ、減衰力をスポーツとノーマルから選ぶことができる。当然スポーツの方がハードな乗り心地になり、飛ばしても安定しているといえばしているが、ノーマルでもソフト過ぎてスポーティに飛ばしづらいわけでもない。むしろ姿勢変化がよくわかって、より安心して飛ばすことができた。ノーマル一択でもよかったのではないか。ま、これは好みであり、スポーツモードがあることで邪魔になるわけではないので、選べること自体は歓迎したい。 この後に乗ったゴルフGTIのMTモデルは、ポロのそれよりも大人っぽさを保った性格をしていた。いずれにせよ、ポロでもゴルフでもスポーティモデルのGTIを選ぶなら、DSGとMTの両方を試してみるべきだ。 続いてスポーティなPHV、ゴルフGTEに試乗スポーティなのがGTI、スポーティなディーゼルがGTD、スポーティなプラグイン・ハイブリッドがGTEだ。GTEは1.4リッター直4ターボエンジン(最高出力150ps/5000-6000rpm、最大トルク25.5kgm/1500-3500rpm)+電気モーター(同109ps、同33.6kgm)に6速DSGを組み合わせたパワートレーンによって前輪を駆動する。 GTEのEモード(EV)での走行可能距離はJC08モードで53.1km。実際の走行可能距離は7掛けとして37km。1日の走行距離がこれ未満であれば、前夜に満充電しておく限りガソリンを使わずに生活できる。急な遠出の場合はHVモードで対応すればよい。ただ、これだけならゴルフPHVを名乗ればよいのだが、GTEを名乗るだけあって、バッテリーに蓄えた電力をモーターの航続距離を稼ぐのではなく、贅沢にもエンジンパワーに上乗せして速く走らせるのに使う、その名もGTEモードを選ぶこともできる。 GTIと比べても不満を覚えることはないはずGTEモードでもエンジンとモーターが同時に最大トルクを発揮することはなく、システムとしての最大トルクは35.7kgmとなる。これはGTIと同じ値だ。しかしながら、GTIの車重が1390kgなのに対し、PHVシステムが加わるGTEは1580kgと190kg重い。このため、総合的な運動性能はGTIに軍配があがる。ただし、とっかえひっかえして乗り比べでもしなければ、GTEの走りに不満を覚えることはないはずだ。 モーターで発進し、途中でエンジンがかかる時の振動もうまく抑え込まれている。低い位置に搭載されているバッテリーは重量物ではあるものの、全体の重心を下げており、そこはかとない重厚感につながっている。自宅か職場で日常的に充電ができる環境にある人にとっては面白いゴルフだと思う。 ポロGTI(6MT)スペック全長×全幅×全高=3995mm×1685mm×1445mm ゴルフGTE スペック全長×全幅×全高=4265mm×1800mm×1480mm |
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