550psを雪上に解き放つ【 Fタイプ R AWD 】昔の海外の自動車専門誌で真冬のスキーリゾートに高級スポーツカーがずらりと並ぶ絵を見たときには、「超カッコいい!」とコーフンした。板や荷物はどうするとか、あんなサイズのスタッドレスタイヤはいくらするのかなどなど、いまになるとあれがお大尽の遊びだということがよーくわかる。 しかし、ジャガー・ランドローバー・ジャパンが主要モデルを黒部ダム周辺に集めて雪上試乗会を開催したことで、一日だけお大尽の気分を味わうことができた。 バゥオン! と550psのV8に火を入れて、「ジャガー Fタイプ R AWD」を雪上クローズドコースのスタート位置まで進める。スラロームと八の字コースでアクセルを踏んだり戻したりしてみると、意外やこの車が雪遊びに向いていることがわかる。 羽生結弦もアリ!?【 Fタイプ R AWD 】基本はFR(後輪駆動)で走行し、車輪のスリップを検知すると電子制御式のクラッチが前輪にもトルクを伝えるというのが、このクルマの四駆システムの仕組みだ。したがってオン・ザ・レールで安定しているというのではなく、アクセル、ブレーキ、ステアリングホイールそれぞれの操作タイミングや強弱によって、後輪が滑り出す“きっかけ”をつくりやすいのだ。 スイッチを長押ししてDSC (横滑り防止装置)の介入を控え目にしてみる。これがおもしろい! うまくいけば、スキーのスラロームのように横滑りしながらパイロンをクリア、下手をうてばパイロンの周りでスピン。上手にクリアできてピタッと着地が決まったときには、「ジャガーのブランドアンバサダー、錦織圭選手もいいけど羽生結弦選手でもいいのでは?」と思う。 とにかく猛獣を手なずけるこの遊びは楽しくて、一日中ハマってしまいそう。ヨーロッパのスキーリゾートにスポーツカーで乗り付けるエンスージアストの気持ちが、少~しだけわかったような気がした。欲を言えば、もう少し広いコースで猛獣と戯れたかった。 スペック・Fタイプ R AWD クーペ【 ジャガー Fタイプ R AWD クーペ 】 巨匠の言葉を胸にアクセルオン【 XE 25t ポートフォリオ 】「自動車の評価は、直前に乗ったクルマの影響を受ける」というのは、自動車評論の巨匠、故・徳大寺有恒さんの言葉だ。超パワフルなスポーツカーの直後に乗ればちょっとやそっとの加速には不感症になっているし、シトロエン2CVから乗り換えれば大抵の車はボディがしっかりしていると感じる。 巨匠ですらそうおっしゃるのだから、私ごときが550ps・V8のジャガー Fタイプ R AWDから240ps・直4の「ジャガー XE 25t ポートフォリオ」に乗り換えたら、モノ足りなく感じるのは当然だろう……。 てなことを考えながら、XEのドライビングシートに収まる。これまでに何度か試乗したジャガーXEというモデルに対する個人的な感想は、「ちっちゃいけれど、中身はジャガー」というもの。しつらえのよさ、乗り心地のしなやかさ、ハンドリングの正確さなどは、大きな「XF」や「XJ」にもひけをとらないと思っている。では雪道、しかもクローズドコースで振り回してみるとどうなのか。 まずはお手合わせ、ゆっくりとスラロームをこなす。ここで感じるのは、轍が掘られている凸凹の路面でも、しっかりとサスペンションがストロークして路面をとらえているということだ。凸凹に応じて足が自在に伸びたり縮んだりすることで、後輪にトラクションがしっかりかかっている。 緻密な制御とセッティングの妙【 XE 25t ポートフォリオ 】少しスピードを上げてみる。走行ラインが外側にふくらみそうになると(つまりアンダーステアが出ると)、リア内輪にブレーキをかける「トルクベクタリングバイブレーキング」が作動して、正しいラインに戻してくれる。 反対にリアがスライドしすぎてスピンのモードに入ると(つまりオーバーステア傾向になると)、今度はDSCが介入して横滑りを抑制してくれる。付け加えると、カウンターステアをあてるような場面でも、電動パワステの舵の効きは常に正確だった。 どちらのデバイスも作動は自然で、運転の楽しみをスポイルしないように丁寧にセッティングされている。また、こうした小さなコーナーをクリアするようなコースでは、ボディが軽快に動くことを肌で感じる。 アルミを多用した軽量ボディ、スポーティさと快適さを両立する絶妙のセッティング、そしてアシストはするけれど邪魔はしない電子デバイス。やはり、ジャガーXEは「安いジャガーではなくコンパクトなジャガーである」と感心したのだった。 後述するが、同じグループに属するランドローバーの四駆技術はやはり大したものだ。スポーツサルーンづくりの名人が、同じグループの知恵を借りてつくる「新型ジャガー Fペース」が、どんなSUVに仕上がっているのかという期待もふくらんだ。 スペック・XE 25t ポートフォリオ【 ジャガー XE 25t ポートフォリオ 】 カッコだけではない【 レンジローバー イヴォーク HSE 】四駆+スタッドレス(コンチネンタルのバイキングコンタクト6)のレンジローバー・イヴォークが普通の雪道を普通に走るのは、当然で驚きはなかった。SUVとしては低い重心を利して、雪の積もったワインディングロードのコーナーの連続をリズミカルにクリアする。何も起こらないし、何かが起こる気配もない。 けれども、コブや斜面を用意した、特設ステージに乗り込んで驚く。まず4つのタイヤのうち1つが浮いてしまうようなコブ斜面でも、ドライバーは涼しい顔でステアリングホイールを握っていられる。オシャレSUVだと思われがちなイヴォークであるけれど、さすがはランドローバー一族。カッコだけではない。 ボーッと乗っているとただ安定しているだけのように感じるが、神経を研ぎ澄ませて確認すると、ブレーキやトルク配分などがものすごくきめ細やかに制御されていることがわかる。イヴォークの電子制御システムは、ドライバーには悟られないようにいい仕事をする執事だ。このあたりのセッティングの妙は、やはり蓄積したノウハウの賜物だろう。 状況に応じて最適なトルクを配分するテレイン・レスポンスをはじめとする電子制御デバイスのセッティングをいろいろと試してみたけれど、筆者レベルのオフロードでの運転技術だと、結局は「車にお任せ」が一番安定することに気付く。特に急坂を下る場合は、ヒル・ディセント・コントロールをオンにして、アクセルもブレーキも操作しないのがベストだった。 スペック・レンジローバー イヴォーク HSE【 ランドローバー レンジローバー イヴォーク HSE 】 ジャイアント馬場さんを思わせる【 レンジローバー ヴォーグ 】「日本の道幅でも使いやすいし、イヴォークで充分じゃん」と思いながら本日最後の試乗車、「レンジローバー・ヴォーグ」に乗り込む。「イヴォークで充分」というのはある意味で正解。オフロードであれ雪道であれ、少なくとも日本で一般的に遭遇する状況であれば、レンジローバーにできてイヴォークにできないことはないだろう。 ただし、レンジローバーとイヴォークをイッキ乗りすることで、レンジの懐の深さを感じたこともまた事実だ。ゆったりとしたサスペンションの動き、ゆとりのエンジンパワー。スローモーションのように動くあたりは、亡くなったジャイアント馬場さんを思わせる味がある。この味をだすにはある程度の物理的な大きさと重さが必要なのだろう。 イヴォークは「いいクルマ」、レンジローバーは「すごいクルマ」という結論でこの日を終えた。 スペック・レンジローバー ヴォーグ【 ランドローバー レンジローバー ヴォーグ V8スーパーチャージド 】 |
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