プリウスの4WDモデルで1500kmのスノードライブプリウスに待望の4WD「HV4WD」が登場した。自他共に認める“4WD乗り”としては、スタッドレスタイヤを履かせた新型プリウス4WDモデルのスノーテストはマストだ。今回は上越往復で約600kmを走破したほか、別の機会には信越にも足を延ばし、合計1500kmを走り込んだ。 上越ドライブの燃費は往路が上りで19km/L前後、復路は下りとなるため21km/L前後だ。1500km走行の平均燃費は19.5km/L。もちろん、エコカーとしてプリウスのステアリングを握ったわけではなく、ロングドライブを楽しむグランドツーリングとして、エコドライブを意識しない清水流の走りを楽しんだつもりだ。 レースも含め、長年4WDモデルに乗り続けた私がたったひとつの教訓を述べるならば「4WDは両刃の剣で、万能ではない」ということになる。実は止まる・曲がる性能は2WDも4WDも同じだ。滑りやすい路面では加速性能に優れる4WDのほうが速度が上がるから、より優れたブレーキシステムが必要なのである。 プリウス4WDモデルは単なるエコカーを卒業し、冬季のグランドツーリングに資するクルマになったかどうか? 今回の旅では衝突回避支援パッケージの「トヨタ セーフティ センス P」も試すことができたので、あわせてレポートしよう。 日本のスタッドレスタイヤにも落とし穴がある東京を出発し、関越自動車道で新潟の湯沢を目指す。タイヤは17インチのBS製スタッドレス。多くの日本人は日本のタイヤメーカーのスタッドレスがベストだと信じているが、ほとんどの国産スタッドレス・タイヤはスノー路面、特にアイスバーンのグリップを重視して開発されるので、トレッドゴムがかなり柔らかい。これではドライ路面で高速性能が安定しなかったり、もっと怖い場合はウェット路面でハイドロプレーニング現象を起こしやすい傾向がある。ウインタードライブではドライ、ウェット、深い水たまり、圧雪、新雪、轍、アイスバーンなど、サマーシーズンには経験できない多種多様な路面を走るから、ロバスト性が重要だ。4WD乗りの私の経験から言えば、ボディやサスペンションがしっかりとしたクルマにはミシュランをお勧めしておきたい。 そんなわけで、新型プリウスのシャシーが本来持つ直進安定性は味わえず、やや物足りなさを感じながら関越自動車道を北上する。谷川岳PAを過ぎると関越トンネルだ。川端康成の小説にでてくる「トンネルを抜けるとそこは雪国であった」という一節を思い出していると案の定、外気温計はマイナスを表示し、湿った雪が降ってきた。 リアをモーター駆動するオンデマンド式4WD新型プリウスの4WDモデルは、駆動ユニットを搭載するためにリヤサスペンションをダブルウィッシュボーン式に改め、しかもモーターで駆動する電動4WDの「E-Four」を採用している。モーター駆動なのでセンタートンネルがなく、キャビンの床がフラットなので、足元スペースや荷室容量を犠牲にしないメリットがある。 メーターパネルを見ていると、フロントよりも若干遅れてリヤが駆動する。フロントタイヤだけでは十分な駆動力が得られないとき、リヤがアシストするオンデマンド式だ。 ふだんはアクセルを強く踏み込まないとリヤのモーターは作動しない。基本はFF(2WD)で走り、いざという時に後輪も駆動する4WDとなって安定性を増すのだ。 高速道路中心のスノードライブを評価すると?今回装着したスタッドレスタイヤは硬いドライ路面では剛性不足なので、ステアリングの手応えが甘いのは冒頭にも述べたが、これはタイヤの特性なので我慢する。この点を除けば、新型プリウスはFFで走行中も操縦性に変化はなく、十分に安心して高速の雪道を走ることができる。 ドライビングポジションや視界がいいのもプリウスの特徴で、ロングドライブは本当に走りやすい。道路のつなぎ目のハーシュネスもしなやかで、サスペンションもスムーズにストロークしている。さらに、ドライビングポジションや車両の重心点が低められているのでコーナーリングなどでの安定性も向上している。 つまり、プリウスの4WDが走りやすいというよりも、4代目プリウスのシャシー性能がよくできている、というのが今回のロングツーリングで最初にわかったことだ。ヨンクがオマケというわけではないが、ボディ・サスペンション・パッケージなどの基本性能を磨いた「TNGA」のコンセプトや、そこから生み出された新プラットフォームの勝利だろう。 雪が多い地域のスノードライブを評価すると?雪が深くなると4WDが本領を発揮するが、実は路面抵抗が大きくなると、エンジンとモーターの絶対パワー(トルク)が不足気味に感じてしまった。深い雪の駐車場ではバックギアのほうがギア比の関係で走破性が高かった。欲を言えば、プリウス4WDにはもうすこしパワーがほしい。 どんな路面であろうと、どんな駆動方式であろうと、どんな技術であろうと、どんなタイヤを履こうと、どんなスピードであろうと、どんなにうまいドライバーがステアリングを握ろうと完全はない。ドライバーがクルマや運転技術の限界を知り、そこに近づかないことが重要だ。つまり、4WDの性能を使いきるのではなく、余裕として残しておきたいということだ。このセオリーを守る限りプリウスのE-Fourは雪国でも十分な実用性を持っている。実際の生きた路面で、いかに安心&快適かつ環境にやさしい走りが楽しめるのか。このスタンスが時代が求める価値なのだろう。 トヨタ セーフティ センス Pの実力は60点結論だ。私はポルシェ カレラ4を買うように、プリウスも4WDモデルを買うことをおすすめしたい。スキーヤーズ・スペシャルでなくても、沖縄に住んでいても、4WDのほうがいいと思う。4WDはFFよりも約5ミリ車高が高いのに、高速走行でも安心感は上回っている。燃費はもちろん大事だが、新型プリウスの4WDモデルは従来のプリウスの世界観から確実に抜け出している。 一方、今回の長距離ドライブでは課題も見えた。トンネルなどではフロントウインドウの両端が曇りやすいのだ。ダッシュボードが低くなって視界がよくなったのはいいが、ウインドウが曇るようでは洒落にならない。この程度の曇りは他のモデルでも生じるし、曇り止めを塗っておけばいいのかも知れないが、アップデートしてほしいところだ。 シートヒーターも問題だ。座面の大腿部の下側が特に熱く、長時間座るグランドツーリングでは、私はエアウィーヴ製の座布団を敷いて対応する必要があった。 最後に、スバルのアイサイトをライバルとするトヨタ セーフティ センス Pの使い勝手は60点だ。関越トンネルを抜けて湯沢に入ると雪が舞う。この地域の雪は水分を多く含む重い雪で、これがフロントグリルのトヨタマークにへばりつき、その後ろに装備されるミリ波レーダーがエラーになってしまう。車線を検知するカメラもうっすらと積もった雪で白線が認識できない。同じ道を新型ボルボXC60で走ってみたが、ボルボは問題なかった。もっと実際の路面や道でテストを重ねてほしいと思った。 スペック【 A プレミアム“ツーリングセレクション” E-Four 】 |
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