初代の大ヒットから22年オデッセイというと、1994年に初代がデビューしたときのことを思い出す。当時の開発チーフがプレゼンテーションで曰く、ホンダは前を走られると目障りになるような背の高いピープルムーバーはつくらないし、排ガスに黒煙を吐くようなピープルムーバーもつくらない。その回答がオデッセイである、というアピールをしたように記憶している。 実は当時、ホンダの生産工場の天井が背の高いクルマをつくれない高さしかなかった、というお家の事情があったらしいが、たしかに初代オデッセイは、当時はまだ「ミニバン」ではなく「ワンボックス」と呼ばれていたカテゴリーの日本車のなかで相当にユニークなクルマだった。しかもそれが大ヒットになってホンダの業績は急上昇、一時はピープルムーバーのホンダ、とまで言われたものだった。 それから22年が過ぎて、今回試乗したのはオデッセイとして5代目にあたるクルマだ。このモデルの発売開始は2013年秋だから、すでにそれから2年半近く経っているが、1600mmオーバーの全高と両面スライドドアを採用した、オデッセイとしては初の背の高いミニバンである。 エンジンとモーターの立場が逆転その5代目オデッセイに「ハイブリッド」が追加されたのが、今回のマイナーチェンジの最大のポイントである。これによって現行オデッセイは、2.4リッター直噴ガソリン、2.4リッターガソリンの2種類の4気筒エンジンに加えて、ハイブリッドという合計3種類のパワーユニットを持つことになったわけだ。 ハイブリッドシステムは、ホンダが「スポーツハイブリッド」と呼ぶ2モーターのi-MMD方式だが、最大のポイントは、アトキンソンサイクルを採用した2リッター直4ガソリンエンジンが145psと17.8kg-mを出すのに対して、モーターの方は184ps および32.1kg-mと、エンジンを凌ぐパワーを発生することにあるといっていい。 かつてのホンダハイブリッドが、エンジン主体でモーターはターボ的なトルクアシストというイメージだったのを思い出すと、ちょっと驚くスペックである。それらの結果、JC08モード燃費は2.4リッターガソリンエンジンの12.8~14.0km/Lから、ハイブリッドでは24.4~26.0km/Lへと大きく向上する。 電気で走るホンダ車が増えていくそこで思い出すのが、ホンダの八郷隆弘社長が最近の記者会見で明らかにした以下の話である。ホンダは今後世界中で厳しくなるCO2削減をパワーユニットの電動化によって達成するべく、電気で動くクルマ=電動車の割り合いを現状の5%から、2030年に3分の2まで引き上げる計画だという。 そのために、ハイブリッド(=HV)やプラグインハイブリッド(=PHV)の販売比率を50%以上に高めるのに加えて、ゼロエミッションヴィークルである燃料電池車(=FCV)や電気自動車(=EV)も、北米などのマーケットで積極的に展開していくという。 ザックリいえば、エンジンで走るホンダ車の割り合いを減らし、電気で走るホンダ車を増やしていく、ということだ。で、その意気込みが、今回のオデッセイハイブリッドのモーターとエンジンのパワーの比率にも表れているのではないか、と思うのである。 力強いダッシュが手に入るけれど5代目オデッセイ、標準仕様とスポーティに装ったアブソルートの2モデルがあるが、ホイールベースはいずれも2900mm、外寸は前者で4830×1800×1695mm、後者で4830×1820×1685mmと、けっこう大きいクルマだ。だから車重は、ガソリンエンジンモデルで1720~1810kg、ハイブリッドモデルでは1810~1880kgに達する。 主に乗ったのはハイブリッドの標準仕様だったが、やや高めの着座位置からの視界は良好で、ダークな木目調パネルのダッシュボードにブラックのコンビシートを持つ室内は、やや鮮やかさには欠けるものの、落ち着いた雰囲気を発散している。 発進は電気モーターによるもので、当然ながらスムーズに走り始める。起動時に最大トルクを発生するモーターのこと、深く踏み込めばそれなりに力強いダッシュが手に入るが、メーターの中央に表示されるエレキとパワーのフローを示すディスプレイを目にすると、そういう無駄なことはなるべく避けようという気分になるから、不思議なものだ。 ハイブリッドの制御はスムーズそのもの市街地では、スロットル操作に神経を配って深く踏み込まなければ、そこそこのスピードまでEVモードをキープできるが、あまり気にせずに踏み込むとエンジンが掛かって、ハイブリッドドライブモードに変わる。その際のモードの切り替わりはもちろんスムーズなものだ。 高速に入ってコンスタントスピードでクルージングする際などは、エンジンドライブモードに切り替わり、エンジンと駆動系を直結して効率の高いクルージングを可能にする。このモードでは、いわば普通のガソリンエンジン車と変わらない走りが味わえるわけだ。 一方、高速クルージング中に追い越しが必要になったときなどに、スロットルを踏み込むとハイブリッドドライブモードに切り替わり、エンジンと走行用モーターを駆使したパワフルな加速が手に入るのは、たしかになかなか気持ちいい。 ステアフィールは可もなし不可もなし開口部が広いわりにボディ剛性に不足はなく、フロントがストラット、リアがトーションビームという、シンプルな形式のサスペンションにもかかわらず、乗り心地は適度にソフトで不満のないものだった。ま、1800kg台という車重を考えれば当然ではあるが。 その一方で、幕張とその周辺という試乗コースの特質上、コーナリングを試せるようなカーブは皆無といってよく、ハンドリングに関して特に書くべき情報はない。ステアフィールは、可もなし不可もなしといったところだった。 短時間ながらハイブリッドのアブソルートにも乗った。こちらは車高を10mm低め、タイヤも標準仕様の16インチに対して17インチを履く。乗り心地は標準仕様より若干硬く、脚のストロークも多少短い印象をうけるが、普段乗りを遠慮したくなるような乗り味ではなかった。ゆえに、ルックスの好みに応じてこちらを選ぶ手もあるだろうとは思う。 価格差をどう考えるか?その他にもう一台、ガソリンエンジンのアブソルートにも乗った。これは、190psを発生する2.4リッター直噴・直4とマニュアルモード付きCVTで、ハイブリッドより軽い車重を走らせるモデルだが、その印象は決して悪くなかった。 スタートダッシュの瞬間は、ハイブリッドのような電気モータートルクの感触はもちろんないものの、それなりに軽快だし、それ以降のスピードの伸び、つまり加速にも、特に不満はない。つまり動力性能は必要にして充分、という感じなのである。 JC08モード燃費はハイブリッドの26.0km/Lに対して、ガソリンエンジンのモデルは13.0km~14.0km/Lと、半分近くに下降する。その一方でプライスは、「ハイブリッド・EXパッケージ 7人乗り」の399万円に対して、ガソリンエンジンの「G・EX ホンダセンシング 7人乗り」が338万円と、この例の比較では61万円の違いになる(※安全装備はほぼ同等レベル)。 というわけで新型オデッセイ、ハイブリッドモデルを選ぶか、ガソリンエンジンモデルで充分とするか、それぞれに長所があるだけに、選択が難しいクルマだろうと思う。 スペック例【 オデッセイ ハイブリッド・EXパッケージ 7人乗り 】 【 オデッセイ G・EX ホンダセンシング 7人乗り 】 ※いずれも安全支援システム「ホンダセンシング(ミリ波レーダー×単眼カメラ)」を標準装備。ホンダセンシングには、衝突軽減ブレーキやACC、LKAS(車線維持支援)、誤発進抑制機能などが含まれる。 |
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