マイナーチェンジしたSLは9速ATも導入2012年にフルモデルチェンジしたSL。デトロイトショーでホワイトボディを見た時、そのつくりのすごさに驚いたのを記憶している。フロントピラーのスチールと一部にマグネシウムを使用した以外、ほとんどの部分をアルミで成形していたからだ。複雑なファイアウォールの形状も見事にこなしていた。 そのSLが今回マイナーチェンジを遂げた。といっても内容はフェイスリフトと装備のアップデート。構造的な変更は見当たらない。ただ、ステアリングを握ったのはカリフォルニアのサンディエゴ。2月というのに30度近くに上がった気温とビスタポイントの続く山々を駆け、ロングドライブで触れることができた。SLを再認識するいい機会であったと言える。 新型SLの国際試乗会をアメリカの地で行った理由は極めてシンプル。いい気候とそこがメインマーケットだからだ。SL販売のベスト5は、アメリカ、英国、ドイツ、カナダ、日本という順番。その意味では日本は重要なマーケットのひとつに数えられる。 ラインナップはSL400、SL500(日本名SL550)、メルセデスAMG SL63、メルセデスAMG SL65。パワートレーンの変更はSL350に積まれていた3.5リッターが3リッターV6ターボとなりSL400となった。これはE400と同じと考えればいい。そして、そのSL400とSL500のトランスミッションが9Gトロニックになったのもニュース。7Gトロニックから各モデル順次スライドしはじめている。 グリルが最新デザインのダイヤモンド柄に目玉となるフェイスリフトはヘッドライトとバンパーの形状が目に付く。ここは他のラインアップにならったかっこうだ。メルセデスファミリーであることをアピールする。正直これまでの顔は好きじゃなかったので今回の変更はウェルカムだ。 これと同時にグリルがダイヤモンドグリルになったことも見逃せない。他のメーカーがいろいろ模索している中、このデザインのオリジナル性は高い。いまのところAクラス、CLA、CLSに採用されているが、今後波及していくであろう。 オプションのABCはダイナミックカーブ機能を装備では、アップデートされた電子デバイスに話を移そう。まずはダイナミックセレクトだが、これまでスポーツとコンフォートしかなかった選択肢が、スポーツ+、インディビジュアルも追加された。より走りの幅を広げたということだ。 そしてさらに油圧制御のサスペンションシステムABC(アクティブボディコントロール)をオプションで搭載すると、ダイナミックカーブ機能も追加される。これはコーナーで外側のサスを踏ん張らせキャビンをフラットに保つものだ。だが、その目的はコーナーを速く走らせるものではない。あくまでも快適に走るために開発された。 それを証拠にダイナミックカーブを選択すると、同時にエンジンがエコモードに、ステアリングはコンフォートに切り替わる。これがデフォルト。アクセルもステアリングもシビアではないということだ。助手席のパッセンジャーも快適な移動空間を味わえる。 このデバイスは昨年リリースされたSクラスクーペから採用される。なのでSLは2モデル目。こちらもまた今後Sクラスを筆頭にラージクラスに波及していくことは想像しやすい。 ベースグレード・SL400の持ち味は安定感と快適性試乗は、SL400、メルセデスAMG SL63、そしてSL500の順で行った。ニューポートビーチからサンディエゴおよびその周辺のフリーウェイとワインディングを駆け回る。 SL400の特徴は地に足の着いた安定感と快適性だ。ワイドトレッドのSLはスポーティでありさらにラグジュアリーであることを再認識する。トップは16秒で開き、時速40キロまで対応する。メルセデス的にはあくまでも停車中に行ってほしいが、信号待ちなどで開閉途中に青になっても焦らないためだという。SLの開発に関してはカスタマーリサーチを入念に行っているらしいが、これもそれを反映したものだろう。 ワインディングではダイナミックセレクトをスポーツにするとさらにSLらしさが顔を出す。エンジンのレスポンスがよくなりステアリングがクイックになり、足も引き締められる。が、あくまでもラグジュアリーさは損なわずヤリ過ぎ感はない。段差での突き上げはなく、しなやかにこなす。昨今足を固めすぎるクルマが多い中、SLは独自の道を歩むといった印象だ。 ステアリングはどこまでもニュートラルで、多少遅れ気味に切りはじめても極端なアンダーステアになることはない。この辺はお見事としかいえないだろう。電子デバイスがよく働くのは当然のこと、全長が短く全幅が広いこのクルマは基本的なバランスがいいのは言わずもがなである。 AMG SL63はさすがの速さ、魅力がバランスしたSL500メルセデスAMG SL63はさすがに出だしから速い。SL400で十分と思わせておいてその差は大きい。しかもスポーツモードでは各部が引き締められるばかりか排気音までしびれさせる。まさに高級なおもちゃといった感覚だ。また、このクルマはブレーキがいいのも見逃せない。踏みはじめはそうでもないのだが、途中から585hpを許容する余裕すら感じさせる。 といった2台に乗ったあとのSL500はうまくその両者を取り入れたようだ。V8パワーは街中からワインディングまで十分過ぎるし、それでいて乗り心地もこの上なくいい。SLに純粋に期待するものがここにあると思われた。 SLはこのところ販売がよくないらしい。それはかつてこのマーケットにいた人たちがプレミアムSUVに移行したからだそうだ。が、それもいずれ戻るとメルセデスは踏んでいる。そしてそのときSLは彼らのニーズに応えられる仕上がりをしていなければならないと。なるほど、メルセデスらしい考え方。SLの進化に抜かりはないと感じさせられた。 スペック【 SL400 】 【 SL500 】 【 メルセデスAMG SL63 】 |
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