エンジンやプラットフォームを刷新中のボルボ冬の上越までボルボ XC60で日帰りドライブにでかけた。日本の雪道で北欧育ちのSUVはどんな走りをするのだろうか。中でも注目は100%自社開発を謳う、新世代のパワートレーン「T6」だ。2つの過給システムをもつ先進的な2リッター直噴ターボで、このシステムが発表されたときから注目していた。それに、ボルボが得意とするドライバー・アシストも自動運転技術の基本となるシステムとして熟成が進んでいるはずだ。 最近のボルボの状況をおさらいしよう。フォードグループから完全に独立したボルボは、現在、中国の自動車メーカー「吉利汽車(ジーリー)」が親会社になっている。ジャガーを保有するインドのタタと同じように“お金は出すが口は出さない”太っ腹な経営手法のおかげで、ボルボの独自性は近年ますます高まっているらしい。フォード時代よりものびのびと仕事に就いているほどだ。 その証拠に、今年のデトロイトショーではSUV部門のイヤーカーに新型XC90が選ばれ、ボルボブースは多くのメディアで賑わった。XC90そのものはもちろん、XC90から始まったボルボの新しいクルマ作りの戦略も話題になっているのだ。 また、ボルボはエンジン・ラインアップの整理と進化も抜かりなく行っている。まず、パワートレーンを100%自社開発とし、その代わり4気筒以下&2.0L以下のエンジンですべての車種をカバーしつつ、ハイブリッドにも対応する。さらに、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの基本構造を共通にする。実際に、ガソリンとディーゼルは25%が共通部品、75%が類似部品になっているという。 直噴ターボにスーパーチャージャーを組み合わせたT6ここからは今回試乗した、XC60 T6 AWDに話を戻そう。ボルボの新世代パワートレーンは「DRIVE-E」 と呼ばれている。前頁でも述べたが、基本コンセプトは4気筒ガソリンターボと4気筒ディーゼルターボに特化することだ。それまで4気筒・5気筒・6気筒エンジンを持っていたボルボだが、ライト・サイジングというコンセプトから、5気筒と6気筒エンジンを廃止し、4気筒エンジンに集約したのだ。気筒数が減れば、エンジン内部のフリクションも減って効率が高まる。VWのようなダウンサイジングは適材適所で使うべきで、小さなクルマには向いているが、中型車にはある一定の排気量が必要、というのがボルボの考え方なのだ。 今回試乗したのは2L4気筒直噴ガソリンターボ/スーパーチャージャー仕様のT6である。従来の3L6気筒ガソリンエンジンの代替となるこのエンジンは、低速側の過給にスーパーチャージャーを使ってスロットルレスポンスを高めている。3000回転くらいになるとスーパーチャージャーはクラッチで切り離され、ターボチャージャーにバトンタッチ。2種類の過給システムを使い分けることで、みごとなドライバビリティを実現しているのだ。 どれだけ凄いかというと、都心のボルボ社屋からスタートして100mも行かないうちに、鋭い加速に度肝を抜かれた。2L直噴ガソリンターボの最高峰はいまのところ、メルセデス・AMGの2L4気筒直噴ガソリンターボ(381ps/475Nm)だが、ボルボ XC60 T6のスロットルレスポンスはレーシングカー並の鋭さだ。 高速道路ではACCを使って前車への追従性能も試みた。エンジンのレスポンスが良いので、追従もリニアだ。多くのクルマは、前のクルマに追従するタイムラグが気になるものだ。XC60 T6の場合、ミリ波レーダーを使ったシステムの反応の良さもあるが、なによりもエンジンの反応の良さが光っている。 一歩先を行くドライバー・アシスト技術に感心スキーのメッカである湯沢町に入ると路面はうっすらと白くなり始める。しかし、XC60のカメラは同行した日本車よりも認識性能が高く、白くなった路面でも車線をきちんと読んでいる。カメラの認識技術は自動走行に繋がるキー技術だが、ボルボのカメラ技術は将来の展開にも期待できる高いレベルにある。もうひとつ感心したのは、衝突のリスクが増えたときに、いかにドライバーに警告するかというインターフェースが進んでいること。例えばヘッドアップディスプレイ(フロントウインドスクリーン)にLED照明を段階的に表示するアナログ手法なども人間に優しいデザインだ。 走行安定性も高い。雪が積もった高速道路でも安心感が高く、一般道に下りて深い雪道に入っても、ロードクリアランスが十分に確保されているから、わだち路面も安心して走ることができる。高速道路~街中~山道まで、XC60はSUVとして申し分ない雪上走破性能を持っている。 乗り心地についても触れておこう。昔のボルボは癒される感じのマイルドなサスペンションだったが、このXC60をはじめ、最近のボルボはポルシェ・カイエンやBMW X3のように骨太な乗り味を持っている。このあたりは好みかもしれないが、個人的には非ドイツ車として、マイルドな乗り心地でも良かったかもしれないと思った。まっさらなプラットフォームで登場した新型XC90の乗り心地はどうだろうか? XC60は北欧のクルマとしての雪道走破性とボルボのアイデンティティでもある安全性はもちろん、注目の過給システムを備えた次世代のガソリンエンジンを備えている。さらに、高度なドライバー・アシスト技術は自動運転へのロードマップにおける潜在力も見せてくれた。「2020年にボルボ車が関係する交通事故死者と重傷者の数をゼロにする」という目標を掲げる、ボルボの熱意が伝わってきた。 スペック【 XC60 T6 AWD Rデザイン 】 |
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