MLB evoプラットフォームのトップバッター昨年秋に登場した新型アウディA4が日本でも市販された。新型A4はあらゆる意味で革新的だが、特に話題となっているのは「ダウンサイジングではなくライトサイジング」(正しいサイズという意味)と言われる新開発の2Lターボだ。従来からあった2Lターボとは異なり、ターボでアトキンソンサイクルを使う新世代のシステムに注目が集まる。今回は新型A4に搭載される2種類のターボエンジンを中心にレポートしよう。 新型A4のサイズは全長4735×全幅1840×全高1430mm、ホイールベース2825mmと先代モデルよりも一回り大きい。ほぼ一昔前のA6のサイズだが、後席もゆったりと座れるようになり、セダンとしての機能は高まっているはずだ。 新しいボディは、アウディオリジナルの「MLB」プラットフォームをベースに開発された。MLBとはエンジンを縦に置くFWD(前輪駆動、FF)とAWDのアーキテクチャーで、A4以上のアッパーミドルの上級モデルに採用される。ちなみにエンジンを横に置く場合は「MQB」プラットフォームと呼ばれ、ゴルフやアウディA3が採用している。新型A4が搭載するMLBはプラットフォームとしては2代目となるので、アウディは「MLB evo」と呼んでいる。 新しいプラットフォームは多様化する次世代パワートレーンを搭載できるように柔軟なモジュール設計になっている。e-tron(プラグインハイブリッド車)、g-tron(天然ガス車)、h-tron(燃料電池車)にも対応可能だ。時代の要請で軽量化も進みホワイトボディで約100kgの軽量化を果たしている。 車体剛性もニュルブルクリンクを徹底的に走ることで、全体の剛性を高めるだけでなく、車体の変形モードにも注目して開発されている。MLB evoのトップバッターとなる新型A4だが、完成度の高さはステアリングを握った瞬間に伝わってきた。 ターボとアトキンソンサイクルを組み合わせた新エンジン車体と同じぐらい革新的なのが新開発のターボエンジンだ。従来からの2Lターボ「2.0 TFSI」は日本ではクワトロ(AWD)に搭載され、最高出力252ps、最大トルク370Nmを発生する。軽い車体のおかげで0-100km/h加速は5.8秒と鋭い。一方、廉価版のFFモデルには最高出力190ps、最大トルク320Nmの新開発ターボエンジンが搭載される。0-100km/h加速は7.3秒。パフォーマンスだけを見ると、クワトロは高性能ターボ、FWDはスタンダードなターボと思えるが、実は違う。2015年にウイーンで開催されたエンジン・シンポジウムで披露された190ps版のエンジンこそが、アウディのエンジン技術の目玉なのである。 細かくスペックを見てみよう。最大の特徴はアウディが通称「Bサイクル」と呼ぶ、ターボでも吸気バルブを早く閉じるアトキンソンサイクルを採用したことだ。その結果、アトキンソンサイクルの特徴である高い膨張比と、過給エンジンでは異例に高い11.4という圧縮比を実現している。また、直噴方式に加えて、低負荷ではポート噴射方式(従来型のエンジンが使う吸気ポートに燃料を吹く方式)を併用するハイブリッド噴射システムを持っている。 このエンジンは低負荷域では自然吸気エンジンのように高圧縮で走るが、2500回転くらいからはターボを効かせて出力を得る。圧縮が高いので低負荷でのスロットルレスポンスが良いのが特徴だろう。あくまでも日本のJC08モードの公表燃費だが、252ps版の15.5km/Lに対して、190ps版は18.4km/Lと優秀だ。最高出力さえガマンすれば2LターボでもCO2換算でディーゼルなみの環境性能が得られるのだ。そもそも最高出力はアウトバーンのような最高速度に関係するのだが、日本では0-50m加速のほうが現実的。その意味では低負荷域で自然吸気のようにスロットルレスポンスがよい新エンジンのほうが使いやすいのではないだろうか。 アウディらしい知的な走りは190ps版に軍配冬の軽井沢まで2台のA4でロングドライブしたが、オリジナルのサマータイヤなので天気予報や道路情報と睨めっこしながら走った。252ps版は2.0TFSIクワトロ スポーツで、タイヤは18インチ。190ps版は2.0TFSI(FWD車)でタイヤはオプションの17インチを履く。 まず動力性能をチェックする。252psのクワトロは高速道路では最高のドライブフィールだった。ツインクラッチのSトロニックと2Lターボは走りに余裕があって、快適なドライブが楽しめた。軽井沢周辺のカントリー路は残雪が残る路面とも遭遇したが、サマータイヤでもクワトロのトラクション性の高さで、勝手にタイヤが滑ったりしない。電子制御も縁の下の力持ちとして正しく機能しているので安心だ。 高速道路では252psに分があるものの、190psのFWDも十分な加速性能をもっている。一方、町中やカントリー路ではむしろ190psのほうが乗りやすかった。2000回転以下の低負荷では、スロットルレスポンスが252psよりも190psのほうがシャープでスポーティなのだ。60km/h以下の速度では190psのほうがシャキシャキと走れる。加速時のエンジン音も190psのほうが気持ちいい。 252psのエンジンはいかにもターボらしく、ブースト圧が高まると一気にトルクが増大する。ロケットのような加速は楽しめるが、アウディらしい知的な走りは190psの勝ちだ。実はタイヤの違いもあって、荒れた路面では190psのほうが乗り心地も良い。252psのクワトロはフラットな路面は良いが、段差のある荒れた路面は硬すぎると思った。 混雑した都内を平均20km/h前後の速度で走ったところ、常に190psが15%前後、燃費で上回った。実用燃費は混雑した道路環境から高速道路まで様々な走行条件が重なる。ターボが過給しない低負荷は高膨張比で効率を高め、高負荷は過給で出力を得るという新しいターボの使い方が理にかなっているということになる。 エンジン・シンポジウムで発表された時のプレゼンテーターは、VWのディーゼル問題で更迭されたハッケンベルク博士だった。昨年までアウディの開発部門の総責任者だった博士は「従来のダウンサイジングは用途が限定されていたが、今回のライトサイジングのコンセプトは多様な走りをカバーできます」と説明した。2005年頃から始まったダウンサイジングは卒業し、その次の段階にターボエンジンが進化したのである。2018年頃から施行される新欧州燃費モードWLTP(欧州が主導する、世界共通の排出ガス試験方法への試み。130km/h前後までカバー)の動きや、ユーザーの実燃費に対する意識が高まることを考えると、アウディのBサイクルのような実用燃費主義がメインストリームになっていくはずだ。 ステアリングアシストも行なうドライバーアシスト新型A4には様々な先進安全技術も備わっている。各国の規制や地図情報の兼ね合いで機能が異なるが、日本仕様の代表的な機能はACC(アダプティブクルーズコントロール)とステアリングアシストだろう。前車追従機能のACCはエンジンとギアボックスのダイレクト感が高いので、両エンジンとも追従性はよかった。自動運転の時代になるほどエンジンのレスポンスは重要だ。 アウディアクティブレーンアシストは車線維持のために電動パワーステアリングで自動修正する。その制御は最近のモデルの中では強めだ。60-250km/hで使えるが、高速道路では自動でステアリングが動くこともあり多少の慣れが必要だ。 こうした高度なドライバー支援システムとうまく付き合うには、システムが何を見て、どう考えているのか、ドライバーも同調して意識する必要がある。日本が実用化を目指す準自動走行システムでは、レベル3になると監視義務から部分的には解放されるが、法整備の関係で2020年以降になるだろう。いずれにしても、安全支援機能は正しく使われてこそ、実際の安全運転に寄与できるので、システムに任せっ放しではいけない。ドライバーにも一定のリテラシーは求められるということだ。 【こちらもオススメ】 スペック【 アウディ A4 2.0 TFSI 】 【 アウディ A4 2.0 TFSI クワトロ スポーツ 】 |
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