7年ぶりのフルモデルチェンジ都会派のためのプレミアムSUV……、レクサスRXを紹介するにあたっては、その一言に尽きる。SUV発祥の地であるアメリカではタフなイメージが強かったSUVだが、洗練されたスタイリングを備えた初代レクサス「RX」が1998年に登場し、大ヒットした。その結果として、BMW「X5」、メルセデス・ベンツ「GLK」といったミドルクラスSUVが後に続き、現在、世界中で人気を博している「プレミアム・クロスオーバーSUV」のカテゴリーが形成されたのだ。 同時に、RXはレクサスを代表するモデルとして、ブランド力を押し上げる役割も果たしている。事実、3代目RXはレクサスの販売台数の4分の1以上を占めている。 日本では、初代と2代目がトヨタ「ハリアー」の名で販売されていて、2007年の東京モーターショーで登場した3代目でようやくレクサス「RX」を名乗るようになった。つまり、今回、7年ぶりにフルモデルチェンジを果たした新型「RX」は、トータルでは4代目となる。その開発にあたっては、「RXでありながら、RXを超える」をテーマに、自らの過去を仮想敵に打ち立てている。 イマドキの“パワフル女子”の如くなぜ、これほど大上段に構えたのか?といえば、4代目はより“RXらしさ”を凝縮する方向に舵を切ったからだ。3代目からは弟分の「NX」が登場し、ブランドの新たなエントリー役を担当し、さらに「LX」が登場してプレステージな部分を担当する。このことにより、「RX」は中心部分のぎゅーっと凝縮された層に照準を当てることができるようになった。 狙いは、「力強さ」と「大人の色気」の両立だ。なんだか、イマドキのハリウッド映画に登場する“パワフル女子”のようだが、今、世界中がそうしたキャラクターに惹かれているのは事実だ。女優でいえば、映画『ターミネーター』のサラ・コナー役のエミリア・クラークだったり、映画『ゼロ・グラビティ』のライアン・ストーン博士を演じたサンドラ・ブロックだったりといったところだろうか。強靭な精神を持ちながらも、どこか女性らしい色気のある役柄を思い浮かべつつ、「RX」を眺めてみる。 全長×全幅×全高=4890×1895×1710mmのスリーサイズは、先代と比べて全長が伸ばされた結果、サイドビューは伸びやかな印象を増した。浮いたように見えるリアクォーターのデザインが、疾走感を増している。同時に、大きな菱形のボディで凝縮感を持たせて、18インチ/20インチの大径タイヤで踏ん張り感のあるプロポーションを作っている。 エッジの効いたシャープさと、凹面を使って豊かに変化する面がコントラストしており、大型のスピンドルグリルや3連LEDのフロントランプとあわせて、既視感のないスタイリングを得た。サイドに回りこむリアランプがL字型に光り、シーケンシャルのターンランプを新採用するなど、細部の演出にも余念がない。実は、ボディカラーでかなり印象が異なるのだが、全10色のうち、レッドマイカやグラファイトブラックといった光沢のある濃い目のボディカラーを選ぶと、艶やかな印象が増す。 鋭いレスポンスと加速が魅力の「直噴ターボ」パワートレインは、3.5L V6エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド機構と、ターボ付き2L 直4のダウンサイズ・エンジンと6速ATの組み合わせの2機種だ。まずは「NX」に搭載されて話題になったターボ付き2Lエンジンを積む「RX200t」に乗り込む。 左右の座席の距離はLS並みという謳い文句の通り、ルーミーな室内空間を持つ。ドライバー志向の包まれ感は「RX」の伝統的な美点であるが、新型ではインストルメントパネルから左右に水平に伸びるデザインが室内の開放感と、助手席とのつながり感を加えている。 Dレンジを選んでアクセルを踏み込むと、最高出力238ps/4800-5600rpmというスペックから想像する以上に、力強い走りを披露する。特に、首都高の合流のような瞬発力を必要とするシーンで瞬時に加速をして、スマートに流れに乗れる機動性は、この手の都会派SUVのユーザーには魅力的だろう。1650-4000rpmの幅広い領域で350Nmの最大トルクを発揮することで、アクセルワークに俊敏に反応して出力を前輪に伝えてくれる。 プレス資料によれば、「ツインスクロール・ターボと吸排気バルブの開閉タイミングを制御するデュアルVVT-iWを組み合わせて」…と難しいことが書いてあるが、要はエンジン回転数が低いところから排気の脈動を整えてターボを稼働できるので、過日のターボ・ラグは感じない。 用意されるドライブモードのうち、はじめは「ノーマル」を選んだが、それでも充分にスポーティに感じた。さらに「スポーツ」を選ぶと、メーターの色が赤く変わって、いっきにやる気にさせてくれる。実際、鋭い加速感が得られる上に、ハンドリングも頼もしく変化する。これは、モードごとにエンジンの過渡特性とトランスミッションの変速スケジュール、ハンドリング制御を変化させているためだ。反対に「エコ」を選べば、ブルーのメーター色に変化し、多少ラフなアクセル操作をしても緩やかな加速をするようになり、エアコンまで燃費運転となる。 従来よりも滑らかな姿勢変化を実現気持ちいい青空の横浜が試乗ステージだったために、試すチャンスはなかったが、「RX200t」のAWDモデルでは、速度・舵角・ヨーレートといったデータに基づいてトルクを前:後=100:0~50:50に配分する「ダイナミックトルクコントロールAWD」が備わっており、FWDでは低燃費走行をしつつ、いざというときに後輪に適正なトルクを配分してくれて、コーナリングを助けてくれる。 さらに「NAV・AI-AVS」を備えるモデルでは、スポーティな設定が2種類用意されており、メーターが赤くなってパワートレインの制御がスポーティになるのは同じだが、「スポーツS」ではハンドリングが標準で、「スポーツS+」ではハンドリングもスポーティになる。 実は、先代と新型では、足回りの形式こそ変わりないが、細部に手を入れて、従来よりも滑らかな姿勢変化を実現したという。具体的には、フロントはハブから一新し、スタビライザーの大径化を実施。ジオメトリーを見直し、前後のコーナリングバランスを変えた。 レーザー・スクリュー・ウェルディングをはじめとした新しいボディ接合を採用し、アッパーボディを補強することによって、GS並みのボディ剛性を持たせ、ステアリングの切り始めからグリップ限界に至るまで、ドライバーの意志に忠実に姿勢を変化させることを目指したという。実際、先代では中立付近のフィーリングが曖昧だった点が払拭されており、応答性のみならず、ボディへの入力に対するびびりなどの振動も吸収して、より高級感のある乗り味になった。 パワフルかつ上質な「ハイブリッド」エントリーとされる「RX200t」ですら充分な走行性能を備えるのだから、262ps/335Nmを生む3.5L V6エンジンと電気モーター(167ps/335Nm)を組み合わせたハイブリッド機構を備える「RX450h」など必要なのか?と首をかしげつつ、試乗に連れ出してみた。 結論を先に言ってしまえば、18.8km/Lという燃費面での優位点に加えて、大ぶりなボディに見合うだけのパワフルさを備えており、より上質なSUVだと感じた。実のところ、先代のアトキンソンサイクルを採用したエンジンは、時折、こもり音がして煩わしかった。が、新型ではプレミアムSUVを名乗るに相応しい静粛性を得ている。 一方で、エンジン車と比べて130kg以上も重い重量級のボディにもかかわらず、スポーティな走りもできる。街中を流すシーンでは「ノーマル」のまま粛々と走り、場合によっては「エコ」で低燃費走行に徹する。いざ、アクティブな走りを欲すれば、「スポーツ」「スポーツS+」といったスポーティなモードでパワフルな走りにも対応する。 なかでも、RX450hの"F SPORT"仕様で「スポーツS+」を選ぶと、パワートレインとハンドリングがスポーティな制御となる上に、電動アクティブスタビライザーの制御が加わって、スポーティ仕様を自負するに相応しい走りっぷりを見せる。 RX450hの4WD仕様では、独立したリアモーター(68ps/139Nm)を駆動させるE-Fourを搭載している。従来からの前後の加重配分に基づく制御に加えて、旋回時のスリップ率やヨーレイトのフィードバック制御を加えることによって、狙ったラインに沿ってカーブを曲がれるように後輪のトルクを調整することができる。こちらも残念ながら試すチャンスは得られなかったが、電気モーターの制御は瞬時にできるため、いざ滑り出したときにリアの電気モーターに素早いフィードバック制御ができることは容易に想像できる。 「レクサス・セーフティ・システム+」は全車に標準安全装備については、プリクラッシュセーフティ、レーンキーピングアシスト、オートマチックハイビーム、レーダークルーズコントロールを一つにまとめた「レクサス・セーフティ・システム+」なる安全パッケージを採用している。 なかでも、レクサスがいち早く導入したプリクラッシュセーフティについては、一日の長がある。クルマなら40km/hまで、30km/hまでなら歩行者まで検知して、クラッシュ時の衝撃を軽減するためのブレーキを自動でかける。さらにクラウンから採用されたITSを利用した運転支援や、死角に障害物があることを警告する装備や、曲がる方向を広範囲で照らす高輝度LEDコーナリングランプなどが搭載されており、安全装備は満艦飾といった感がある。 エコカー減税への賛否はあるだろうが、現実的には「RX450h」の売れ筋であろう"version L"の2WD仕様では、702万5000円の価格に対して、合計で25万円以上のエコカー減税を受けられる点も見逃せない。 エントリーとなる「RX200t」の2WD仕様は20インチホイールを履いて500万円アンダーと値頃感はあるが、600万円程度まで予算に余裕があるなら、"F SPORT"のAWD仕様または"version L"の2WD仕様を選ぶと、クルマ好きにとっての満足感は高そうだ。 主要スペック:直噴ターボ車【 RX200t "F SPORT" 】 主要スペック:ハイブリッド車【 RX450h "version L" 2WD 】 |
GMT+9, 2025-6-25 11:44 , Processed in 0.053532 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .