まだ日本導入の予定は無いが…2015年のフランクフルトモーターショーでアンベールされた「インフィニティQ30」。ポルトガルで開催された海外試乗会で触れてきた限り、とても完成度の高いクルマだった。だから是非、このモデルを日本に導入してもらいたい。現時点ではこのモデルが日本の土を踏む予定はない。しかし、みなさんの声や反応によっては動き出す可能は大いにある! そもそも「インフィニティ」とは、グローバル展開する日産の高級車ブランド。トヨタにおける「レクサス」をイメージすると理解が早く、価格は高いが内外装の質感や性能を向上させているモデルだ。ちなみに、日本で最も馴染み深いインフィニティモデルは「Q50」と呼ばれる今回のQ30をふた回りほど大きくしたセダンで、日本では「スカイライン」としてすでに販売されている。「えっ?」と思った方は、現行型スカイラインのエンブレムを見て欲しい。日産ではなくインフィニティマークが付いているはずだ。 インフィニティが日本に導入されない理由ここからが本題だが、グローバル展開される他国のインフィニティは、日産とは異なる専用のショールームで販売される。高級ブランドを名乗っているので当然と言えば当然だ。それが日本だとスカイラインとして、他の日産車と同じように売られている。もともとスカイラインは日本伝統の名車であり、それが海を渡り他国でインフィニティQ50になった…そんな経緯を踏まえれば、そこは目をつぶれるが、インフィニティ独自の新モデルとなるQ30を導入するとなると、そうはいかない。グローバル同様に、まずはインフィニティブランドを日本市場に正規導入するのが筋だろう…などなど、様々なお家問題があるのだ。 ハッキリ言ってそんな話はどうでもいいのだが、現実問題、このままでは日本の土を踏めない。Q30のような“いいクルマ”“カッコいいクルマ”が日本で増えて欲しい。クルマの選択肢が増える贅沢を、我らエンドユーザーに与えて欲しい。是非、日産の関係各位にはひと肌脱いでもらいたいものだ。 メルセデス・ベンツ GLAクラスをベースに作られている隠しても仕方ないのでズバリ言おう。インフィニティQ30のベースは、「メルセデス・ベンツ GLAクラス」だ。もう少し広い意味で言えば「Aクラス」で、使われているのはメルセデス・ベンツが開発した新世代プラットフォームの「MFA」ということになる。簡単に言えば、ボディの外装パネルは専用、サスペンションやパワーユニットは専用チューニング、インテリアは表皮やパネルが専用である。それでも乗り味などには独自のインフィニティの味が出ているから、導入してもらいたいのだ。 そもそもなぜAクラスがベースなのか? ここにまた複雑な事情がある。日産とルノーが連合を組んでいるのはご存知の方が多いだろう。実はそのルノー日産連合とメルセデス・ベンツの母体でもあるダイムラーAGは近年親密な関係を築いている。すでにスカイラインの心臓部にメルセデス・ベンツの直列4気筒直噴ターボエンジンが積まれていることや、3社合同出資の合弁会社を立ち上げて新工場をメキシコ中部に作る話などは典型的だ。そんな連合により生まれたモデルが、このQ30というわけだ。 高級ブランドらしいエクステリアデザインそういうわけで、Q30のボディデザインには「メルセデス・ベンツ GLA」を思い起こさせる雰囲気がある。実際に目にすると、どの角度から見てもガラス面積が少なく、さらには大径タイヤを組み合わせることで、低くどっしりと構えた力強さが漂っているのがいい。そこにインフィニティ特有の躍動感のある表情豊かなエッジラインとボディパネルが合わさって、ボディサイズ以上の存在感が出ている。その反面、ハッチバックドアやフロントガラスの傾斜を強めたしわ寄せから、荷室や後席がやや狭くなっている。 だが、この手の高級ブランドモデルは何かを割り切ることで得られる“他にはない感性”を刺激する要素こそが魅力。簡単な話、万人受けを狙わずに独自の魅力を磨いた潔い仕上がりこそQ30の魅力であり、刺さる人の感性を鋭く揺さぶるはずだ。 インテリアにもQ30ならではの暖かみがあるドアを開けた瞬間「あっ、メルセデスだ…」という言葉が出てしまった。ドアウインドウのスイッチやシフトレバーなど、室内のしつらえの基本はAクラスそのものなのだ。しかし、よく見ると相応の変更がなされていて、例えば表皮類は暖かみのあるスエード調で肌触りがいい。基本形状はAクラスと共通のハンドルも、指がキュッとハンドルに吸い込まれるような優しさや暖かみがある。 乗り味にQ30ならではの味はあるか?走りもそうで、GLAクラスと共通する感覚を抱かせる要素は多数あるものの、Q30ならではの暖かみあるテイストも備わっている。例えば乗り心地は、グランドツアラー的なしなやかさをベースに適度な硬さをあわせ持つ。控えめな突き上げ感などは、GLAクラスの基本的な特性だ。しかし、Q30ではシートクッションの吸収性と足回りのしなやかさにより、その角が丸められている。しかもボディ全体の振動の収束がよく、走行振動を抑えた質の高い乗り味がある。このあたりは、日本でも発売された新型Aクラス(マイナーチェンジモデル)も似たような感覚になっている。 シャキッとしたハンドリング特性をはじめスポーツ性も高いので、走り好きにもオススメ。特に車高が15mm下がり、メインスプリングが7%も硬くなるスポーツシャーシは、19インチタイヤで突き上げ感が増すものの、連続するカーブをリズミカルに抜けられる走りを持っている。足回りにサスペンションの伸び側の動きを抑えるリバウンドスプリングを採用しているおかげで、旋回中の傾きが適度に抑えられ、スポーツ走行でも安定感が高いのが印象的だった。 ベストは2.2Lディーゼルにノーマルシャーシの組み合わせツインクラッチトランスミッションと組み合わされた2.0Lガソリン直噴ターボエンジンは吹け上がりの良さとスムーズさとダイレクト感があり、さまざまな走行シーンに柔軟に対応する。さらに吸排気音チューニングによるアクセルを踏んだ時の音がけっこう刺激的だから、ついつい速度が上がってしまいそうで要注意である。 2.2Lディーゼルエンジン搭載モデルも導入を望んでおきたい。低回転から力強く、穏やかにも走れるし、高速道路では100km/hオーバー巡航が楽で、ワインディングでのスポーティドライブに必要なレスポンスまで備えている。一方、1.5Lディーゼルエンジンは低回転トルクが細く、回転を上げて元気に走るのに抵抗のない欧州向きと言えそうだ。 今回乗ったQ30、2.2Lディーゼルとノーマルシャーシの組み合わせが大トロのように噛むほどに旨みが出てくる完成度があって良かった。2.0Lガソリン直噴ターボのノーマルシャーシがあったら、その完成度も良さそうだ。なにはともあれ、日産自動車さん、インフィニティ Q30の導入をよろしくお願い致します。お膝元である日本に良いクルマを導入しないのは、クルマ好きへの罪になりますよ! スペック【Q30 2.0L 210ps ガソリン直噴ターボ スポーツ】 【Q30 2.2L 170ps ディーゼル】 |
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