新しいクラブマンの本質とは?3代目BMWミニに5ドアが出たとき、「せっかく浸透していたクラブマンは、どうするの?」と思った向きも多かったと思う。さらに「新しいクラブマンも別に存在する」というウワサが出回ると、ファンはさらに混乱した(?)。ホイールベースとリアオーバーハングを伸ばして、ついでに後席ドアを追加して、ちょっとだけ使い勝手をよくしたミニ……という手法は、そもそもはクラブマンのものだった。しかし、その従来のクラブマンの位置に、新しい5ドアがドンピシャにハマったからだ。 だが、新型クラブマンを目の前にして合点した。新しいクラブマンは、Bセグメントの“素ミニ”よりワンクラス上級のCセグメントであることこそが、最大かつ本質的な存在価値である。観音開きリアゲートはたしかにクラブマン独自の売りだが、意地悪にいうと、それはミニ初の正式Cセグモデルに“クラブマン”という商品名をあてがう口実にすぎないかもしれない。 全幅1.8mの堂々たる体格にBMWミニが誕生してもうすぐ15年。熱狂的な支持者も多い。そのミニが年月を重ねて、買い替え需要が増すごとに「子供が生まれたので、もっと広いのがほしい」とか「○○の趣味をはじめたので、もっと荷物が入るミニを……」との声が大きくなるいっぽうだったことは、容易に想像がつく。これまではミニ・クロスオーバーがその役割の一端を担っていたが、やはりオーソドックスなハッチバックも必要と判断されたわけだ。 新型クラブマンのボディサイズは、まるで測ったかのようにVWゴルフと区別がつかない(いや、最大の競合車なのだから、実際に測ったのだろう)。全幅は1.8m! なんとも堂々たる体格である。 ちなみに、先代クラブマン比で全長290mm、全幅115mm、現行ミニ5ドア比で全長270mm、全幅75mm大きいが、ここで「伸ばした」とか「広げた」という表現はピンとこない。新型クラブマンは、旧型クラブマンとも、また現行の素ミニとも別物と考えたほうがいい。現代のクルマゆえに、目に見えない構造設計や部品レベルでの共用化は徹底しているだろうが、ボンネットフードを開けて眺めたエンジンルーム設計も、素ミニとはちょっと異なる。 ※MINI クーパー クラブマン=全長4270×全幅1800×全高1470mm “ゆるキャラ”の室内は高級かつ想像以上に広い内外装の仕立てもミニそのものではあるが、素ミニとはちがう。全幅拡大に合わせて左右ヘッドランプも少し離れたことで、顔つきはどことなく“ゆるキャラ”を思わせる穏やかな表情になった。 ダッシュボードも別物で、幅広くなったセンターパネルは即座に気づく高級感である。そしてアームレスト一体のサルーンライクで立派なセンターコンソールは、ミニのイメージを覆す。 運転席環境がCセグとしてはアップライトかつコンパクトにまとまっているのは、素ミニの美点を受け継いだ部分だ。そこに2670mmというクラス最長級のホイールベースを組み合わせるおかげで、後席空間はクラスでも広いほうであり、荷室もクラス平均レベルを確保。クラブマンの室内空間には“ミニ=小さい、狭い”という常識はもはや当てはまらない。 落ち着きのある大人っぽい走り走りはひとことで、ステキだ。味つけにおいては、ロールを抑制した“いつものゴーカートフィール”を意図した形跡は強く、ステアリングの反応も鋭い。しかし、たっぷりとしたホイールベースとトレッドで、走りのリズムは大人っぽく、とにかく動きがしなやかで落ち着き払っている。さすがはCセグ。いかにも基本キャパが大きい。 クラブマンでも、エンジンと車名の相関はほかのミニと同じ。「クーパーS」が2.0リッター4気筒(192ps/280Nm)、「クーパー」が1.5リッター3気筒(136ps/220Nm)で、ともに同じくターボ過給である。 クーパーの1.5リッターは自然吸気2.0~2.2リッター級の性能なので、Cセグでも走りは十二分に活発だが、スポーツモデルというより、よくできた実用グレードっぽい。静粛性も素ミニより優秀な印象だ。乗り心地や操縦性は後述するクーパーSと基本的に大差ない(今回の試乗車が両グレードともオプションの18インチ+可変ダンパー装備だったことは念頭に置く必要はある)が、なるほどハナの軽さは明確。ドシッと落ち着いたロングホイールベースに、軽快に反応するハナ先との組み合わせは、ミニにかぎらず、ほかでもあまり味わえない独特感はある。 群雄割拠のCセグでも際立つ完成度対するクーパーSは文句なしに速いスポーティモデルである。ただ、素のミニ・クーパーSが良くも悪くもヒリヒリとした緊張感を切らさないのに対して、クラブマンは同じエンジンを搭載しても、シレッと落ち着いた乗り味をくずさない。200ps級のパワーと4気筒の重量を完全に支配下に置いている。 いったんクーパーSに乗ってしまうと、今回のような箱根の山坂道では「これくらいのパワーがないと物足りない」と思ってしまった。箱根を真剣に攻めるようなペースになっても、可変ダンパーがソフトなミッドモードのままでアゴを出さない。このようなシーンでは、もちろんスポーツモードのほうが扱いやすいが、乗り心地もさほど悪化せず、神経質さのそぶりも見せない。やはり基本的なフィジカルに余裕があるからだろう。新しい8ATがまた滑らかそのもので、それもまたクーパーSクラブマンの大人っぽさを強調する(※ドライビングモードはGREEN・MID・SPORTの3種類)。 ミニの絶妙な小ささにほれ込んでいたファンの間には「ミニなのに大きいなんて本末転倒」とか「これまでのクラブマンがちょうどよかったのに」という声が出るのは当然だ。ただ、これがミニらしいかどうか、あるいは先代クラブマンの真の後継車はこの新クラブマンなのか5ドアなのか……といった主観的な疑念をひとまず横に置けば、新型クラブマンは非常に完成度が高いクルマである。実用性、パッケージ、品質、操縦性、洗練性、快適性……のすべてにおいて、群雄割拠のCセグで、文句なしのトップコンテンダーの1台だと思う。 スペック【 MINI クーパー クラブマン 】 |
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