“GT”シリーズに共通の匂い■前編からつづく 「ケイマンGT4」の試乗車はフルバケットではなくリクライニングスポーツシート仕様だった。ホールド性は見劣りするだろうが、ポジションの自由度は高まる。念入りに調整してベストな姿勢を見つけてからコースへと入った。 形式を同じくするフロントサスペンションの多くを911 GT3と共有し、それに合わせてリアサスペンションもリンク類の強化、ジオメトリーの変更、そして倒立式ダンパーとヘルパースプリングの採用などでパフォーマンスアップを果たしているケイマンGT4。走り出すと、まずはそのソリッドなステアリングフィール、硬いながらも動きの精度感が高いサスペンションに、ポルシェ“GT”シリーズに共通の匂いを感じることができる。 より繊細だが、それが楽しいしかし慣れた調子でコーナーに飛び込んだら、思い切りテールがリバースして肝を冷やした。まだタイヤが温まっていない状況だったのもあるが、端的に言って911と較べるとリア荷重が小さく、あまりブレーキを残したままだとリアの接地性が薄くなるのだ。タイヤを路面へと押し付ける働きをするヘルパースプリングは、この特性を緩和するためのもので、おかげでたとえばケイマンGTSなどと較べれば安定性は格段に高いのだが、それでも基本となる特性までは変わらないというわけである。 それは決して限界が低いというわけではない。単に筆者が911に慣れ過ぎているだけ。セオリーに則り、4輪の荷重に気を配り、ヨー慣性モーメントの小さいミッドシップの特性を活かしたコーナリングを心がけると、ハマッた時には実に切れ味鋭い走りを披露してくれるのだ。 いざとなればリアエンジンならではの絶大なトラクションが助けてくれる911よりも、より繊細なバランス感覚と緻密なコントロールが必要。しかし、それが楽しい。富士スピードウェイのコカコーラコーナーから100R辺りなど、シビアではあるが、そのシャープさを活かすことができれば小気味良いほどのターンインと、驚くほどの旋回スピードを発揮する。速度を上げるほど動きが落ち着いてくるかのような強力なダウンフォースも、貢献度は大きい。 痛快なコーナリングマシン911カレラS譲りの3.8Lフラット6は、911 GT3 RSや911 GT3のような芯の出た回り方をするわけではなく、またトップエンドでの最後の伸びみたいなものはないのだが、それでも7800rpmまでしっかり回って、十分にパワフル。6速MTのタッチもカチッと剛性感に富む。これにはダイナミックエンジンマウントも貢献しているのだろうか。ともあれケイマンシリーズでは最善のシフトタッチである。 尚、SPORT PLUSモードではシフトダウン時の自動ブリッピング機能も働くので、右足はブレーキングに専念できる。MTならではのリズミカルな変速という楽しみはそのまま、確実性だけを高めているわけだ。 但しトップスピード自体は、今回の富士スピードウェイでは244km/hまでしか確認できなかった。実は同じ日に走らせたケイマンGTSでも240km/h台に入っていたのを考えると、やや控えめに感じられる。条件の違いもあるが、おそらく大きなダウンフォースのせいだろう。そう、ケイマンGT4はあくまでコーナリングマシン。その意味では鈴鹿サーキットやオートポリスなどは、相当楽しめるんじゃないかという気がした。 サーキットで走るために生まれた2モデルケイマンGT4はドライバーへの要求が多いスポーツカーだ。でも、それがいい。ポルシェはきっと今後もこういうクルマをつくり続けてくれると信じているが、しかしたとえばMTは、やはりPDKに置き換えられていく流れだろう。そこにこだわりがあるなら、これは手に入れておくべきでは? ケイマンが次のフェイスリフトで「718ケイマン」として4気筒エンジン化することを考えれば尚のこと、そんな風に思ってしまう。次期GT4がどうなるかは、まったく予想はできないが…。 但し、911 GT3 RSもケイマンGT4も、予想をはるかに上回るオーダーが殺到したため、手に入れるにはかなりの幸運が必要だ。ポルシェジャパンの努力で当初予定よりかなり多くの台数を入れられたようだが、何しろ殺到しているのは世界中のフリークたちなのである。せめて幸運にも手に入れられた人には、ちょっと味見したらあとはガレージに仕舞い込んで、たまに眺めるだけ……なんてことはせずに、サーキットに持ち込んで目一杯走らせてほしいと思う。この珠玉の2モデルは、いずれもそのために世に生まれ出たのだから。 スペック【 ケイマン GT4 】 |
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