新しい顔で大いにアピール一時、フォード ジャパンがアメリカンモデルに集中する政策に転換したことから、日本導入が途絶えてしまったフォーカス。2年前に再びラインナップに揃えられるようにはなったものの、率直に言って従来以上に地味な存在となっている感は否めない。初代、2代目のオーナーの買い替え需要には響いたかもしれないが、新しい層にはてんで訴求できていなかったからだ。 しかし、フェイスリフトを受けた新型フォーカスは、まずはその外観で大いにアピールできそうな気がする。フィエスタなどとも通じる最近のフォードに共通の顔つきは、とてもシャープで躍動的な雰囲気。元々のボディラインにも違和感無く溶け込んでいて「おっ、カッコいいじゃん!」と素直に思わせる。ワルくない。 ドアを開けて乗り込んでも、ステアリングホイールがシャープなデザインとなり、スイッチが多くて煩雑だったセンターコンソール周辺が整理され、とてもスッキリとした。元々クオリティは低くなかっただけに、なかなかイイ雰囲気だ。 充実した運転支援&安全装備。ナビについてはアピール不足か……装備の充実度も高められている。特に上級仕様の「スポーツ+ エコブースト」にはアダプティブクルーズコントロール、車線逸脱を警告するレーンキーピングエイド、休憩を促すドライバーアラートに、縦列/並列の両駐車に対応するエンハンスドアクティブパークアシスト、リアビューカメラ、360°センシングシステムと、先進の運転支援&安全装備がフル装備。レザーシートも標準だ。もっとも349万円という価格からすれば、特筆すべきというほどではないが。なお、309万円のベースモデルでも自動ブレーキは備わっている。 あとはナビゲーションシステムがあれば、ほぼ何も要らないはず。実はコレ、よく聞かれるのだが、ちゃんとオプションで用意されており、“マイ フォード タッチ”と呼ばれる空調やオーディオなどをひとまとめにしたインフォテイメントシステムの画面と切り換えて使用可能だ。なんでフォードは、しっかりそれをアピールしないのだろう……。巷では、外付けしかできないと思っている人も少なくないのだ。 大幅に増したトルクで余裕の加速それより何より皆が知りたいのは、走りの進化だろう。何しろ新型フォーカスは、従来の2L自然吸気エンジン+6速DCTから、1.5Lターボエンジン+6速ATへとパワーユニットを一新したのだから。 最高出力が10ps増の180psになっただけでなく、最大トルクは38Nm増の240Nmになり、且つ発生回転数が1600~5000rpmとワイドになったこのエンジン、ターボが効き出すまでの一瞬を過ぎれば、充実したトルクによる余裕の加速を楽しめる。 従来型では、爽快に吹け上がるエンジンを歯切れ良く変速するDCTを駆使して気持ち良く引っ張るのが楽しかったが、新型はミドルバンドの力感をうまく使って走るのがいい。1420kgというライバル達より重めの車重のせいか、180psという数値ほどパワフルという感じはない。しかしながら、セレクターレバーの親指で変速をする使いにくかったサムシフトに代わって、ステアリングにパドルが設けられたおかげで、美味しい回転域をキープするのは格段に容易になっており、労せず気持ち良く走らせることができる。 ついつい没頭させられてしまう痛快な走り元々定評のあったシャシーにも手が入れられている。柔らかいのにコシのある上質な乗り心地は変わらず。この点では、ライバルはプレミアム勢だと改めて感心させられる。 コーナリングでは、そのしなやかなストローク感を活かして荷重移動を積極的に使うことでグイグイと曲げていくことができる。切れば曲がる今時のトレンドからするとちょっと走りオタク的だが、ソノ気になって走らせる時には、ついつい没頭させられてしまう痛快さがあるのは確かだ。 もっとも、調子に乗るとインに切れ込み過ぎる感もあり、旋回内輪をブレーキでつまむトルクベクタリングの影響なのか、その時のステアリングフィールには個人的に不満もある。しかしながら、絶対的なスタビリティは高く、特にリアの押さえがしっかり効いているから不安になるようなことはない。 パワーが足りなく感じるのは、こんな具合でシャシーの懐が深いからでもある。逆に言えば、思い切り踏んで楽しめるのがフォーカスの走りの個性なのだ。 ライバルと十分に戦える1台。今の地位ではもったいないスタイリングは個性的で、インテリアのクオリティも上々。装備は最先端のものが揃い、何より走りっぷりに独自の世界があり、歓びにあふれている。端的に言って新型フォーカスは、非常に魅力的なクルマだ。手ごわいライバルに囲まれたこのセグメントで、十分に戦える1台と言える。 あとは何が足りないかと言えば、最初に書いたようにそうした魅力を、存在感を、しっかりと伝えていくことに尽きる。今のフォード ジャパンは、どうもここが手薄に思えてならない。このセグメントは激戦区で、フォーカスは出戻りのチャレンジャー。マスタングやエクスプローラーのような、待っているだけでお客さんが来てくれるものとは違うのだということ、どれだけ解っているのだろうか。 こんなことを言いたくなるのは、繰り返しになるがクルマ自体の実力を大いに買っているからである。この新型フォーカス、今のような地位に甘んじているのが本当にもったいない存在だと、強く強く思うのである。 スペック【 スポーツ+ エコブースト 】 |
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