ニュースなスズキが乗っているハスラーのヒットあたりから途切れなく話題をふりまくスズキ。袂を分かったとたんにVWがああなったということについてどうこう言うつもりはないが、近頃のスズキがニュースを呼びこむ傾向にあるのは間違いない。 東京モーターショーでは、マイティデッキ、エアトライサー、それに市販間近に違いないイグニスと、ちょっとファニーなルックスの意欲的なコンセプトカーを3種も出展し、話題を集めた。 また、派手なコンセプトカーの陰で、しれっとソリオのフルハイブリッド・バージョン(シングルクラッチ・トランスミッションのAGSとの組み合わせ!)やアルト・ターボRSのMTバージョンたるワークスを出展するなど、勢いに乗っている。 ひとまずは「新型」と「2.4」を併売モーターショー直前、そんなスズキから新型エスクードの試乗会があると聞き、最初に思ったのは「そういやあったな、エスクード」ということ。 エスクードといえば、初代が1988年に登場した小型SUVの老舗銘柄だ。歴代のモデルサイクルが長く、2代目に切り替わったのが97年、3代目に切り替わったのが2005年。その3代目の時代が続いていたが、今回4代目に切り替わった……と思っていたら、3代目のエスクードは新たに「エスクード2.4」として継続して販売され、4代目エスクードはモデル追加のような格好だという。 いずれは新しいエスクードに一本化されるのだろうが、現状はエスクード2本立て。 SUVブームに乗り損なったワケは?エスクードは30年近く前から存在してきたにもかかわらず、ここ数年で世界的に巻き起こった小~中型SUV大流行というビッグウェーブには乗ることができていない。なぜか? それはエスクードが本格的に過ぎるからだ。近頃もてはやされる小~中型SUVの特徴は、乗用車ライクであること。aiko風に言えば、「少し背の高い~♪」だけの乗用車がはやっているのだ。 なにしろ初代、2代目はラダーフレームにパートタイム4WDのクロスカントリー・ヴィークルで、3代目でよくも悪くも少し現代的になって、フレーム構造を盛り込んだ頑強なモノコックに切り替わり、リアアクスルは独立懸架となって、4WDもフルタイム化されたものの、悪路走破性を重視したつくりは維持された。 パワートレーンも時代に乗り遅れた。3代目は1.6リッター直4から3.2リッターV6までさまざまなエンジンが試され、最終的に2.4リッター直4に落ち着いて今に至るのだが、2.4リッターというと、今となってはなかなかの大排気量で、税制の面でも燃費の面でも有利とは言えない。 SX4の兄弟車であり輸入車でもあるそこで、スズキは方針を大転換。エスクードの基本コンポーネンツを、自社のハンガリー工場で生産して日本にも輸入している「SX4 Sクロス」と共有して開発した。したがって新型エスクードも“輸入車”となる。新たに1.6リッター直4エンジンを横置きし、4WDシステムもSX4 Sクロスと基本的に同じオンデマンドシステムを採用する。じゃあエスクードとSX4 Sクロスの違いはどこにあるのか。 車名から受ける印象とは裏腹にエスクードのほうがSX4 Sクロスよりも小さい。正確に言うと、エスクードのほうが全幅が10mm幅広く、全高が35mm高いが、全長が125mm短い。ホイールベースも100mm短い。35mm高い全高のうち20mmはロードクリアランスの差。このことからエスクードのほうがわずかながら悪路走破性を重視していることがわかる。オンデマンド4WDになってもエスクードを名乗る以上は……といったところだろうか。 主な違いはそのあたりで、デザインこそ大きく異なれど、兄弟車、いわゆるメカニカルツインと言って差し支えないだろう。直線基調の外観デザインは、歴代エスクードを彷彿とさせる。クラムシェル型のボンネットフードは歴代を通じて採用されるお約束だ。 控えめなスペックを軽さがカバーSX4 Sクロスと同じ1.6リッター直4エンジンは、最高出力117ps/6000rpm、最大トルク15.4kgm/4400rpmと、数値上は見るべき点はない。が、実際には総合的に見て必要にして十分の動力性能を発揮した。 試乗では、4WDの仕様に大人4人を乗せ、山道と高速道路を少しずつ走らせてみた。近頃は過給エンジン搭載車にばかり試乗しているせいか、低回転域ではもう少し力があったらなと感じさせたものの、それで困るかといったらそんなことはなく、エンジンの回転が上がるのを少し待つか、もっと踏めばすむ話だ。踏んで高まる音は聞きたくなる類の音色ではないが。 この控えめなスペックでそこそこ走るのは、エスクードの車両重量が軽いからだ。4WDでも1210kg、FWDなら1140kgに過ぎない。同じクラスのSUVを見てみると、マツダCX-3は4WDが1330kgでFWDが1240kg、日産ジュークは4WDが1390kgでFWDが1200-1300kg、ホンダ・ヴェゼルは4WDが1270kgでFWDが1180kgだ。装備が違うので単純に判断できないが、エスクードが軽いのは確か。おかげで、JC08モード燃費も4WDで17.4km/L、FWDで18.2km/Lと健闘している。 新開発の1.4Lターボ、強く要望!シンプルなつくりの新生エスクードを好ましく思いながら試乗を終え、エンジニアの方々と食事に臨んだのだが、席上、欧州では新開発の内製1.4リッターのターボエンジンを載せるという。いや伝えたよ、前ページで述べたように「1.6リッター直4でも困ることはない」とエンジニアの方にも伝えたけれど、新しいエンジンがあるのなら日本でも載せてほしい。そう伝えると「要望が多ければ可能性は十分あります」とエンジニア。要望する。 ハンガリーからの輸入で、1.6リッター直4エンジンの一択で、グレード構成も4WDか2WDを選ぶだけというシンプルさを見ると、あまり日本での販売に力が入っていないのかなと思わせないでもないエスクード。欧州では高効率ターボエンジンを使うという話を聞いてその思いを強くしたが、乗れば乗ったで、パワーが必要十分というだけでなく、山道で、高速道路での振る舞いも安定感があって、決して安普請という感じはない。 ミリ波レーダーを使った衝突軽減ブレーキや前車追従型のクルーズコントロール(全車速ではない)が標準装備のわりに、FWDが212万7600円、4WDが234万3600円という価格はなかなか戦略的だ。 素材はいいのだから…新型エスクードはまだしばらく続きそうな、いやセダンやミニバンなどと同レベルの定番ジャンルとして確立されそうなSUV人気に今度は乗ることができるか? SX4 Sクロスとの違いをもう少し明確にしてほしい気もするが、たとえ中身がほぼ変わらずとも、さまざまなデザインのモデルを多数とりそろえておくのが最近の乗用車ビジネスのいろは。SX4かエスクードか、客が選べるのはいいことだと思う。 今でもいいクルマだが、新エンジンとかハイブリッドとか、何かひとつ話題性があると、とたんに魅力的になるような気がする。モデルサイクルが長いのもエスクードの伝統なので、この世代も節目節目でいろいろな刷新が図られていくのだろう。 スペック【 エスクード(4WD)】 |
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