前作アイスガード5を継承したワケとは?ヨコハマが今シーズンから市場導入した冬タイヤ「iceGUARD 5 PLUS(アイスガード 5 プラス)」。そのネーミングからは、アイス路面での性能にこだわりがあることや、前作アイスガード5に“何かしらの性能がプラス”されたと読み取れるだろう。 外から見た印象では、ブロックパターンも含めてアイスガード5を継承している。これには意図があり、優れた性能バランスに定評あるアイスガード5の基本パターンを引き継ぐことで、開発の主眼を「コンパウンド(ゴム)の成熟」に充てた。 どのメーカーも、冬タイヤの開発テストコースをコンディションよく使える期間は、わずか3ヶ月弱ほど。言うなれば、冬タイヤの開発は時間との勝負。ヨコハマはブロックパターンを継承することで、開発の多くの時間をコンパウンドの成熟に費やしたというわけだ。 悪条件下で進化の一端を見たそのこだわりのアイス性能をさっそく確認……と思ったが、試乗当日は見事なまでの快晴。2月中旬の北海道だというのに、氷盤路の氷はゆるみ、何度も走るとシャーベット状になりそうな表情をしている。 逆に言えば水が浮きはじめた氷の上はとても滑りやすい状況だが、まだテストで使い続ける路面なだけに壊してしまうわけにもいかず。それでも新旧のブレーキ性能比較を我らメディアに見せるためにヨコハマの方が運転して数回だけ走り、その横に強引に乗せてもらった限りでいえば、その進化はかなりのものだった。 特に速度的にはたいしたことないのに、止まりそうで止まらないといった、アイス路面で起こりやすい感覚がとても少ない。同様に加速時のタイヤの滑りも少ないのも好印象で、加減速の負荷が掛かるとタイヤが適度な柔らかさのもとに変形して接地面積が増え、ベタッと路面に食いつく感覚がある。何にせよ、水気の多い氷での“あの”実力はアイスガードの名に相応しい。 アイス制動は従来比で7%向上アイスガード 5 プラスの特徴には、「氷に効く」に加え、「永く効く」「燃費に効く」「さまざまな路面に効く」も掲げられている。それら贅沢な効きを実現しているのが、主眼を置き、進化させたコンパウンドにある。 まず要になるのが「スーパー吸水ゴム」の採用である。その中身は、ミクロの水を呼び込む「新マイクロ吸水バルーン」と、従来比で最大30倍の大きさになる「エボ吸水ホワイドゲル」によって、アイスガード5よりも吸水力を20%も向上させた。 ちなみにエボ吸水ホワイトゲルは低温でも硬くなりづらく、吸水だけでなく路面への密着性も高められる性質を持ち、ヨコハマが北海道地域限定で販売していた「アイスガード エボリューション iG01」の核心たる技術要素でもある。これによってアイス路面での制動性能は、iG01はアイスガード5比で実に20%も向上。その技術を活かしながら他の性能とバランスさせたアイスガード 5 プラスでは、制動性能を同じく7%向上させている。 燃費性能も従来比で7%向上そのバランスされた性能のひとつが「燃費性能」。アイス性能は冬季路面で最も重要であり要望の多い性能だが、アイス路面を走る頻度は実際のところ特定地域を除けばかなり少ないのもまた事実。逆にドライ路面を走る頻度が高いエリアが多い。そのような使用状況と、ハイブリッド車など環境性能に優れたクルマが増えたことを踏まえ、ヨコハマが提案するのが燃費性能というわけだ。 タイヤの土台となるベースのゴムには、燃費悪化につながるエネルギー損失の原因となるヒステリシスロス(変形損失摩擦)を30%も抑えた「低発熱ベースゴム」を採用。他にもタイヤの無駄な変形を抑える「たわみ制御プロファイル」を採用するなど、結果として転がり抵抗の7%低減を達成した。雪道は旅行先やスキー場周辺でしか走らない、ドライ&ウェット路面率の高い方には嬉しい性能のひとつになるだろう。 縦方向のしっかり感が大きく進化している氷盤路は走れなかったものの、圧雪のハンドリングコースの中には日陰部分の深部が凍っているなど、実際の冬季路面に近いさまざまな環境があった。 そこで共通して得られた感触が、“縦方向のしっかり感”。ブレーキを踏んだとき、アクセルを踏んだときの、路面への食いつきが良い。アイス路面はタイヤ全体が「ベタッ」と接地面積を高める動きが確認でき、圧雪路ではブロックが圧雪に「ザクッ」と食いこんで路面を掴まえるのを確認した。 実はこの「ベタッ」と接地することと、圧雪路に「ザクッ」とブロックが刺さりひっかく働きは相反するもの。なぜならベタッは「柔らかさ」が大事になり、ザクッは雪に刺さる「硬さ」が必要となるから。この辺りの微妙な調整が、今回のアイスガード5プラスの肝だ。 4年経っても2年半の状態をキープコンパウンドにおいては、前述した吸水力と柔らかさを確保する「エボ吸水ホワイトゲル」の混ぜこむ量の調整に苦労したという。また少しでも柔らかいコンパウンドを使いながらも、ザクッと性能も欲しいので、それを確保するためにブロック剛性を高める「トリプルピラミッドサイプ」や、「トリプルピラミッド ディンプルサイプ」を使い、ハンドル操作への応答性を高めてきた。 確かにハンドルに伝わってくる横方向のしっかり感も増しているが、それ以上に左右非対称のIN側パターンがなす加減速の縦方向の性能向上が著しく、感覚的には横方向をもっと高めて欲しいという贅沢な悩みが出てきた。とはいえ、前作アイスガード5は若干剛性感が少なく、柔らかい印象でハンドルへの手応えが薄かったことを踏まえると、見事な進化を遂げたと言える。 最後にこれら性能が永く効くように、経年劣化を抑える取り組みをしているのも魅力だ。アイスガード3対比でいえば、約30%も経年劣化のもとであるゴムの硬化を抑制。使用状況により左右するが、4年経ってもアイスガード3でいう2年半の状態をキープしているという。まさに万能的な性能を持ち、アイスガード5プラスは登場した。 iceGUARD 5 PLUS(アイスガード 5 プラス)発売サイズ=135/80R13~265/35R19まで全104サイズ ※愛称=「アイスガード ファイブ プラス」 |
GMT+9, 2025-6-25 11:42 , Processed in 0.052894 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .