“走りの質”を磨き上げた最上級モデル2015年は走りが楽しいモデルに注目が集まった一年だ。中でも、大人に似合う2シーターオープンスポーツとして進化を遂げたのが4代目(ND型)マツダ ロードスター。今回ご紹介する「RS」は発売から5ヶ月を経たタイミングで追加された最上級モデルにあたる。 RSと聞くと、スポーツ性をストイックに突き詰めたモデルのように聞こえるが、じつはそうではない。小型で軽量、FRレイアウトをもつスポーツカーとしての資質を活かし、“走りの質”に関わる部分を磨き上げたのがこのモデルの特徴といえる。 その外観に目を向けると、特に目立ったスポイラーや特別なモデルだと誇張するバッジが装着されているわけではない。195/50R16サイズのタイヤや16インチのホイールのデザインは、現段階ではベースグレードから上級仕様まで全て同一のものが設定されている。 ただし、カスタマイズに造詣が深いクルマ通からすれば、RSの仕様変更箇所に気がつくかも知れない。ブレーキディスクの大径化、足下に覗くビルシュタイン製の黄色いダンパーなど、どんな走りで応えてくれるのか、想像を膨らませるだけでワクワクしてしまいそうだ。 シートはRS専用設計のレカロオープン時に目が留まるのは、ボルドーのパイピングを施したレカロ製シート。体圧が掛かる部分はイタリア製のアルカンタラ素材を採用、サイドサポート部などには滑らかに鞣(なめ)されたナッパレザーが組み合わされており、上質な素材感と腰回りを面で支える着座感覚がじつに心地いい。レカロの職人が一つ一つ丁寧に組み上げたシートは、見栄えも座り心地もひとクラス上の満足感を与えてくれるものだ。 クルマ用のシートは家具のソファなどと異なり、人がクルマと向き合うインターフェースとして、居心地の良さと機能性を突き詰める必要がある。レカロシートは人間工学を重視した設計とその機能性の高さに定評があり、欧州プレミアムカーなどにも採用されている。 RS専用設計の狙いが伺えるのは、ルーフの開閉時に上体の動きを妨げない肩部の張り出しを抑えた形状となっていることや、走行中に骨盤の動きを抑制し、フィット感を高めることで人馬一体の走りを高めたりしているところ。標準シートは座高の低いドライバーだとクルマ直近の視界が掴みづらかったが、このレカロシートはヒップポイントがやや上がったことで狭い場所でも取り回し易くなった。 硬さより快適さを感じるビルシュタイン製ダンパーさて、肝心の走行フィールはどうだろう? RSのパワートレーンは他の仕様でもお馴染みの、131馬力を発生する直4 1.5Lの自然吸気エンジンに6MTのみの組み合わせとなる。 スタートスイッチを押した瞬間に「ブォーン」と響くエンジン音は勇ましいもの。低速でソロソロと動き出してみると、わずか数十メートル転がしただけで、このクルマの質の高さが伝わってくる。路面の凹凸を丁寧に捉えるタイヤのタッチ、ハンドルの操舵フィールはごく低速から適度な手応えを常にドライバーの手のひらに与えてくる上質なものだ。 RSの足回りは、スプリング自体は「S」や「Sスペシャルパッケージ」と同じバネレートのものが採用されているが、RSの場合、ダンパーはビルシュタイン製となっている。標準ダンパーのピストン径は40mmだが、ビルシュタイン製ダンパーは50mmに大径化されている。 ビルシュタインと聞くと、「乗り心地が硬いのでは?」と想像されるかもしれないが、今回のRSはタイヤが路面の変化を巧く捉えて乗り越えていくことで、むしろ快適だと感じさせるほどの出来映えだ。 走りを深化させる重要な要素RSは引き締められた足周りとバランスするようにして、フロントサスペンションの上部がタワーバーで補強されている。ワインディングルートに差し掛かると、僅かに切り増すハンドル操作にも鼻先の動きは忠実に反応し、リヤタイヤはスーッ、スーッと一定のリズムを保ちながら危うげなく追従していく。 大径化されたブレーキは、街乗りの車速からワインディングを走るシーンまで自然なタッチで扱いやすく、車速のコントロール性やカーブを曲がるための姿勢を作りやすいあたりが好感触だった。 例えば、MT車でカーブを通過するとき、高めのギアだと車両の姿勢が不安定になりがちだが、RSはドライバーが落ち着いた物腰でクリアしていける。その背景には、レカロシートの剛性の高さとホールド性も功を奏している。クルマの動きに対して、体圧が掛かる箇所が変化しにくく、中立な姿勢を保てることで、乗員の身体に“意図しない揺れ”を感じさせない。「疲れにくさ」と「密度の高い走り」を提供してくれることも走りを深化させる上では重要な要素といえる。 高回転域で気分を盛り上げる軽快な音色さらに、ペースアップしても車体が安定した姿勢を保って走れることで、カーブを通過するときに低いギアでトラクションを稼ぐ必要がない。イメージよりも2段上のギアで走れることが素性の良さを感じさせた。 「高めのギアで静かに、燃費良く……」と、状況に応じて走り分けられるのは現代のクルマの向き合い方としては嬉しいところではあるが、やはり、スポーツカーの醍醐味といえば、気分を盛り上げるサウンドも走りの気持ちよさを左右する大切なもの。 エンジンの特性は変わっていないが、RSには「インダクション サウンド エンハンサー」を採用。レブリミットに向けてエンジン回転が高まる時には、4000回転を超えるあたりから吸気音が増幅され、さらに回転が上がるにつれて伸びのいい軽快な音色を奏でていく。クルマの性能を余すこと無く使い切りたいスポーツドライビング派の気分を盛り上げる演出といえるだろう。 長いモデルライフで買い時が難しいが……「車重が軽いからといって、薄っぺらい乗り味は絶対に感じさせるな」という思いで走りを熟成していったと語る山本主査。運動性能を高めつつ、時間を掛けて走りを熟成したRSは、スポーツドライビングを満喫したいユーザーの要望に応える走りを提供するだけでなく、同乗者と会話しながら、オープンドライブを快適に楽しむシーンにも似合いそうだ。 スポーツ志向と言っても、本格的なモータースポーツを楽しむユーザーに向けては、装備類を簡素化し、車高調整機能付きのビルシュタイン製ダンパーを備えた「NR-A」というグレードが用意されている。 一方でRSは装備類を充実させることで差別化が図られている。ドライブの道のりを演出するBoseサウンドシステムを標準装備し、アドバンスドキーレスエントリーシステムをはじめとした快適装備、安全面では死角を補うブラインド・スポット・モニタリングや車線逸脱警報、ハイビームコントロールシステムなども標準装備されている。 RSやNR-Aの追加で5つのグレードが用意されたロードスター。クルマ選びは走行シーンや求めるキャラクターで変わるものだが、マツダの関係者は「長く続くモデルライフの中で様々な提案を行っていきたい」と語っていた。実際に購入する上では買い時が難しいモデルとなりそうだが、自分がコレだと思える仕様が登場したら、実際に試乗してみて、フィーリングに合えば購入するタイミングなのではないだろうか。 スペック【 RS 】 |
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