発売2週間強で驚異の3万8000台を受注いや、恐るべし。久々トヨタの底ヂカラであり、企画力を見た気がしましたわ。そう、新型シエンタ! シエンタと言えば初代は40歳以上のファミリーやクルマ業界の人間しか覚えてないようなアットホームなミニバン。 なにしろ発売は今から12年も前で、当時は全長4mちょいのコンパクトサイズや丸目の癒し系マスク、その割りに大きな両側スライドドアが売り。ズバリ同じくスライドドア自慢のコンパクトカー、ポルテの3列シート版といった印象で、あくまでも人畜無害なイメージであったはず。 しかもいまやミニバン界はリストラの嵐。中でも5ナンバーサイズは過酷で、カッコと走りとそこそこの使い勝手を兼ね備えたホンダ・ストリーム&トヨタ・ウィッシュ路線はホンダ・ジェイドが受け継いだが日本で先はなさそうだし、一時あったプチオデッセイとも言うべきイプサムやらガイアもほぼ完全に消え去っている。要するにギリギリまでスペースを優先したノア&ヴォクシーやステップワゴンなどの箱型以外は死に絶えつつあったと言っていいわけですよ。 ところがここに来て、突如2代目がクローズアップ! それも有名ラテン系サッカー選手と滝川クリステルを使った“トヨタの走るスポーツバッグ”という新たなイメージ戦略を擁して発売2週間強で受注3万8000台!! の驚異の大ヒット達成! ホント、今の自動車業界でこんなゴーインな売り方できるのはトヨタだけですって。 ハマったイケイケ実用ラテンデザイン!ポイントは走るスポーツバッグという今どきの若夫婦向けミニバン解釈だけじゃなく、大きく3つある。1つは今までにないスポーティなラテン系デザイン。それはイメージカラーの鮮烈イエローにも表れているが、前後マスクはヤケにセクシーでイケイケだ。 全長4235×全幅1695×全高1675mmは、完全5ナンバーボディで今どきのミニバンとしては正直小ぶり。全高こそ高めだが、街中で見ると幅が妙に狭くて軽自動車に毛が生えた程度のサイズ感。ところがデザイナー曰く「トレッキングシューズをイメージした」というフォルムはなかなかで「ひと筆書きを意識した」という前後ディテールがなんともユニーク。 ヘッドライトやバンパー、グリルをひとまとめにしてアイコン化したそうで、結果今までにないアクティブなラテンテイストを獲得。小沢コージ的には「ちょっとシトロエンっぽいな」と思いましたな。 インテリアも同様で、コチラもひと筆書きを意識し、センターのナビモニターを中心にドライバー側の手元を低く、計器類を高くし、助手席側は低めにグローブボックスの蓋を持ってきた点対称デザイン。正直、インパネは全域ハード素材でさほどお金はかかってない。しかし、味気なさをデザインや色でカバーしていてなかなかリッチだ。 2つめに凄いのがパッケージングで全長4.2m台とコンパクトなので最初は危ぶんだが、身長176cmの小沢が座った1列目ポジションで、2列目を一番前にスライドさせると2列目と3列目にほぼスッポリ座れる。特に3列目は低床フロア採用でヒザを抱え込まないで済むし、パナマ帽を被った頭もピッタリ収納してくれる。 初代から自慢の3列目のダイブイン格納も、今回さらに洗練された優れモノ。最初は格納にコツが必要だけどやりやすく、2列目を起こし3列目を格納した状態ならキャンプ道具一式を積み込めるほど広い。唯一、3列目シート自体の剛性感はイマイチでそこは残念でしたけどね。 事実上の“アクアミニバン”+αの魅力それからやっぱり走りでしょう、特に燃費! なにしろパワートレインは、JC08モード燃費37km/Lで乗用車販売トップをひた走るアクア譲りの1.5Lハイブリッドと、今春カローラ系に搭載された話題の新作、高効率1.5L直4ガソリンのふたつから選べる。 特に後者はマツダのスカイアクティブもビックリの13.5の高圧縮比だけでなく、アトキンソンサイクルも導入しJC08モード燃費20.6km/L! ハイブリッドもこれまた27.2km/Lとハンパなく、どちらも国産3列シートミニバントップ。あのプリウスαも凌駕するビックリ性能なんですよ。 となると気になるのは走りの質だけど、フロント回りにアクア譲りを使い、リア回りを新作した新型シエンタのボディ剛性感はそこそこ。プリウス系や旧型カローラほどのしっかり感は感じないけど、特に軽い1.5リッターガソリン版ではボディのスポット溶接の効率的な配置が効いている。とてもアクア譲りとは思えないステアリングの剛性感で、乗り心地も悪くない。一方、ハイブリッドの方は、フロア回りが若干バタつくようにも小沢は感じました。 一方、加速性能は109psのガソリン版の方が素直。回して特に気持ち良くないけど、下からトルクが自然に盛り上がり、普通に走れる。システム出力100psのハイブリッドも悪くはないけど、アクアに比べて重めの車重1380kgが効いているのか発進は少し物足りない。 もちろんギア比を全体的に低めているので全体の加速は悪くありません。それとエンジン音はアクアに比べて若干うるさい。また暑い真夏のテストということもあって、EV走行もほぼ使えないでしょう。感覚としては、プリウスαの方がよっぽどハイブリッドっぽいですな。 勝ったのは「軽をライバル」とする戦略最後に新型シエンタの作りの凄さを勝手に分析すると、それは初めからライバルにミニバンではなく、軽を想定している部分でしょう。 チーフエンジニアの粥川 宏氏いわく「ミニバンを小さくしたというより、コンパクトカーの延長線、進化版と考えた」そうで、事実サイズ、デザインをみると「デカいなぁ」という感じが全くない。実はそれこそが今売れ線のノア&ヴォクシークラスの最大の盲点で、売れてはいるものの「デカくて嫌だなぁ」と思う女性ドライバーは少なくない。 よってその多くの客はトールワゴンの軽なんかに流れているわけだが、それはそれで「5人乗れたらなぁ」「7人乗れたらなぁ」とミニバンを羨む人も多く、「さらに燃費もコンパクトカー並みだといいのに」と思ってたりする。 まさしく新型シエンタは、そういう軽ユーザーの願望と不満を狙いウチしているわけで、しかもハイブリッド版の価格はアクアのパーツを使って222万円台から。かたや省燃費ガソリン版も168万円台からと低価格を実現。実はそれこそがキモで、今や150万円台当たり前の軽トールワゴン+αで買えちゃう設定なのである。しかも燃費もほとんど変わらないし。 値段、サイズ、燃費がほとんど変わらなくて広くてラテン系にセクシー! となったらそりゃ軽自動車ユーザーも飛びつくじゃないすか。まさにトヨタ流に計算され尽くした久々のヒット作なんですな(笑)。 スペック例【 ハイブリッド G 6人乗り 】 【 ガソリン G 7人乗り 】 |
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