言い訳その1:エコランと運転する楽しさエコラン……。いや、いいんですよ。昭和世代ですけど、一応、僕だって現代人ですから、クルマの燃費がいいのを否定するつもりはありません。燃費にせよ電費にせよ、経済的、環境的にも優れているほうがいいに決まっています。でも、エコランにとらわれるのはどうなんでしょう? 例えば、さっきのは“ふんわりアクセル”だったかなということに気を取られながらの運転。一度や二度、あるいは1日、1カ月と期間限定ならそういうのもチャレンジングでよいかもしれませんが、年中そのことにとらわれながら運転し続けられますか? 続けられるとしても、楽しいですか? “楽しみ”を排除してまで燃費を追求するのなら、乗用車はプリウスやアルトだけでいいってことになりますから。 乗用車は個人が自由に所有する耐久消費財です。楽しさを追求したクルマを買ってもいいのと同じように、楽しさを追求した運転をしたっていいのです。あまりに無駄なことをしなければ。燃費が少々悪くても、乗員が“楽しさ”を消費したのであれば、それはそれでOKなんですよ。 言い訳その2:燃費効率は上がるが、人生の効率は?違う観点もあります。エンジンの回転を上げたくないばかりに緩い加速を続ければ、自分のクルマのその区間の燃費は上がるかもしれませんが、交通の流れを妨げかねません。また、そのペースが周囲の車両にとっても効率面でちょうどいいペースとは限らないのです。たとえそれが燃費追求のためであっても、それぞれがあまりに異なるペースで走らせれば、渋滞を誘発します。それでは全体の効率アップは望めません。 さらに、決してやみくもに飛ばせとは言いませんが、ゆっくり走ったら目的地にゆっくり着くわけで、燃費効率は上がるかもしれませんが、目的地での活動時間は減り、人生の効率が上がりません! はい、やや強引ですね、自覚しています。 それに! エコランの参加者は楽しいですよ、そりゃ。みんなで集まって、同じ条件で「よーい、ドン」なんてやるわけですから、お祭りみたいなもんです。けれど、それを皆さんにお伝えしたとして、楽しく読んでいただけますかね? どこを見ても「とにかく慎重なアクセルワークを心がけた」とか「こんなことならダイエットしておけばよかった」とか書いていますよ、きっと。 計28媒体によるエコラン競争にエントリーということを踏まえ、我々は今回のエコラン参加に際し、普段どおりの運転を貫きました。わざわざ急加速をしたりはしませんでしたが、ストレスのたまるのろのろ運転もしませんでした。エアコンもオールウェイズ・オン。エクストレイル ハイブリッドの本当の実力をチェックしたわけでありま……ああ、そうですよっ! 全部言い訳ですよ。思ったほど燃費が出なかったんです。くっ……。 今回のエコランは、横浜市の日産グローバル本社から、ルート自由で、山梨県富士河口湖町の富士ケ嶺・おいしいキャンプ場までの約150km(目的地の標高は出発地より約1000m高い)を走り、その燃費を競うというチャレンジです。1日7媒体が参加し、それが4日間行われ、計28媒体が、同じルートを、同じエクストレイル ハイブリッド(カーテンエアバッグの有無による10kgの差はあり)で走るのです。 その数日前、btyから「走ってほしい」という電話をもらった時、ついに僕も請われて走る契約ドライバーの仲間入りを果たしたんだなと感慨にふけったものです。ジャン・アレジがティレルで初めてF1に乗ることになった時もこんな感じだったのかなぁ……。ともあれ、以来、減量に次ぐ減量を重ね……るのは大変なので、“おかわり&間食禁止”を自らに課したのです。 JC08モード(20.0km/L)達成も夢じゃない!?迎えた当日、btyチームが集合すると、何かがおかしいのです。他のチーム(媒体)の乗員が、相当気合いが入ったところで1人もしくは2人、多くても3人なのに対して、我がbtyチームは私を含め4人もいるじゃないですか! 事情があってのこととはいえ、「エコランをなんだと思ってんだ!」と怒鳴りつけようと思ったのですが、契約ドライバーとは名ばかりで、実際にはいち出入り業者に過ぎない身であることを思い出し、ここはグッと我慢して4人乗車でスタートしました。 ハンデがあるとはいえ、冒頭に書いたように後続車にストレスを与えるような緩い加速は信条と異なるため、常識の範囲内での優しい加速を心がけます。ほかのストロングハイブリッド車同様、エクストレイル ハイブリッドも駆動用バッテリーが十分に貯まっている場合、ゼロ発進はモーターのみによるEV走行です。発進後、できるだけ長くEV走行を続けようと心がけました。実はここに落とし穴があるのですが、チャレンジ中には気づかず。 高速道路に入ると、左、あるいは中央の車線で、一定の速度を保つよう努力しました。気温が高い雨の日に4人も乗っていると、車内が曇ってしかたなく、オートエアコンはガンガンにコンプレッサーを作動させます。ワイパーも電気を食いますが、しかたありません。それでも、高速道路を優しく走らせ続けることで、12km/L、14km/L、16km/Lとじわじわ燃費が向上していきました。このペースだとJC08モード(20.0km/L)達成も夢じゃないんじゃないか……。そんな浮ついた気持ちになったことを告白します。 実際には、いかにハイブリッド車とはいえ、登り区間で燃費が向上し続けるはずはなく、高速を降りてアップダウンを繰り返し、車載燃費計を見ては一喜一憂しながら、ゴールへ近づいていきました。 EV走行が長くても燃費がよくなるとは限らないそしてゴール。btyチームの最終的な燃費は15.9km/Lでした。ドヤ顔で計測員に伝えたところ、彼は「15.9ですか?」と確認した後、「了解でーす」と抑揚なく返事をしました。よくないの、これ? 不安なまま昼食をとり、結果発表の時間。「発表します。1位、◯×△さんで◯km/L、2位、×△○さんで◯km/L……、6位、btyさんで15.9km/L、7位……」。え? けっこう頑張ったのに? ずっとおかわり我慢してきたのに? 現実は現実として受け止めなくてはなりませんが、人間ができていない私。結果を知らされたとたん、冒頭に述べた言い訳に次ぐ言い訳が脳内に湧いてきたのでした。ちなみに、4日間の計28媒体中27位。ブービー賞をいただきました(※総合1位チームの平均燃費は19.4km/L)。 しかし、報告としても、読み物としてもこのままでは終わることができません。では好成績を上げるためにどうすればよかったのでしょうか? 前述したように、私はスタートからしばらく続くEV走行の時間をできるだけ長くしようと心がけました。つまりEV走行率を上げようとしたのです。けれど、最終結果を見ると、成績上位のチームのEV走行率が高いとは限りません。つまり、エンジンがかかっている時間が短いほうが燃費がいいとは限らないということです。 では、燃費を向上させる走り方とは?一番いいのは、EV走行でスタートし、その長さにはとらわれず、EV走行からエンジンによる駆動に切り替わった後、エンジンが生むエネルギーが駆動だけでなく充電にも振り分けられている状態を維持することだそうです。ハイブリッド車ユーザーにはおなじみの、エネルギーフロー表示で、エンジンからのパワーがタイヤにもバッテリーにも伸びている状態ですね。 エンジンパワーが充電にも振り分けられるということは、エンジンの効率が高いゾーンにあるという証拠。なおかつバッテリーもエネルギーが貯まっていくので、後々必要な時に十分にパワーを取り出すことができ、さらに燃費が向上するという循環です。 その状態をできるだけ長くつくり出すには、メリハリのある加速で早めに巡航速度に達し、そこからは一定速度を維持するということに尽きるようです。もちろん、不要な車線変更はせず、急加速だけでなく急減速も避けなくてはなりません。ブレーキパッドをつまむブレーキングを減らし、なるべく回生ブレーキで減速するのが理想です。 豆知識をひとつ。信号待ちなどでの停止時にはしっかりブレーキを踏むこと。そうすることでクリープ機能がカットされるため、わずかながら燃費向上に寄与します。最低限の力でブレーキを踏んで停車している状態だと、クリープ機能が活きたままで、その分だけよけいにエネルギーを使ってしまうというわけです。 ガソリン車で本格的な悪路走行もテスト最後に、これはさらなる言い訳ではなく、事実なのですが、我々がチャレンジした日が雨だったことは不幸でした。雨は確実に燃費を悪化させます。路面の走行抵抗が大きくなりますし、ワイパーやヘッドライトなど電装品も使うようになります。そして、車内が曇りがちなので、暑くなくても寒くなくても、エアコンを作動させる必要がありますし。それに、なんといっても我々は4人乗車ですから、特別車内が曇りやすかったですしね(←言い訳のダメ押し)。 ちなみに、どんなクルマでもエアコンを作動させれば燃費が悪化しますが、エクストレイル ハイブリッドをはじめとする多くのストロングハイブリッド車の場合、コンプレッサーをエンジンではなく電動で動かすため、燃費の落ち込みは17~18km/Lが16~17km/Lと約1km/L減程度の落ち込みで済むそうです。 非ハイブリッド車の場合、コンプレッサーを動かすのにエンジンの回転を利用するため、約1割程度燃費が悪化するというのは、読者の皆さんも体験上ご存知のはず。さらに非力なクルマだとエアコンによって明確にパワーが下がりますが、ハイブリッド車の場合、原理上、パワーの落ち込みはありません。 この日は、富士ケ嶺オフロードで、ガソリンのエクストレイルに乗り換え、本格的な悪路走行もテストしました。エクストレイルにはいわゆるマッド&スノータイプのタイヤが装着されていますが、基本は燃費も気にしたオンロード向けのもの。にもかかわらず、4WDロックの状態にすれば、滑りやすい砂利の登坂路ゆっくり確実に上ることができたほか、下りではヒルディセント・コントロール機能によって、エフォートレスに下ることができました。エクストレイル ハイブリッドも4WDシステムは同じですから、ガソリン版よりも車重が約130kg重いことさえ忘れなければ、オフロードを楽しむことができるはずです。 悪状況下でも証明されたエクストレイル ハイブリッドの実力ともあれ、我々のクルマは、4人乗車、雨、エアコンオンという三大悪条件に加え、私のしくじり運転があったにもかかわらず、登りルートで15.9km/Lの燃費を記録したのです。これは紛れもないエクストレイル ハイブリッドの実力であり、ガソリン版エクストレイルには出来ない芸当です。 そして、必要に迫られれば4WDで悪路走行もこなすのですから、エクストレイル ハイブリッドはエコ万能車です。正直に言うと、先代までにあったクリーンディーゼル版が新型で無くなったことを非常に残念に思っていました。その気持ちは今も変わりませんが、ハイブリッドもなかなか魅力的に思えてきました。 日産がメディアを対象にエコランを企画するのは、スカイライン ハイブリッドに続いて2度目だそうですが、このままでは引き下がれません。既存の車種への追加でもいいですし、ブランニューモデルでもかまいません。なるはやで次のハイブリッド車を出していただき、3度目のエコラン大会を企画していただかないと。もうドライバーとしては呼ばれないか……。 スペック【 20X ハイブリッド “エマージェンシーブレーキパッケージ” 】 |
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