「RXでありながら、RXを超える」日本ではハリアーとして売られた初代モデルが、フレーム付きのオフローダーではなく乗用車をベースとすることで高い快適性を実現したラグジュアリーなSUVとして、まさに新しいマーケットを開拓して以来、「RX」は革新性という面でレクサスというブランドを牽引する存在であり続けてきた。それは販売面でも同様で、RXはレクサスのグローバル販売の約3割を占める最重要モデルとなっている。 そんなRXの新型が恐れたのは、イメージが固定化してしまうこと。そこで開発陣は「RXでありながら、RXを超える」ことを目指してフルモデルチェンジを敢行。いよいよ通算4世代目となるRXが、登場することとなったのだ。 インパクト十分な大胆デザイン開発陣の意気込みは、エクステリアの大胆な造形にも明白に表れている。スピンドルグリルを全体のフォルムの起点として用いる手法や、力強い台形のフェンダー、大きな凹面を組み合わせたボディ表面などは、昨年登場して以来、絶好調の「NX」と共通の、アグレッシヴな雰囲気を感じさせる。見所はCピラーを隠したリアクウォーターウインドウの流れるような処理。これもあって全体の印象としては、より伸びやかで、ゆったり大きく見える。 実際、サイズ自体も拡大されている。全長は4890mmと、一気に120mmも伸ばされており、ホイールベースもやはり50mm増の2790mmへ。全幅は10mm増だが、それでも1895mmに至っている。これまではコンパクト~ミディアムクラスを1台で担ってきたが、弟分としてNXが登場したことで、遠慮せずに上のポジションへと移動できたというわけである。 一方で、実は車体の基本骨格、いわゆるプラットフォームは現行モデルと多くを共用しているのだが、それでも車体フロント部分は刷新されて、剛性アップを図り、またエンジンをその重心に近い位置で支えられるようマウントの位置と方法も改められているし、全体にレーザースクリュー溶接、構造用接着剤の多用に、スポット打点増しなどによって、高剛性化が追求されている。この辺りは、最近のレクサスの文脈通りと言うことができるだろう。 ガラリと雰囲気を変えたインテリア実際のユーザーにとっては外観より大切なインテリアは、ガラリと雰囲気が変わった。従来とはまったく異なるテイストだし、NXともまったくの別物。これが、乗り込んだ瞬間「オッ」と思わせ、1日乗った後にも「悪くないな」と感じさせる、なかなかに居心地のいいものに仕上がっていたのだ。 インストルメントパネル全体は、低くフラットに感じさせる造形となっている。ソフト樹脂と、助手席側に向かって配されたウッドやバンブーなどのオーナメントパネルのコントラスト、そして敢えて一体とせず独立させた12.3インチの大型モニターが、それを強調している。一方、運転操作に関わる要素は、ドライバー周辺に集中的に配置されている。フルカラーのヘッドアップディスプレイも設定された。 インフォテインメントシステムはレクサスではお馴染みのリモートタッチを引き続き採用しているのだが、よく見るとコレ、NXや「RC」などで採用されたタッチパッドではなく、従来と同様のマウス型のポインタが使われている。聞けばRXは保有台数が多く、ユーザーの性別も年齢も幅広いことから、使い勝手の面で一気に革新を進めるのは避けたのだというのだが、個人的にはコレ、賛成である。 正直まだ、NXやRCのタッチパッドは使いやすいとは言えない。タッチパッドというシステムが、というよりはそのレスポンスが遅いことが問題で、それが改善されればまた状況は違ってくると思うのだが、それでも「BACK」と「ENTER」のボタンが追加されたポインタは、当然手書き入力などは出来ないのだが、より直感的に扱うことができた。 室内のゆとりやラゲッジも拡大サイズアップによって室内もより広くなっている。前後乗員の間隔を示すカップルディスタンスは18mm増の1000mmに。これは「LS」とも並ぶ数字だ。リアシートヒーターの採用も、後席の乗員にとっては朗報だ。 奥行きが増して従来比54L増の514Lまで拡大された荷室には9.5インチのゴルフバッグが4つ横積みできるという。強いて言えば、トノカバーがリアゲート連動式でもレールガイド付きでもなく、内装の凹みに引っ掛けて固定するタイプなのが残念。使っているうちに傷がつきやすく、そうなるとガッカリ感がとても大きいからだ。 一方、レクサスのエンブレムに手をかざすだけでオープンする電動リアゲートはいいアイディア。ドイツ勢に多い足のジェスチャーを使うものより、品良く扱える。使っている所を見ると、ちょっと不思議な絵柄ではあるけれど。 頂点に「ハイブリッド」、エントリーに「ターボ」ラインナップは2種類が用意される。頂点に位置するのは従来同様、V型6気筒3.5Lエンジンと電気モーターを組み合わせた「RX450h」。従来と同様と書いたが、実は内燃エンジンは主要部品が一新され、燃費と出力を向上させている。更に、従来のRX350とRX270に代わっては、直列4気筒2Lターボの「RX200t」がラインナップに加わった。 今回の試乗では、この2つのパワートレインに、「バージョンL」と「F SPORT」の2種類のトリムの組み合わせを、取っ替え引っ替え試すことができた。 どのモデルにも共通して、まず強い印象をもたらすのは乗り心地の良さだ。ボディは重厚な感じはあまりしないのだが、カチッと引き締まって軽やかな感触を伝えてくる。それを土台にサスペンションはよく動いているのだが、車体の姿勢は常にフラットに保たれている。この辺りが快適性のポイントのようだ。 安定性や曲がる能力がジャンプアップ驚いたのはステアリングを切った時のクルマの反応。嫌なロールをほとんど感じさせることなく、スッと思い通りにノーズが吸い込まれていくようなターンインの気持ち良さには、思わず目を丸くしてしまった。これにはマウントの改良でエンジンが前後左右に揺れなくなったのが大いに効いているはずである。 また、RX450hのE-Fourと呼ばれる電気式AWDシステムでは前後駆動力の配分に、旋回中のスリップ率とヨーレートのフィードバック制御を追加、RX200tにもダイナミックトルクコントロールAWDと旋回内輪へのブレーキ制御を採用するなどして、やはり安定性に加えて「曲がる」能力の向上が図られている。それにしても、これほど違うとは…という感じである。 恥ずかしながら「RX450h バージョンL」に乗った時には、すっかりエアサスペンション仕様なのかと勘違いしていた。しかし実は新型RXは従来はあったエアサスペンションが備わらないのだった。要するに、それぐらい乗り味がしなやかで、且つ姿勢制御も巧みだと感じられたわけである。もちろん、沢山の人や荷物を載せたり、あるいは牽引したりということを考えれば、依然としてエアサスペンションは欲しいところだが…。 「RX450h F SPORT」には電動アクティブスタビライザーが引き続き備わる。フットワークの一体感、バンプを乗り越える時のしなやかさなど、あらゆる面でベストと思えたのがコレ。ロールは抑制させつつ、うねりはいなす、新しい制御が効いている。SPORT S+モードにしても尚、スポーティさの中に上質なタッチが失われないのが、とてもいい。 トランスミッションには進化の余地アリパワートレインでは、やはりRX200tに注目が集まるところだろう。まず性能としては文句は無い。味わい深いエンジンだ、とまで評することはできないが、代わりに低速域からグッと力が盛り上がって、大柄なボディを余裕で走らせる。 惜しいのはATがNXと同様、6速だということ。ギアとギアの間隔が離れているので、一般道でも少し踏み込むと2000rpm台中盤まで、頻繁に使うことになる。ここまで引っ張らず、普段使いは2000rpm以下で賄えるようになると、燃費も更に出るだろうし、何より走りに“今っぽさ”が濃厚になるはずだ。 RX450hは、さすが電気モーターの力で立ち上がりからパワフルで、しかもそのあとには力強くシームレスな加速が持続する。普段の自分は、ステップATやよく出来たDCTの歯切れの良さが好みなのだが、新型RXの場合は、その良い意味でゆったりとした乗り味のおかげで、むしろこのふわっと、しかし逞しさのちゃんと備わった加速感がベストマッチングと感じられた。 気合いを入れ直した先進安全装備この格段にレベルアップした走りを存分に楽しむための先進安全装備も充実している。もともとレクサスは常にこの分野で先端を行っていたはずが、最近はちょっと存在感が薄い。 しかし新型RXでは気合いを入れ直したようで、プリクラッシュセーフティシステム、オートマチックハイビーム、レーンキーピングアシスト、全車速追従機能付きレーダークルーズコントロールをパッケージ化した「Lexus Safety System+」を採用するほか、路車間通信により右折時の注意喚起を行なったり、あるいはクルーズコントロール使用時に先行車両の加減速情報にも反応するといった機能を備えた「ITS Connect」、後退中に左右後方から接近する車両を検知してドライバーに知らせるのみならず、必要な時には自動ブレーキまでおこなうリアクロストラフィックアラート&オートブレーキ等々、新しい機能もたっぷりと盛り込まれている。 安全性という面では、三角窓のピラーが細くなり、ミラーが後ろに引かれて斜め前方の視界がスッキリとしたのも見逃せない。内側から外側に向かって流れるように点灯するシーケンシャルターンシグナルランプも、見た目の新鮮さはもちろん、注意をひくという意味で大きな役割を果たすはずだ。 先駆者として守りつつ攻めた1台最初にプラットフォームは先代から継承とだけ聞いた時には、主力車種なのに、なんでそんなケチッたことをするんだろう、なんて思った。しかしながら、その内容はここまで記してきたように、非常に充実しているし、肝心な走りっぷりも唸らされるような出来映えだった。 もちろん、常に斬新なものを見たい気持ちはあるけれど、引き継げるものは引き継ぎ、その分の力を他の部分に注ぐことができているならば、つまり結果が良ければ、それも当然アリ。実際、新型RXは十分に期待を超えていると思う。 実は開発を指揮したチーフエンジニアの勝田隆之氏は、現行モデルも手掛けており、つまりRXの美点も弱点も知り尽くしていた人物。攻めも守りも巧みと感じさせるのは、その辺りも大いに影響しているに違いない。 定番商品らしい、王道を往く進化は、きっと歴代モデルのオーナーも納得のはずだし、新たなユーザーにも響くはず。さすがこのカテゴリーの先駆者らしく、欧州のライバル達のフォローではない、独自の個性が更に磨かれたクルマに仕上がっていたと評して良さそうである。 NXは人気だし、LXも出た。そして秋には、この新型RXも上陸する。レクサスはSUV戦略、本当に上手だ。 |
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