ジープファミリーの末っ子として登場「何アレ、カワイイ!」 試乗会場にズラリと並んだカラフルなジープ。悪路を駆け抜ける無骨なイメージとは裏腹に、現代風にデフォルメされたモダンなデザイン。ミリタリー風のカーキにイエローにブルー、オレンジなど、ヴィヴィッドなボディカラーが曇り空のグレーの景色にパッと花を咲かせてみせた。 ジープといえば、ワイルドなイメージの「ラングラー」や、SUVにラグジュアリーな要素を採り入れた「グランドチェロキー」、スタイリッシュ路線にシフトした「チェロキー」、扱いやすいサイズの「コンパス」といったモデルをラインナップしてきたが、今回デビューを飾った「レネゲード」はジープファミリーの末っ子として登場した。 全長4255mm(トレイルホークは4260mm)、全幅1805mmとSUVのわりにプレッシャーを感じにくいコンパクトなボディには、燃費性能が期待できる2WDモデルが設定されているほか、上級仕様のトレイルホークには最低地上高200mmを確保した4WDシステムを採用している。1941年からオフローダーを世に送り出してきたジープらしく、乗用車から派生したSUVには叶わない悪路走破性を持ち併せているあたりも頼もしい。 あちこちに配された「×」印強烈な個性を発揮しているレネゲードだが、ひと目でジープだと分かる理由はそのスタイリングにある。フロント部分には7スロットグリルを配し、天井に向かって立ち気味に設計されたピラー、台形のホイールアーチ、クルマの四隅にタイヤを配置したスタイルなど、安っぽい隙など一切感じさせず、中身が詰まった骨太なイメージを受ける。 細部のデザインに目を凝らすと、何ともユニークなのがテールランプや天井などに描かれた「×」印。これは1940年代に米軍のジープが携行していたガソリンタンクに描かれていた×印がモチーフになっているそうだが、ジープらしい背景を採り入れつつポップなイメージに仕立てているあたりがニクい。 遊び心を忘れないクルマづくり来日していたデザイナーの話に耳を傾けると、アメリカ人の冒険心のスケールの大きさを思い知らされる。アウトドアでアクティビティを楽しみながらこのクルマのデザインを創造していったと言うが、中でもインテリアは日本では余り耳にしないようなエクストリーム系のスポーツのアイテムからヒントを得たものが採り入れられているという。 タコメーターのレッドゾーンはペイントボールゲームさながらに塗料を勢いよく吹き散らしたように描かれているし、ダッシュボードの上部に張り出したエアコンの吹出口はスキーなどで使うゴーグルのよう。現代のクルマとして必要な機能性を備えながら躍動感あふれるアクティブなデザインは、人生を楽しむ上でのボルテージを高めてくれそうだ。 また、ジープというクルマは昔から遊び心を忘れないクルマづくりが行われてきたが、レネゲードのボディのあちこちには隠れアイコンが仕込まれている。フロントガラスの端っこには1940年代のジープ・ウィリスの影が覗いていたりするし、給油口を開いたところに描かれたクモには「CIAO! BABY」とイタリア語で台詞が綴られている。フィアット(伊)とクライスラー(米)が統合した大人の事情をチラつかせるあたりも「ナルホドね~」といった具合なのである。 まずは売れ筋の「リミテッド」に試乗さて、いよいよ楽しみにしていた試乗をスタート。海岸線のバイパスを通過して一路箱根までドライブを楽しんでみる。レネゲードには1.4L 直4ターボエンジンに6速のデュアルクラッチトランスミッションを組み合わせたFF仕様と、2.4L 直4ターボエンジン×9速ATとなる4WDの「トレイルホーク」の2種類のパワートレーンが設定されている。今回、私が試乗したのはFFモデルで装備類を充実させた「リミテッド」と最もベーシックな「オープニングエディション」。 まずは売れ筋になると予想されるリミテッドに試乗してみる。ハイオク仕様で140馬力を発揮する1.4Lのマルチエア・ターボエンジンは、MTのギアボックスをベースとしたデュアルクラッチトランスミッションながら、走り出しはなかなかスムーズ。一端動き出してしまえば、街乗りで頻繁に使う40~60km/hの車速域で滑らかに走れるほか、アクセルペダルの踏み込み具合を的確に汲み取り、車速がコントロールしやすい。 レザーシートのフィット感に好印象また、運転席で居心地の良さを感じる理由はレザーシートのフィット感の高さにある。ボンネットは高めの設計なので、女性としては座面を上げ、アイポイントを高めてドライブする必要があるものの、腰回りが落ち着くドライバーズシートは運転していて体幹がブレにくく、自然に正確な運転操作に導いてくれる。 バイパスの路面の継ぎ目を乗り越える時にわずかに腰高感を感じるあたりは、路面を這うようにして走る乗用車的なSUVとは異なり、ある意味ジープらしいといえる部分なのかも知れない。ただ、試乗車の走行距離はわずか1700km程度だったので、距離を伸ばしていけば足が馴染んでいきそうだし、一昔前のジープのように、路面からの入力で跳ね返されたり、ハンドルからブルブルくる振動が伝わってきたりするような不快さは感じない。 ボディの構えはどっしりしているので、郊外に足を延ばす時でも快適に移動することができそうだ。17インチのタイヤはたわみが少なく、操舵した際にレスポンスに優れている点もリミテッドならではの魅力といえるだろう。 ベースグレードでも十分。装備面を比較すると…一方で、想像以上に好感触な走りをみせてくれたのが16インチのタイヤを装着したベースグレードの「オープニングエディション」。ソフトタッチでしなやかな足さばきは、力を巧い具合に受け流す走りで乗り心地の良さが得られると同時に操縦性の良さまで披露してくれる。 山道をそれなりのペースで流すような時は17インチのリミテッドのほうがクルマのロールが少ないため安心感は高まるが、気さくに向き合える走りのキャラクターを求める人にはベースグレードが響きそうだ。 ただ、装備面を比較するとリミテッドにはバイキセノンヘッドライトやフルカラーのディスプレイ、電動調整式のレザーシートに加えて、車線逸脱や前面衝突のリスクを知らせる警報、バックカメラなどの死角を補う機能など、充実した機能が標準装備となるため、約16万円増の価格差を加味したとしてもリミテッドの方が魅力的に映ってくる。 また、後席にも試乗してみたが、ベースモデルのファブリックシートは身体を跳ね返す反力が強く、女性や子供など体重が軽めの乗員が座る場合は身体が落ち着きにくい。頻繁に後席を使ってドライブするケースでは身体が馴染みやすいレザーシートの方が適していると感じた。 ジープの世界観を幅広く知らしめる起爆剤手狭な日本の道路環境において、各メーカーのアイデンティティを採り入れた小ぶりなSUVは依然人気を得ている。街乗りで走らせやすいコンパクトなボディにハッチバックモデル+αの実用性。そこに冒険的なエッセンスが注がれたデザインは乗り手の個性を演出する上でも魅力的なものに映る。 目が肥えたユーザーを頷かせる価値あるコンパクトの躍進によって、輸入車メーカーの日本市場における販売台数は底上げされて売上げを伸ばしているのが実情だが、SUVの代名詞としてその名を知らしめてきたジープが育んできた価値を提案するレネゲード。その世界観を幅広い世代に知らしめる起爆剤となりそうだ。 スペック例【 リミテッド 】 |
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