東京⇔長野、約300kmのテストドライブスタッドレスタイヤの試乗は北海道のテストコースなどで行うことが多いが、今回は東京から長野・車山のビーナスライン付近を目指すことになった。スノーやアイス路面だけではなく、ドライの街中や高速道路も走って「トータルでの性能」を評価するのが狙いだ。 肝心の雪はと言うと、今シーズンの北海道は気温が高く、わざわざ訪れてもコンディションが悪くて満足いくテストが行えないことが多かったが(取材は2015年3月に実施)、運のいいことに長野は豪雪。適度にアイスバーンもあって、テストには絶好のコンディションだった。 特殊な日本の雪道にアジャスト試したのは、2014年7月に発売されたピレリの「ICE ASIMMETRICO(アイス・アシンメトリコ」。軽自動車からSUVまで幅広いレンジに対応している最新モデルであり、アジア・パシフィック市場向けに開発されている。日本の冬道はタイヤにとって世界一厳しいと言われるが、それに対応しているのだ。 日本の雪は湿気が多く、なおかつ気温が高めなのでアイスバーンになりやすいのが特徴で、とにかく滑りやすい。たとえば北欧などは気温がぐっと低いので雪が締まってグリップが高い傾向にあるが、それとはまるで違う性能が求められるのだ。 そこを踏まえてICE ASIMMETRICOも、まずはアイス性能を重視している。開発テストは日本でも行い、2013-2014シーズンには日本の市場要求に適合しているかを確認するためテスト的な販売も行い、ポジティブな結果を得ているという。 重量級ミニバンでの高速走行は?東京の街をスタートし、中央道で長野を目指す。アルファードは、ミニバン用タイヤのテストなどで頻繁に使われるが、背高で重量級なためタイヤの善し悪しがよくわかるモデルだ。ICE ASIMMETRICOはとくにミニバン専用と謳っているわけではないが、スタッドレスタイヤと思えないぐらいにシッカリしていた。 ネーミングの「ASIMMETRICO」とは「非対称」のことで、Pゼロ・シリーズなどでお馴染みの非対称パターンを採用。ピレリのDNAは「パワーとコントロール」であり、たとえスタッドレスタイヤであってもスポーティ性能に妥協していないというが、ドライ路面ではこの非対称パターンがよく効いている。 アウト側のブロックは比較的大きめ。構造的にも剛性感があってアルファードのボディをフラつかせることなく、優れた高速直進安定性をみせる。ステアリング操作に対しての反応も素直なので、高速道路でちょっと早めにレーンチェンジしてみても遅れがなく、その後のリアの収まりもいい。 ノイズや乗り心地といった快適性の面でもサマータイヤとさほど変わらないレベルにあったが、これは必要に応じて接地形状を調整する「エヴォキャビティ」と呼ぶテクノロジーによって実現しているそうだ。 乱暴なアクセル操作に対しては?中央道・諏訪IC周辺は除雪が行き届いていたのでドライ路面だったが、ビーナスラインに向けて山を登りはじめると想像以上に雪が多かった。 今回のアルファードは4WDではなくFFだったのでちょっと不安もあったが、ICE ASIMMETRICOは力強く雪を掻いて登っていく。トレッド面に斜めに入れられた「スノートラップ」と呼ばれるエッジポケットがあり、これが雪を踏み固めて抵抗を増やし、トラクションを向上させているのだ。 試しに安全な場所でアクセルを乱暴に踏みつけてみると、さすがにFFなのでホイールスピンを誘発したりもするが、グリップは急激に落ちず、懸命に路面を引っ掻いていることがわかる。これは細かなサイプがエッジ効果を発揮しているからだが、ICE ASIMMETRICOでは、新品時から効果を発揮するよう「インスタントグリップ」と呼ぶ浅溝を表面に設けている。 ツルツルバーンでの挙動は?山の中の交差点は、かなり滑りやすいアイス路面になっていた。通過するクルマがブレーキングするので表面の雪が吹き飛ばされ、気温上昇でいったん溶けた雪が凍った路面が露出し、なおかつクルマ達に磨かれまくっているからツルツルになっているのだ。 そこでのICE ASIMMETRICOは、トレッド面がしっかりと路面を捉え、高いブレーキ能力を示した。ツルツルだからABSが介入することもあるが、だらしなく滑って制動距離が延びていく感覚はなく、グッグッと減速していく安心感がある。 アイス路面ではゴムの粘着力とエッジ効果、そして接地面積の大きさがモノを言う。ゴムについては、ピレリ独自のレジン(樹脂系)とシリカを化合させた「デュラ・フレキシィコンパウンド」を採用することで低温域でも柔軟性を発揮する。 また、波形状の「3Dバタフライサイプ」は、ブロックの交互作用を増し、エッジ部の接地圧を高めて接地面積を拡大するという。トレッドパターン的にも、アイス路面に効く中央部は接地面積が大きくていかにもグリップしそうだ。 ピレリならではのスポーティ性もICE ASIMMETRICOは、アイス路面で想像以上の安心感をみせてくれた。日本の厳しい冬道にしっかり対応しているのだ。 その上で、ピレリならではのスポーティ性がドライ路面で発揮されている点が、独自の特徴だろう。ハッチバックやセダン、ワゴンなどだったら、気持ちのいい走りが楽しめるだろうし、ミニバンやSUVといった背高・高重心なモデルでは、高速移動での安心感が高まる。 スタッドレスタイヤではあるが、タイヤの基本である「運動性能」をしっかり磨いてあるので、様々な車種に対応できるはず。マッチングの幅の広さもICE ASIMMETRICOの持ち味なのだ。 サイズラインナップラジアル:155/65R13~255/40R18XL(37サイズ) |
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