230psのTTとロードスター、286psのTTSを導入それまで誰もが世に問うことのなかったまさに”独創”という言葉が相応しいスタイリングで、世界に衝撃を与えた初代モデルが登場してから17年。そんなタイミングで、再度装いも新たになった3代目のアウディTTが、いよいよ日本の道を走り始めた。 日本仕様として導入される新型は、クーペとロードスターという2タイプのボディに、最高230psを発するエンジンを搭載するTTと、同じく286psを発するTTSというこちらも2グレードの展開。ただし、日本ではTTSはクーペのみとされ、FWD仕様は最もベーシックなTTクーペのみに設定。他はすべて、クワトロと称するアウディ得意の4WD仕様とされている。 ヨーロッパ市場には全モデルにMTが用意されるものの、日本に導入されるのは6速Sトロニックを謳うDCTを搭載したバージョンのみ。ちょっとばかり複雑だが、これがこのほど日本へと上陸なった、新型TTシリーズのバリエーション展開ということになる。 バーチャルコックピットをはじめ、初採用のテクノロジーが満載初代モデルはルックスこそが最大の訴求ポイントで、2代目は本格スポーツカーに相応しい運動性能を加味した点が見どころ。そして3代目では、最新モデルならではのハイテク機能が最大のウリ…と、試乗会のプレゼンテーションでは、歴代モデルの主たる狙いどころが説明された。 モジュラー・プラットフォーム「MQB」を土台に、アルミ材も交えて軽量化にフォーカスした専用ボディや、LEDの特性を活かしたマトリクスLEDヘッドライト、最新のテレマティクス・システムや様々な最新ドライブアシスト・システム等々と、なるほど新型にはTTにとって初採用の様々なテクノロジーが満載だ。 それを象徴するのがバーチャルコックピット。スピードやタコメーターはもとより、ナビゲーション・マップや各種のテレマティクス表示など、およそあらゆる視覚情報を一手に担うのは、ドライバー前面のクラスター内にレイアウトされた、12.3インチの高解像度液晶ディスプレイだ。 初めて出会うと、一体どう扱えばよいのかと戸惑うのは事実。が、実は基本的な操作はシンプルで、なかなか扱いやすい実用装備であることにすぐ気が付いた。そんなディスプレイはパッセンジャー側からも目視可能。これが、中央部にスイッチをレイアウトした3連丸型の空調ヴェゼルが目を引く、シンプルで機能的なセンターディスプレイ・レスのダッシュボード・デザインを実現するのに大きく貢献しているのだ。 初代モデルの衝撃度には及んでいないそんな新型TTのルックスは、これまで見られなかった直線基調のラインと、プレス技術の高さを誇示するシャープな折り目が印象的な各部のパネルで、最新アウディ車に相応しい品質感を見事に表現している。 一方で、「初代モデルほどの衝撃は感じないナ」と、そんな印象を持つ人も少なくないのではなかろうか。実際、こんなことを書いている筆者自身も、「モデルチェンジごとにインパクトが薄れて行くナ…」と、実はそう感じるうちのひとりだ。各社があの手この手でスタイリッシュなルックスを競い合う、2ドア・クーペのカテゴリー。その中で「まだこんな手があったのか!」という衝撃度は、新型は初代モデルのそれには及んでいない。 もちろん、インパクトが強ければ良いというものではないだろう。けれども、まさにモーターショーの舞台からそのまま飛び出して来たかのような初代の姿に衝撃を受け、その際のひと目惚れで一時は購入の決断まで下したことを思い返すと、新型のルックスには「思いのほかにコンサバだな」と心残りを抱いてしまうのも事実。 もちろん、”TTらしさ”と”斬新さ”を両立させるのは並大抵のことではないはず。それを承知の上でも、世界を熱狂させたあの初代モデルに対する興奮を、もう一度味わわせて欲しいと思うのだ。 TTロードスターで新型ボディの強固さを実感一方で新型の進化ぶりは、まずはそのボディにこそ代表される、というのはロードスターで走り始めてすぐに実感した事柄だ。ルーフを持たないオープンボディが、剛性面で大きなハンディキャップを負うのは当然。が、新型ロードスターのボディのしっかり感は、従来型を大きく凌ぐだけでなく、多くの場面でクーペに匹敵する印象を味わわせてくれたからだ。 50km/h以下であれば、走行中でも約10秒で開閉可能なルーフを開いても閉じても、そうした好印象はほとんど変わりナシ。ルームミラーに映し出される後方の像はぶれることなく、フロント・ウインドウフレームの振動、すなわちいわゆる”スカットル・シェイク”を感じることもなく、不快な揺れは即座に減衰されることに新型のボディの強固さを実感させられる。 加えれば、ルーフ閉じの状態で静粛性が大いに向上していることにも感心させられた。新型のトップ部分は厚さが15mmにも及ぶ5層構造のアイテムで、特に風切り音を含む周波数帯でノイズレベルが大幅に下げられたのだという。 いずれにしても、3代目となったTTのハードウェア上の見どころは、まずはこうしてレベルアップされたボディにこそあるはず。そんな直感は、クーペ・モデルの走りの質感が大きく向上したことで、いよいよ確信へと変わることになった。 スポーツカー濃度がより高く感じられるTTクーペロードスターと同様、最高230psを発する心臓を6速DCTと組み合わせ、4WDシャシーに搭載したのがTTクーペ。しかし、その走りのテイストはロードスター以上に軽快で、かつスポーツカー濃度がより高く感じられるものだった。 それもそのはずで、実は両者の重量差はちょうど100kg。加えて、当然クーペボディの方がさらに高剛性である理屈。オープンエア・モータリングの爽快感を失う代わりに、さらに高度な運動性能を手に入れたのがクーペ・モデル。ここではそんな表現を用いても良さそうだ。 上を見れば、さらに高度なスポーツ性をアピールするTTSクーペが控えはするものの、ベースグレードのTTクーペも0-100km/h加速を5.3秒でクリアするというのだから、実はそのスピード性能も相当なものなのだ。 中でも感銘を受けたのが、エンジンが低回転領域にある際のトルク感の強さ。特に、1000rpm台でアクセルペダルを踏み加えた際のトルクのツキの良さは印象的で、それゆえ常用シーンでは使用するエンジン回転数が全般に低く抑えられ、結果として静粛性にも優れる…と、ハナシは繋がっていく。 ピュアなスポーツモデルらしさを演じるTTSクーペそんなベースグレードからTTSクーペに乗り換えると、こちらでは絶対的な運動性能がさらなる高みへと引き上げられると同時に、様々な演出によりピュアスポーツカーらしさが巧みに表現されていることも印象に残った。 同じ2リッター4気筒ながら、強化されたピストンやコンロッド、さらにはブースト圧が高められたターボチャージャーなどの専用アイテムを採用し、最高出力が50ps以上も高められたTTSの心臓は、選択するドライブモードによってはあろうことか、アウディ車のイメージリーダーであるR8に搭載されたV10エンジンもかくや、という派手で逞しいサウンドを楽しませてくれるのだ。 レッドラインの6700rpmまでパワフルに吹けきるエンジンが発するそんなサウンドは、実は電気的に強調されたもの。やり方の是非はともかく、こうした演出がまたベースグレードとは別の世界が存在することを、分かりやすく表現していることは確かだ。 電子制御式の可変減衰力ダンパー「マグネティックライド」を用いたサスペンションは、基本的にはベースグレードよりもやや硬い一方で減衰性能が高いため、人によっては「こちらの方が乗り心地に優れる」とも評価をしそう。コーナリング時のロールはより抑制され、大容量化されたブレーキシステムがより強靭な減速感を生み出す…と、全般によりピュアなスポーツモデルらしさが演じられることになっている。 TTロードスター、TTクーペ、さらにはTTSクーペと、そのテイストはまさに3車3様。17年と3世代を経てますます演技力が高まった、そんな新型シリーズの誕生なのだ。 スペック例【 TTクーペ 2.0 TFSI クワトロ 】 【 TTSクーペ 2.0 TFSI クワトロ 】 |
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