中国製と他国製BEVの脅威的な価格差久しぶりに訪れたインフレ時代に、日本国民は右往左往している状況だ。しかし、そんな世の中の流れをよそに、驚くほどの低価格で市場を揺さぶっているのが、BYDをはじめとする中国製BEV(バッテリー電気自動車)だ。 今回は「なぜ中国製BEVはそこまで安く売れるのか?」その背景を探ってみたい。 まず、どれほど安いのかをBYDとライバル車で比較してみよう。 コンパクトSUVクラスでは、BYD「アット3(ATTO 3)」が418万円から。一方、テスラ「モデルY」は558.7万円から、トヨタ「bZ4X」は550万円からと、BYDのほうが100万円以上安い。 「アット3はボディサイズが小さいからでは?」という声もあるが、ひと回り大きい「シーライオン7(SEALION 7)」でも495万円からで、ライバルより約1割安い。 さらに驚くべきは、中国本国での販売価格だ。アット3は昨年春の時点で11万9800元(約250万円)から、シーライオン7も21万9800元(約450万円)と、日本価格よりもかなり低い。 参考までに、国産BEVの廉価モデルである日産「サクラ」ですら259万9300円からで、中国国内のアット3より高い。 この差は、まさに異常な安さといえる。 <次のページへ続く> #BYD #アット3 #BEV #テスラ #トヨタ 赤字覚悟の激安BEVが“中国の不況”を輸出するでは、なぜこれほどまでに安い価格を実現できるのか。理由のひとつは人件費の差だが、中国都市部の賃金水準はすでに先進国並みで、人件費だけでは説明できない。 そこで浮かび上がるのが、中国国内の深刻なデフレ圧力と需要低迷の影響である。 少子化に伴う人口減少が始まり、日本のように長期デフレ不況に突入していると見られる中国では、消費者物価が前年比マイナスとなる月も多い。 デフレが進めばモノが売れなくなる。しかし中国は国を挙げてBEV生産体制を拡大し、供給が過剰になった結果、在庫が積み上がった。そのため、中国国内より高く売れる海外市場に向け、赤字覚悟で在庫を処分しているのだ。 こうした状況は、国際貿易で「不当廉売」と呼ばれるダンピングに近い。WTO(世界貿易機関)では、ダンピングに対して関税で輸入価格を引き上げるアンチダンピング措置を認めている。 日本も、このままでは安価な中国製BEVに市場を奪われ、国内メーカーが巨額を投じたBEV開発が水泡に帰し、再投資が不可能になる恐れがある。 “不況を輸出”され、デフレに逆戻りする前に、対抗処置としての関税を早急に検討する必要がある。 消費者もまた、「安ければいい」という考えから一歩踏み込み、国内産業保護や適正価格の重要性について意識を持つべき時期に来ている。 (終わり) (写真:トヨタ、日産、BYD、テスラ) |
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