オンロードを重視した設計SUV用のタイヤを選ぶ時に、重視する性能とは一体どの辺りだろうか。昔だったら何は無くともまずはオフロード性能となったのかもしれないが、今やとてもポピュラーなSUVである。求められる要件も、間違いなく変わってきている。 おそらくユーザーの誰もがオフロードに行くわけではなく、大抵は行ってもキャンプ場や河原ぐらいだろう。となれば、そうした場面で困らない程度の性能は欲しいけれど、必ずしも最重点項目というわけではないはず。やはり、もっとも大切なのは普段使いにおける快適性と、走りの質ということになる。 今回試したピレリの「スコーピオン・ヴェルデ」は、まさにそんな昨今のSUVを取り巻く状況に、ぴたりフォーカスを合わせて生み出されたタイヤだ。SUV用に多いオールシーズン仕様ではなく、オンロードを重視したサマータイヤとして開発されているのが、その特徴である。 「タイヤが丸い」をリアルに実感できるピレリが具現化するSUVのためのタイヤ性能、特に普段使いでのパフォーマンスはどれほどのものなのか。今回は、フォレスター 2.0XT EyeSightに組み合わせて、それを試してみることにした。シンメトリカルAWDによる高い走破性、280psを発生するボクサー・ターボエンジンのパワフルさを個性とするフォレスター。タイヤサイズは標準装着と同じ225/55R18 98Vをチョイスした。 高めのヒップポイントを持つシートに乗り込み、エンジンを始動させたら、まずはゆっくり感触を確かめるように走り出す。改めて感じたのは「タイヤが丸い」ということだ。何を当たり前のことを言っているのかと思われそうだが、つまりは滑らかに、よく転がっているなとリアルに実感できるということである。 その要因として、ひとつにはその真円度の高さが挙げられるだろう。その上で、「スコーピオン・ヴェルデ」はしなやかさも同時に感じさせる。ザラついた路面や、段差などを乗り越える時に、タイヤがしなやかにたわんで入力を受け止め、そしていなしていく感覚。実はSUVのタイヤでは、ここが難しい。 何しろSUVは、車重が重くなる傾向にあり、また使われ方としてもフル乗車にフル積載といった大きな負荷を当然想定しなければならない。つまり、しっかりとした剛性を持たせることは必須なのだ。 ピレリの巧いところは、まさにこの辺りのバランス。ショルダー部のカチッとした剛性を確保しながら、トレッドは柔らかに路面からの入力を受け止める。それこそF1を頂点に様々なハイパフォーマンスタイヤを手掛け、そして蓄積してきた知見とノウハウは、こうしたところにも活きているのだろう。 「走る・曲がる・止まる」が実に滑らかコーナリングにしても、やはり滑らかと評したくなる。ブレーキをかけて、足を離して、ステアリングを切り込んでいく。減速して、姿勢を戻して、旋回していくその一連の流れが滑らかで、繋がりに唐突さが一切無いのだ。しなやかだけど、必要なところはカッチリとしている。別にハイスピード領域での話には限らず、それこそ街中のカーブをひとつ曲がるだけでも、おかげでとても扱いやすいのだ。 同じことは加減速にも言える。前が空いたところで280psを炸裂させるべくアクセルをグイッと踏み込んでも、頼もしくパワーを受け止めて、確かな推進力を味わわせてくれるし、ブレーキング時にもヨレ感などは一切無縁。思わず脳裏には「SUVらしからぬ」なんて言葉が浮かんでしまった。 この好印象には、優れた静粛性もひと役買っている。騒音のレベルが低いだけでなく、路面が変化しても音量や音質が大きく変わることがないのがポイントだ。 路面状況が、それこそ鏡のような路面に舗装の荒れた路面、あるいは晴天時と雨天時といった風に変化しても、音量や音質に大きな波がなければ、乗員は滑らかに走っているという印象を受ける。乗り心地まで、上質に感じられるものなのである。 スニーカーを履き替えた時のような歓び「スコーピオン・ヴェルデ」を履かせたフォレスター、こうして試しているうちに、もっと走りたい、もう少し遠くに行ってみたいという気持ちになってきてしまった。率直に言えば、クルマの走りそれ自体がワンランク上質になったという感じ。そう表現しても、決して誇大ではないと思えるぐらいの、好印象なのだ。 もちろん、今のタイヤだけに、追求されているのは、そうした走りの質に関するところばかりではない。たとえば燃費については、重量を低減し、転がり抵抗を抑えるなどして向上が図られており、ウェット性能やノイズ性能についても従来品よりさらに改善されている。 また耐摩耗性への配慮も注目したい。それは単に減らないという意味ではなく、減っても所定の性能をしっかりキープし続けるという意味において、である。 グリップ力のような明確な指標があるスポーツタイヤなどと較べると、SUVのためのタイヤ選びは、確かに難しい。そんな中、冒頭に記したように、あくまで普段使いの性能こそが第一と考える、今の多くのSUVユーザーにとって、この「スコーピオン・ヴェルデ」は満足度の高い選択になるのではないかと思う。 とりわけ、走りの性能はもちろん、その質の向上への貢献ぶりは注目に値する。乗り慣れたクルマの走りが、一段上質に感じられる。まるでスニーカーを履き替えて走り出した時のような歓び、きっと味わえるはずだ。 スペックピレリ スコーピオン・ヴェルデ SUVおよびクロスオーバー用タイヤ |
GMT+9, 2025-6-25 21:20 , Processed in 0.053635 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .