ホンダは軽BEVの市場ニーズを捉えていない?ホンダのBEV(電気自動車)戦略について、SNSなどでは疑問の声も上がっているようです。とくに日本向けに展開する軽BEVについて「市場ニーズを捉えていない」といった指摘を目にすることがあります。 具体的にいえば「なぜ『N-BOX』の電気自動車バージョンを出さないんだ」という声が目立ちます。 間もなく登場する「N-ONE e:」にしろ、ホンダの軽BEV第一弾である商用モデルの「N-VAN e:」にしても、ホンダの軽自動車ラインナップにおいて主力モデルではありません。 本気で軽自動車にBEVを普及させたいならば、「スライドドアのスーパーハイトワゴンとして日本一売れているN-BOXにこそ電気自動車バージョンを出すべきだ!」という指摘は、しごくまっとうに思えます。 ホンダの軽自動車販売データを見れば、「N-ONE」がニッチモデルであることは明確です。参考までに2025年1月~7月までの販売実績 を並べてみましょう。 ●N-BOX:12万149台 言い換えると、「毎月1万台以上売れているのがN-BOXで、千台規模がN-WGN。そしてN-ONEは数百台のペースでしか売れていない」といえます。 このように圧倒的なN-BOX依存の販売実績からすると、軽自動車のメインストリームであるN-BOXにBEVバージョンを求めるのが自然な大衆心理といえるでしょう。 ただし、ホンダの戦略についても理解できる部分はあります。 <次のページへ続く> #ホンダ #軽自動車 #BEV #N-BOX # N-ONE ベースに「N-ONE」を選ぶのはロジカル的には正しいが…最初の軽BEVとして商用車のN-VAN e:から展開したのは、軽BEVの最初のターゲットが“運送会社”であることを示しています。 現時点でBEVはエンジン車より高価になってしまいます。そんなBEVを積極的に購入しようというインセンティブが湧くのは、環境対応が求められるそれなりに規模の大きな運送会社に限られます。そうしたユーザーをターゲットにした商品開発(≒商用バン)は妥当といえます。 軽BEVはボディが小さいという物理的な制限、軽自動車として納得感のある価格といった要素を考えると、バッテリー容量はあまり大きくできず、物量作戦で航続距離を伸ばすのは難しい面があります。 電池容量を変えず航続距離を伸ばすのに重要なのは走行抵抗です。ホンダの軽乗用ラインナップで最も全高が低い(≒空気抵抗が小さい)のはN-ONEというわけです。 初めてBEVを購入するユーザーにとって航続距離は非常に気になる性能でしょうから、その点で有利なN-ONEを軽BEVのベースに選ぶのは、ロジカルに見れば正しい判断といえるかもしれません。 はたして、軽自動車ユーザーは少しでも航続距離を稼いでほしいと思っているでしょうか。平均的な軽自動車の使われ方を見ると、ホンダの判断は保守的すぎると、筆者は考えます。 <次のページへ続く> 軽自動車ユーザーの3人に1人は月に200kmも走らない?軽自動車の平均的ユーザーは月間で500km以下しか走らないという調査結果があります 。さらにいえば、3人に1人は月に200kmも走らないといいます。おそらく、月間200km以下というのは、セカンドカーとして軽自動車を利用しているユーザーが大半でしょう。 N-VAN e:の一充電走行距離は245kmを誇り、N-ONE e:は270km以上を目指しているといいます。 200kmという軽自動車ユーザーの3人に1人が求める航続性能は、ホンダの軽BEVアーキテクチャーであれば「月に一度、満充電にすれば対応できる」ほど余裕があるのです。 ロングドライブをしない限り、2週間に一度のペースで満充電にすれば、バッテリー残量を気にせずエンジン車の軽自動車と同様に運用できるともいえます。 軽自動車をセカンドカーとして利用している世帯というのは、自宅に広い駐車スペースのある戸建てに住んでいるケースが多いでしょう。そうであれば、3kW級の安価な普通充電設備を用意することも難しくないはずです。 そのスペックでも10時間弱つないでおけば満充電にすることが可能です。 <次のページへ続く> 多くの自動車ファンが望む軽BEVの本命は「N-BOX e:」前述したように、ホンダ初の軽乗用BEVとして、航続距離を稼ぎやすい低全高ボディのN-ONEをベースに選ぶというのはロジカルとしては正しい判断といえます。 とはいえ、実際には2週間ごとの普通充電で済むのであれば、航続距離にこだわらず、ユーザーが本当に欲しいと思うボディをベースにすべきでしょう。 むしろ「日本一売れているN-BOXに電気自動車バージョンが登場!」といったほうが、大衆へのインパクトもあり、カーボンニュートラルの実現にはBEVが本命というホンダの本気が伝わってくるのは確実です。 だからこそ、冒頭で記したように多くの自動車ファンは「N-BOX e:こそ本命」と考えており、そこに踏み込まないホンダに歯がゆさを感じているのかもしれません。 (終わり) (写真:ホンダ) |
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