メルセデス好調の要因は?昨年まで、日本における輸入車のブランド別販売台数は15年連続でフォルクスワーゲンが1位を堅持してきたが、今年2015年上半期はメルセデス・ベンツが前年比19%増でライバルをリードし、トップの座についているという。その日本における現在のメルセデス好調の要因となっているのが、前輪駆動系の「戦略モデル」であるらしい。 その「戦略モデル」を構成しているのは、Aクラス、Bクラス、AクラスのSUV版といえるGLA、Aクラスベースの4ドアクーペといっていいCLAの4モデルで、それらをトータルした去年の販売台数は、日本におけるメルセデス全体の37%に達していたとのこと。 そこに新たに加わったのが、今年のジュネーブショーでワールドプレミアされたCLAベースのステーションワゴンといえるシューティングブレークで、その想定顧客層は、Bセグメント輸入車ステーションワゴンのオーナー、国産SUVオーナー、それに現行CクラスよりコンパクトなW202/203/204型Cクラスワゴンオーナーなど、であるという。 ファミリーカーとしても使える戦略モデルに新たに加わった「CLAシューティングブレーク」の試乗会が7月頭、湘南T-SITEをベースに開かれたが、そこで生憎の雨のなかで乗ったのは以下の2車種。ひとつがベーシックな「CLA180シューティングブレーク」にスポーティな装備を施した「Sports」で、車両本体価格は428万円。もうひとつが「メルセデス-AMG CLA45 4MATIC シューティングブレーク Orange Art Edition」というトップモデルで、ベーシックなCLA180シューティングブレーク=360万円の2.4倍もする、862万円のプライスタグが付けられたクルマだ。 まずは前者、CLA180シューティングブレークSportsについて書くと、運転席に収まってルームミラーに目をやったときの印象は、天井がかなり後ろまで続き、その後端に通常のワゴンよりも小さめのリアウィンドウがある、という感じ。セダンでもクーペでもワゴンでもない、独特の室内空間なのだ。ちなみに前席はヘッドレスト一体型のスポーティな形状で、Sportsの場合、表皮はブラックにレッドステッチのレザーDINAMICA仕様になる。 リアシートはバックレストがやや起き気味なのが少し気になったものの、ヘッドルーム、レッグルームともに、身長170cmの当方にも不足はなかったから、スタイリッシュ系ながらファミリーカーとしても使えるだろうと思う。ラゲッジスペースは5人乗り状態でVDA方式495リッター、後席バックレストを倒せば1354リッターの容量を持つという。 シャシーの洗練度に進化を感じたCLA180シューティングブレークのパワーユニットは1.6リッター直4直噴ターボで、122psのパワーと200Nmのトルクを発生、7段DCTと組み合わせられて前輪を駆動する。対する車重はSportsで1500kgと決して軽くはないが、走り出してみるとパフォーマンスに不足を感じることはない。軽く踏めばそれなりに大人しく、ちょっと深めに踏み込めばそれなりに活発に反応して、シューティングブレークボディをスムーズに加速させていく。 だから、根っからのハイパフォーマンス好きでなければ、ベーシックなCLA180でも動力性能に不満を持つことはあるまいと思われたが、実はこのクルマでそれより感心したのはシャシーの洗練度だった。CLAの前輪駆動系シャシーは、もとはといえば2011年秋に2代目Bクラスとしてデビューした、MFAと呼ばれるプラットフォームを基本としている。 その2代目Bクラスの初期型は、舗装の継ぎ目などでタイヤからのショックをダイレクトにボディに伝えてくるなど、メルセデスらしい剛性感と洗練を実感しにくいクルマだった。MFAプラットフォームはやがて現行Aクラスにも応用され、年を経るごとに洗練の度合いを増して来たが、その最新バージョンといえるCLAシューティングブレークでは、Bクラス初期型と基本は同じプラットフォームとは信じられないほどの進化を感じ取れた。 具体的にいうと、乗り心地のよさが端的にそれを示している。試乗したSportsは標準の17 インチに対して18インチ径のタイヤを装着しているが、それにもかかわらずバネ下の重さを意識させるような不快な振動は感じられず、適度にソフトでスムーズな乗り心地を提供してくれる。これなら普段使いのためのクルマとして不満なく乗れる、と思った。 驚きに満ちた「メルセデス-AMG」の乗り味しかし、最新のMFAプラットフォームの実力を知る、という意味でもっと驚いたのはもう一台の方、メルセデス-AMG CLA45 4MATIC シューティングブレーク Orange Art Editionだった。この長いネーミングを持つシリーズのトップモデルは前記のように、862万円というプライスタグのついた高価格車だが、そのドライビング感覚は驚きに満ちていた。 エクステリア同様、ブラックをベースにオレンジ色を随所にアレンジしたインテリアは、ややデザイン過多な印象はあるものの上質にしてスポーティ。レーシングバケットを彷彿とさせるディテールを持つAMGパフォーマンスシートの座り心地もタイトで、走り屋にはなかなか心地よい。そこに体をあずけ、これも専用デザインのステアリングを握って走り出すと、CLA45 4MATICは「AMG」の3文字に恥じない乗り味を振舞ってくれた。 このクルマ、タイヤは19インチのダンロップ・スポーツMAXXを履くが、乗り心地は締まってはいるものの粗さや無用な硬さを感じさせず、むしろある種の柔らかささえ意識させる質の高いものだった。AMGの手が入って一段と剛性が高められたボディに、上質なダンパーが組み合わせられているのを想像させる乗り味だが、これがあのMFAプラットフォームを持つクルマとは信じられないほど、上質なスポーツテイストに仕立てられているのだ。 湘南を舞台とした今回の試乗会にはワインディングロードがないため、AMGの4WDシャシーがいかなるハンドリングを示すかを味わえなかったのは残念だが、やや重めながらしっとりしたステアフィールなどから、それが上々なものであろうことは想像できた。 決して高回転型ではないが…このCLA45、エンジンは基本的にCLA250と同じ2リッター直4直噴ターボを搭載するが、AMGの手によってパワーは360psに、トルクは450Nmにチューンされ、基本は他のモデルと同じ7段DCTと組み合わせられて、1660kgのボディを走らせる。そのパフォーマンスはどうだったかというと、これも様々な意味でハイチューンモデルらしいものだった。 まずトランスミッションをデフォルトのコンフォートモードにしたまま、大人しく踏んで走り出すと、2000rpm以下の極低回転のトルクが細いのを実感させるかのように、発進が若干もたつく印象をうける。でも、それがまた高性能車らしくて悪くなかったりする。 とはいえ、もしもそれが気になるなら、トランスミッションをスポーツモードに切り替えるといい。するとスロットルレスポンスも素早くなって、踏み込むと同時に回転はトルクバンドに突入するから、いかにもAMGらしい俊敏な加速が即座に手に入るようになる。 このエンジン、ターボゆえに6200rpmからレッドゾーンと決して高回転型ではないが、そこに至るまでのレスポンスと回転感もノーマルとは別物のタイトさがあり、ハイチューンユニットであることを実感させてくれる。ここにもAMGのご利益が感じられるわけだ。 多様性を持ったスタイリッシュな1台AMGが手掛けたこのCLA45 4MATIC シューティングブレーク Orange Art Edition、862万円のプライスに値するかどうかは買い手の考え方次第だと思うが、あのMFAプラットフォームをベースにしてこれだけ上質な乗り味のスポーツモデルを生み出したメルセデスとAMGのポテンシャルに、大いに感心させられたのは間違いない。 というわけでCLAシューティングブレーク、それなりの多様性を持った、しかも適度にスタイリッシュなこのサイズのクルマを足にしたいと思っているなら、候補とするに値するクルマだろうと思う。プライスゾーンが360万円から862万円と広く、予算に応じて様々な仕様やグレードを選択できるのも、このクルマの強みのひとつといえるかもしれない。 スペック【 CLA180 シューティングブレーク スポーツ 】 スペック【 メルセデス-AMG CLA 45 4MATIC シューティングブレーク オレンジアートエディション 】 |
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