「エアレースX」第2戦に向けLPARが秘密兵器を投入4月29日に2025年シーズンが開幕した、世界最高峰の空のモータースポーツ「エアレースX」。 「レッドブル・エアレース」の流れを受け継ぐかたちで2024年よりスタートしたエアレースXは、世界を転戦するのではなく、バーチャルとリアルを融合したフォーマットで争われるのが特徴だ。 指定期間内に各チームが自身の拠点で予選、準々決勝、準決勝、決勝の4種類のフライトを行い、そのフライトデータを大会側へと提出しタイムを競う仕組みで、全員のフライトデータを集計し、後日大会本部が予選、決勝の模様をエアレースXの公式YouTube上で配信する。 昨シーズン初代王者に輝いた「レクサス・パスファインダー・エアレーシング(LPAR)」所属の室屋義秀選手は、初戦で惜しくも予選・決勝ともに2位に終わり、現在シリーズランキングでも2位に位置する。シリーズを占う上で絶対に負けられない第2戦を迎えるにあたり、LPARは大規模な空力アップデートを投入してきた。 「タイムも上がってこれで有利に戦える。シリーズチャンピオン獲得が目標なので、しっかりとポイントを積み重ねたい。最終戦に向けて、ここで優勝をしっかりと取っておきたい(室屋選手)」 今回LPARは、翼全体の抵抗が減るという新形状のカーボン製ウイングレット(翼端版)を投入。9ヶ月ほどをかけレクサスが作り上げた渾身の作だそうだ。 \ エアレースX Rd.1 決勝のダイジェストはこちら / ◎あわせて読みたい: トヨタ元町工場のカーボン技術レクサスと室屋選手は、資金面だけサポートするスポンサー契約ではなく、パートナーとしてお互いに様々な技術協力を行っている。 今回投入されたウイングレットは、空力のスペシャリストでもあるLPARのテクニカルコーディネーターを務める中江雄亮氏(レクサス統括部 製品企画主幹)を中心に、レクサスの空力チームが設計・開発を行いトヨタの元町工場で作られる。 元町工場のカーボン技術は、レクサス「LFA」を作る過程で育まれたもの。レクサスの最高峰のモデルの技術が、いまや空の世界にまで広がっているのである。 「レスサスのチームが、捻りの角度とか色んなパターンでシミュレーションをして風洞実験を繰り返し作ってくれた。かなり軽くできていて効果も非常に高い。(空力)効率が上がると乗りにくくなるパターンが多いのに、乗りやすさは変わらないか、むしろ少し安定する方向なので、設計として極めて優秀(室屋選手)」 元々は第3戦での投入を予定していたそうだが、初戦を落とし、なんとか第2戦への投入を間に合わせたそうだ。さらに、中江氏のほかにも様々なレクサスのメンバーが室屋選手をバックアップする。 ◎あわせて読みたい: 室屋選手を支えるレクサスの「匠」その一人が「匠」の肩書きをもつ尾崎修一氏だ。尾崎氏は、そのクルマのデザインや機能が「レクサスの世界観を体現しているか」を評価しデザイナーやエンジニアに伝える「レクサスらしさ」の番人である。 もともと機体の操縦桿の開発からスタートした室屋選手と尾崎氏の関わり合いだが、尾崎氏によると、いまでは室屋選手とレクサスの取り組みはより広範囲に渡っているという。 「マスタードライバーの豊田会長が『素の自分に戻れる空間が大事』と言うように、いま我々はそこを目指してクルマづくりを行なっている。『素の自分とは何か』をもっと定量的に出せないかということで、脳波や生体反応などを解析をして段々と(素の自分とは何かが)わかってきた。 室屋選手はレースに入る前に集中力を高めるためのルーティーンがあるのだが、室屋選手を間近で見ていると、メンタルの強さやコントロール能力がすごく高い。これはいい機会だということで、レース前の脳の状態を調べてみると、普通の人から取ったデータでは出ないような、我々が仮説で立てている『理想の素の自分』の脳の状態とすごく雰囲気が似た脳波が出てきた(尾崎氏)」 いわゆる、アスリートが「ゾーンに入る」という言葉があるが、室屋選手はフライト前は近寄りがたいほどのオーラを発し、ハンガー内もピンと張り詰めた空気が漂う。尾崎氏曰く、「ゾーン」というのは極度に集中力を高めながらもリラックスした状態のようなイメージだという。 400km/hという極限の状態で戦うパイロットには、それ相応の高い集中力でフライトをしているのだが、尾崎氏らは、ドライバーが集中しながらもリラックスできるような社内環境を、室屋選手との研究も生かして作っていくそうだ。 「室屋選手のメンタルが(クルマづくりの)参考になる。(乗員が)安全に楽しくリラックスして運転できる環境づくりができるクルマにまた一歩近づいている(尾崎氏)」 そんなレクサスと室屋選手の戦いの模様は、7月5日(土)22時に予選、7月6日(日)22時に決勝が配信される。取材日、フライトを終えた室屋選手の表情は、飛び立つ前の真剣な表情とはうって変わって明るかった。 「僕自身のコンディションもいい。レースに向けてちゃんと準備してこれているので、ベストな状態でレースに臨めている(室屋選手)」 アップデートされた機体とともに、室屋選手がどんな戦いを繰り広げるか注目である。 (終わり) ◎あわせて読みたい: |
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