MQBが可能にした伸びやかなプロポーション日本ではあまり目立たない存在のパサートだが、一昨年の世界の販売台数ではゴルフを上回り、フォルクスワーゲンで最量販モデルだったという。それだけ同社にとって重要なモデルであり、8代目となる新型も全方位的に気合いが入った開発がなされている。 フォルクスワーゲンのデザインはシンプル&クリーンがテーマとなっており、いたずらに華美に着飾ることをよしとしていないが、新型パサートはあいかわらず抑制的でありながらも、従来にはなかった美しさや存在感がある。 その要因となっているのは、ゴルフから始まったMQBと呼ばれる生産方式が伸びやかなプロポーションを可能にしたからだ。 ワイド&ローの躍動的かつ落ち着きのある佇まいMQBはフロントアクスル(前輪の車軸)からペダルまでの間を共通化しているが、前輪は以前よりも前出しされている。従来のFFは前輪が比較的後方にあり、フロントオーバーハングが長くて不格好になりがちだったが、新型パサートはFRに勝るとも劣らないショートオーバーハング&ロングホイールベースの美しいプロポーションとなる資質を得たわけだ。 さらに、エンジン搭載位置が低くなったこともMQBになってからの利点で、デザイナーはそれらを最大限利用して、ボンネットを低く長くとり、Aピラーを後方に寄せてショートキャビン風にして美しさを際立たせている。 さらに、サイドには触れたら手が切れるのではないかというほどに彫りが深い彫刻的なキャラクターラインが入っているが、これは視覚的に低く見せる効果を狙っているという。横基調のフロントグリルが幅の広さを強調しているのと合わせてワイド&ローとなり、躍動的かつ落ち着きのある佇まいとなった。 プレミアム・ブランドも真っ青なインテリアの質感オーバーデザインではないが、プロポーションの美しさによって大いに存在感を高めた新型パサートだが、ボディの全長は従来よりも2mm短くしながら、ホイールベースは79mmも延長(※ドイツ仕様のセダンで比較)。これまでもFFの強みで後席の居住性は高かったが、さらに広々とした。BMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスに対して明確なアドバンテージがある。 インテリアはプレミアム・ブランドも真っ青なぐらいにクオリティアップしている。以前から質感は悪くなかったが、新型はエアコン吹き出し口を含む横一直線のラインが印象的で、クロームをふんだんに使って高級感が大いに増した。エクステリア以上にクラスアップしたように思う。 数多あるダウンサイジング直噴ターボの中でも秀逸日本仕様としてまず上陸したのは1.4TSI。先代モデルはダウンサイジング・コンセプトが浸透しつつあるなかでも「この大きさのボディに1.4Lで大丈夫?」と心配する声が聞かれたが、実際に走らせてみれば想像するよりもずっと頼もしいといった印象だった。 新型は最高出力を122PSから150PSへ、最大トルクを200Nmから250Nmへと、それぞれ先代から大幅に強化。メルセデス・ベンツC180の1.6L直噴ターボとほぼ同等のスペックになり、それなりに速いと言えるほどになっている。 とくに、アクセル開度が20~30%程度での力強さは、数多あるダウンサイジング直噴ターボの中でも秀逸な部類。DSGがダイレクト感を強調し、テンポ良くシフトチェンジしていくことも走りの印象の良さに繋がっている。日常的な速度域でも常にスポーティな感覚があるのが嬉しい。 ただし、発進時だけは最近の良くできたトルコンATに対して少しだけディスアドバンテージもある。半クラッチから完全に繋がっていく過程でトルク変動が感じられることがあり、スムーズさではトルコンATに譲るところがあるからだ。 ゴルフ以上の静粛性の高さ。動きの質もさらに向上エンジンが頼もしくなった以上に進化を感じられるのが快適性だ。とくにロードノイズや風切り音は低く抑えられており、静かさはかなりのもの。アクセルを全開にしてエンジンをぶん回せばそれなりの音量にはなるが、一般的な走行では3000rpmも回せば事足りるので気になることはない。思い返せば現行ゴルフの登場時にも静粛性の高さには驚かされたものだったが、上級クラスのパサートはそれ以上に力が入っている。 乗り心地も基本的には快適。オプションの18インチ・タイヤを履くモデルは、タイヤの硬さが目立ってしまうのが残念だったが、サスペンションはしなやかでストローク感がたっぷりとある。従来モデルもしなやかではあったが、動きの質はさらに高まったように思う。 微少入力域から抵抗感なくスッと動き始めるが、ストロークスピードは早すぎることなく巧みにコントロールされている。MQBになってからのフォルクスワーゲン車に見られる精緻感が、サスペンションの動きにも表れている。決して硬くないのに抜群の安心感があるのだ。 高速道路で際立つ快適性。ツアラーとしての実力も高い高速道路ではその恩恵がさらに際立っていた。ホイールベースが長くなったことも相まって前後に動くピッチングに落ち着きがある。ロール方向も然りで、フラットライド感が極めて高いのだ。ここまで高速クルージングが快適なフォルクスワーゲンは体験したことがなく、DセグメントやEセグメントのプレミアムカー達と比べてもトップクラス。直進安定性も高く、ツアラーとしても高い実力がある。 デザインやインテリアの質感、そして走りまで含めて、パサートは完璧に上級移行を果たしたとみていいだろう。わかりやすい派手さはないが、内容はプレミアムカーとかわりなし。それでいて価格はほぼ据え置きときている。設計や生産の合理化で抑えたコストは商品力アップでユーザーに還元するというMQBのコンセプトが見事にいかされているのだ。 スペック例【 パサート TSI Rライン 】 スペック例【 パサート ヴァリアント TSI ハイライン 】 |
GMT+9, 2025-6-24 16:11 , Processed in 0.497807 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .