スライドドアを採用し、カスタムモデルを廃止7代目となる新型「ダイハツ ムーヴ」が登場した。2023年に認証試験不正が発覚して以来、新車発表を控えてきた同社の、実に久々となる新車発表だ。 新型は1995年登場の初代以来の伝統であるリアヒンジドアをスライドドアに変更した。またベースモデルとカスタムの2本立ても廃止した。 ダイハツが「DNGA」と呼ぶ、スーパーハイトワゴンの「タント」、SUVの「タフト」、ハイトワゴンの「ムーヴキャンバス」といった軽自動車のみならず、登録車の「ロッキー」、「トヨタ ライズ」も用いる新世代プラットフォームが用いられる。 唯一ターボエンジンを搭載する最上級グレードのRS、RSに準じる装備のG、最量販グレードのX、廉価版のLという4グレード構成。今回はRSとXに試乗した。 <価格> |あわせて読みたい| 高速道路を走る機会が多いなら「RS」がおすすめRSは直3ガソリンターボエンジン(最高出力64ps、最大トルク100Nm)とCVTの組み合わせ。軽自動車の場合、最高出力が自動車メーカー間の自主規制によって64psまでに制限されるため、最新のムーヴであっても特別力強いというわけではなく横並びだ。 したがって各社、静粛性や振動の少なさ、燃費の良さを追求するのだが、RSのパワートレインは発進、自動車専用道路への合流、その後の巡航と、全域で静かでスムーズだ。CVTの特性もよく、アクセルを踏むとまずエンジン回転数だけが上がり、その後に速度が上昇する、いわゆるラバーバンドフィールもない。 続いて試乗した自然吸気エンジン(同52ps、同60Nm)とCVTを組み合わせるXは、これまたピークパワーは各社の自然吸気エンジン搭載モデルと横並び。いっそ軽自動車のパワートレインは生産する4社で共同開発してはどうかという意見もあるが、その通りだと思う。 ターボのRSと比較すると、トルクがないので加速時に必ずアクセルを深く踏むことになり、エンジン音が高まるため、静粛性の面で劣る。前述したラバーバンドフィールもやや残る。やはり軽自動車の場合、ターボは数十万円の贅沢だ。 RSは主に見栄えのために15インチタイヤを装着するため、バネ下重量が重い。このためRSのみ専用のダンパー(主に異なるのはオイルが往来するバルブ)が備わり、バタつきを低減させている。 14インチタイヤのXと比較すると、30km/h未満の低速域では道路の不整を通過する際にややバタつく。が、30km/h以上となると、RSの直進安定性のよさを感じるようになった。 トータルでどちらが乗り心地がよいか、はっきりとは決められないが、自動車専用道路での巡航時にはRSのほうがどことなく快適だったので、高速道路を走行する機会が多いならRSをオススメする。 RSには全車速対応のACCとLKC(車線中央維持アシスト)が標準装備される。自然吸気グレードでもGにはオプション設定があるが、Xには装着できない。この点でも高速道路を走行する機会が多いならRSがよいだろう。今どきの各社の軽自動車に備わるベーシックな安全装備は全グレードに標準装備される。 |あわせて読みたい| ドア以外の個性は薄いが、バランスの取れた優等生同じハイトワゴンのムーヴキャンバスに先に採用され、同車がヒットしたことも、ムーヴへのリアスライドドア初採用の大きな理由のはずだ。 RSでは左右ともに電動だが、GとXは左リアのみ電動で、右リアは手動(メーカーオプションで右も自動にできる。Lは両側手動でオプション設定もなし)。 手動の場合、ドアは軽く、開閉に力はさほど必要ない。スライドドアは車外からチャイルドシート(の子供)へアクセスしたり、足腰の弱い人が乗降したりする際には便利だが、ヒンジドアのほうが手っ取り早いのは事実で、ユニバーサル性能が必要ない世代にはさほどありがたみを感じない。 ただしリモコン操作によってクルマに近づきながらドアを開け始めたり、閉じ切る前にクルマを離れたりできるので、使い慣れるとまどろっこしさはなくなるかもしれない。 この日、RSとXに相次いで試乗し、Xではっきりと残念だったのは電動パーキングブレーキではないため、ブレーキホールドが備わらないこと。慣れるとなかった時代に戻れない機能の代表格なので、ある程度高価なクルマからダウンサイジングしてきた人には物足りないかもしれない。 走行性能の面では、ターボ、自然吸気ともに「スズキ ワゴンR」、「ホンダ N-WGN」、「日産 デイズ」、「三菱 eKワゴン」など、各社のハイトワゴンに劣る部分はなく、静粛性は一番ではないだろうか。 RSで189万円7500円、Xで149万500円(いずれもFWD)という価格もライバルを強く意識して設定されている。燃費もしかり。 リアスライドドア以外は、ムーヴじゃないと得られないものはないが、選びにくい要素もない。少し前まで生産そのものを長期間中止した影響で販売台数を落としていたダイハツだが、新鮮なモデルが登場したことで、以前のようによく売れるようになるのではないだろうか。 (終わり) (写真:ダイハツ、日産、ホンダ、スズキ、三菱) |あわせて読みたい| |
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