5世代目ステップワゴンの大きな特徴は2つステップワゴンがモデルチェンジした。新型は5世代目。1996年に登場した初代は、今では定番となっているミニバンの日本での先駆け的存在だ。ステップワゴン登場前のミニバン(という言葉も一般的ではなかったが)は、商用車ベースのキャブオーバータイプばかりで、どれも床が高く、乗り心地も悪かった。 そこへ、それまで多人数乗車モデルをもたなかったホンダが、乗用車に近いレイアウトと乗り味のステップワゴンを出したことで、ミニバンブームが本格化した。売れ筋ミニバンのニッサン・セレナ(1999年登場)もトヨタ・ノア/ヴォクシー(2001年登場)もステップワゴンのフォロワーなのだ。 新型の大きな特徴は2つ。新方式のリアゲートとダウンサイジングエンジンの採用だ。その新型ステップワゴンに触れ、また少しだけクローズドコースで走らせることができたので早速報告したい。 まずは新タイプのリアゲートに注目これまでワンボックスカーのリアゲートは上に大きく開くタイプか、半分ずつ両側に観音開きするタイプがほとんどだった。ところが、新型ステップワゴンで採用された「わくわくゲート」は、上にも開くし、一部が横にも開く。上に開く通常の大型リアゲート(メインドア)が左右2つに分割されていて、全体を閉じている場合、左側(サブドア)だけを開くことができる構造となっている。サブドアはリアゲートの半分より少し大きな、5分の3程度の面積を占める。 大きなリアゲートを開くには後方にスペースが必要だし、跳ね上げると小柄なユーザーには手が届きにくくなる。サブドアがあれば、狭いスペースでも荷物の出し入れができるだけでなく、人間の乗り降りもしやすい。ならば観音開き式にすればよいかというと、上開きには上開きの良さがあるので悩ましい。開口部を大きくできるので大きな荷物を出し入れしやすいし、アウトドアなどでクルマを“拠点”として使う場合、開けたゲートを軒として使えるので便利なのだ。 気になる剛性感も問題なし上開きと観音開きのよさの一挙両得を狙ったのがサブドアだ。まず上開きにしても横開きにしても、開口部の地面からの高さが445mm(FF車)に抑えられているので、荷物の出し入れや人間の乗り降りがしやすい。サブドアは3段階で開度を調整することができ、最少だと後方に40cmせり出すだけなので、後ろに壁が迫る駐車場に入れても開閉できるのは便利。 「わくわくゲート」とはよく言ったもので、実用的なだけでなくなぜか楽しい。サブドアから乗り降りするのは、玄関じゃなく裏の勝手口から家に入るみたいで新鮮だ。わくわくゲート導入に合わせ、新型は3列目シートを左右分割で床下へ格納できるようになった。サブドアが開く左側の3列目シートを格納しておけば、1、2列目へのアクセスも楽。サブドアは停車中に限って室内からも開けられる。 凝った仕組みを採用することで剛性感がどうかと触れるまで気になっていたが、どういう動きをさせても立て付けはしっかりしていたし、もちろん走行中に異音が発生するようなこともなかった。また、リアガラス内にピラーが存在することで、ルームミラー越しの後方視界の一部が遮られるのは確かだが、ピラーは細いので、慣れれば気にならなくなるレベルではないだろうか。 エンジンは1.5L直4ターボの1種類。ハイブリッドの検討は?新型には新しいエンジンが採用された。1.5リッター直4ターボエンジンで、最高出力150ps/5500rpm、最大トルク20.7kgm/1600-5000rpmを発する。幅広い最大トルクの発生回転域を見ればわかるように、完全なる実用エンジンで、官能性はほとんどないが、よく仕事をしてくれるタイプだ。 新型の車重はグレードによって1630~1700kg(FF車)と先代と同程度だが、スペックの面でも体感的にも2.0リッター直4エンジンが載っていた先代に劣らぬ動力性能を維持している。ターボエンジンの特性のためか、静粛性は全域で先代を上回る。JC08モード燃費は、先代が15.0km/Lだったのに対し、新型は17.0km/Lに向上した。 現在のエンジンラインナップは1種類のみだが、最大のライバルであるノア/ヴォクシーにハイブリッドがある以上、ステップワゴンでもハイブリッド採用が検討されているはずだ。ホンダにはアコード・ハイブリッドに採用される優れたハイブリッド・ユニットがあるのに、どうしてあれをオデッセイをはじめ他のクルマにも用いないのか不思議だ。オデッセイだけでなくステップワゴンにも採用すべきだと思う。 数十ミリの違いだが、より広く感じられる室内小排気量ターボエンジンの採用は、効率を上げるためでもあるが、室内スペースを稼ぐためでもある。エンジンをコンパクト化したことで、エンジンルームを40mm短縮し、全長をプラスすることなくホイールベースを35mm延長している。 これによって1列目と3列目のシート間隔を40mm延長し、荷室の前後長も20mm増した。この数十ミリの違いが体感的には大きく、新型は広くなったように感じる。またステップワゴンは伝統的にサイドウインドウを立てたデザインを採用してきたが、それは新型でも踏襲されていて、室内での圧迫感が少ない。 従来同様に2列目シートが左右で独立した7人乗り仕様と2列目シートがベンチタイプの8人乗り仕様が設定されるが、先代では8人乗り仕様がベースで7人乗り仕様がオプションだったのに対し、新型では7人乗り仕様がベースで8人乗り仕様がオプション扱いとなっている。 従来同様、優しい顔のステップワゴンと、強面のステップワゴン・スパーダの2シリーズが展開される。動力性能や室内のレイアウトなどは共通で、主に異なるのはフロントマスクと室内の素材や色遣い。ステップワゴンの室内は明るく暖かみのある色や素材が用いられ、スパーダはダークな色遣いで光るパーツが多用される。まぁだいたいトヨタでいうノアとヴォクシーの違いに準じている。 車両サイズと取り回しの良し悪し全長4.7m以下、全幅1.7m以下、全高2.0m以下で、エンジンの排気量が(ガソリンの場合)2リッター以下というのが、日本の「小型自動車」の区分、いわゆる5ナンバー枠だ。このうちいずれかを超えると3ナンバー車(普通自動車)となる。 1989年の消費税導入前までは、3ナンバーになったとたん、高額な税金が課せられたが、89年以降はサイズが大きく3ナンバー車となっても、排気量が2リッターを超えていなければ税額は5ナンバー車と同じになった。その結果、90年代以降、排気量は2リッター以下だがサイズが大きく3ナンバー扱いのモデルが増えた。 いっぽうで、税制が変わり、排気量が2リッターを超え、税金が上がったとしても、サイズは5ナンバー枠を堅持するモデルも根強く残った。5ナンバー車の基準のひとつである「全幅1.7m以下か否か」というのが、取り回しの良し悪しの判断基準としてユーザーの感覚に残ったからだ。取り回しのよさとサイズの関係は本当は漸進的なもののはずだが、実際には3ナンバー車=取り回しの悪いクルマ、5ナンバー車=取り回しのよいクルマとして認定されがちだ。 競争が激しいジャンルは面白いそのため、日本には少しでも車内スペースを稼ぎたいミニバンであっても、ギリギリ(サイズ的に)5ナンバー枠に留まる大きさのモデルが多数存在する。トヨタでいえばノア/ヴォクシー、ニッサンでいえばセレナ、そしてホンダのステップワゴンもそうだ。女性も運転することが多いこれら実用ミニバンジャンルでは、5ナンバー枠内に収めるのがマストと考えられている。 どのメーカーも5ナンバー枠を守ったうえで最大限のスペースを稼ぎ出そうとするため、どうしても似かよったスタイルになる。動力性能、燃費性能も接近しているが、モデルチェンジの度にライバルを少し上回るため、新しいモデルであればあるほど有利。だからといって実用系ミニバン選びが味気ないかというとそうでもない。少しでも存在感を示そうと、どのメーカーも努力を重ねているからだ。 ノア/ヴォクシーの豪華仕様であるエスクァイアの新設などもそうだが、新型ステップワゴンのわくわくゲート採用はそうした企業努力の典型例だ。競争が激しいジャンルは力が注がれていて面白い。それにしても、リアのサブドアから乗降するのがどうしてあんなに楽しかったのか、自分でもよくわからない。 スペック例【 G・EX 】 【 スパーダ Cool Spirit 】 |
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