何粒分ものおいしさ4枚ドアの持ち主ながら、大きなテールゲートを備えたプロポーションは、流れるようなファストバック。かくして、「クーペのようにスタイリッシュなのにセダンのように実用的で、ユーティリティ性の高さはステーションワゴン並」と、まさに何粒分ものおいしさを狙った贅沢で欲張りなモデルが、Audi A7スポーツバックだ。 2010年誕生のこのモデルに、このほど大掛かりなリファインの手が加えられた。リファインのプログラムはA7スポーツバックに加え、実質的にはその8気筒版であるS7スポーツバックと、高性能モデルの開発と生産などを担当するアウディの子会社・クワトロ社が手掛けた、RS7スポーツバックにも適用される。 と同時に、新たなエントリーモデルとして価格を700万円台に抑えた、2リッターの4気筒エンジンを搭載するグレードが設定されたことも大きなトピック。ただし、こちらの「2.0 TFSI クワトロ」は、日本では8月以降にデリバリーが始まる。 今回は従来から継続グレードである「3.0 TFSI クワトロ」と「RS7」の2モデルをテストドライブした。 自分好みの1台へと仕上げる楽しみまずは、ミトスブラックメタリックのオプション・ボディカラーに、やはりブラック基調のインテリアカラーを組み合わせた「3.0 TFSI クワトロ」から。こう文字にしてしまうと、何とも暗くて面白みに欠けるとも解釈をされてしまいそうだが、実はそのインテリアでは巧みな「ジミハデさ」が演じられていた。 その重要な役割を担っていたのが、オプション装着されていた「アルミニウム・ビューフートウッドブラック(43万円)」なる長い名称のデコラティブパネルだ。ピアノブラック調のベース部に細いメタリックの横縞ラインが加えられたこのパネルが、ダッシュボードやドアトリム、コンソールの一部などに配されたことで、ブラック基調でありつつもビジネスライクな雰囲気が見事に一掃されていた。 アウディ車には、世界に1台の仕様を作り上げるオーダーメイド・プログラム「アウディ エクスクルーシブ」が設定されている。が、そこまで凝らなくても多彩な通常オプションの範囲内で、それに準じた自分好みの仕様を得ることも可能なのだ。 例えば、A7スポーツバックでは前出のデコラティブパネルが7種類で、ボディカラーは11色から選択可能。さらにインテリアの素材とカラーも……となれば、この範囲の中だけでも「自分好み」を仕上げられる可能性は、大いに高い。 このあたりも、アウディが真のプレミアム・ブランドであると、世界で認められる一因であるはずだ。 スーパーチャージャーの恩恵と高められた静粛性7速DCTとの組み合わせで搭載されるエンジンは、90度のVバンク間にメカニカル・スーパーチャージャーをレイアウトした3リッターユニット。ただし、従来は直噴のみだったインジェクション・システムにポート噴射機構を加え、発生トルクが250Nmもしくはエンジン回転数が3000rpmに達した時点でスーパーチャージャーを休止するクラッチをプラス。これらにより、出力と燃費の双方を改善したことが新型での見どころだ。 横浜近郊を基点とした今回のテストドライブでは、その恩恵を実感できる場面は多くはなかったが、「従来型よりも23psの最高出力アップ」と聞くまでもなく全域で十分にパワフル。かつ、回転の伸び感などのフィーリングも良好だった。 ちなみに、ロードノイズや時速40~50キロ付近で意外に気になる空洞音など、相対的に目立つタイヤノイズのボリュームを下げて欲しいという印象は残ったものの、静粛性がさほど速度に依存せずに優れて感じられたのは、今回の全モデルで標準採用になったという、ウインドシールドとフロントドアに採用された「アコースティック・ガラス」の効果も含まれているはずだ。 リアシートは従来の2人掛けから3人掛けへと変更されたが、見栄えはさほど変わっていない。非常時に合法的に5人乗車が可能になったことで、購入へのハードルが下がる人も現れそうだ。 とことん速く、とことん贅沢一方のRS7スポーツバックは、最高560psと怒涛の出力を発するツインターボ付きV8エンジンを手付かずで踏襲。ただし、コーナー部分をより明確にしたシングルフレームグリルや新形状のバンパー採用など、見た目のリファインはA7と同様のメニューで実施された。 流れるように点滅する「ダイナミック・ターンシグナル」を内蔵するマトリクスLEDヘッドライトも、このタイミングで新採用されている。 アルミ材を積極採用するなど、軽量化を追求した「Audi ultra」を謳うアウディ車だが、このモデルの車両重量は2トン超。だが、アクセルペダルに軽く触れただけで始まる怒涛の加速力は凄まじいばかり。何しろ、0-100km/h加速は3.9秒! まさにスーパーカー級だ。 低速時には極めて軽いのにその後は突然重さを増すステアリングがもたらすゲインの高い回頭感や前出の加速感など、いささか演出過剰と思わせる部分が無いではない。だが、そうした「分かりやすさ」も、そもそもすこぶる顕示性の高いこのモデルならではか。 そんなRS7スポーツバックでは、21インチという大径のオプション・シューズを履くのに、むしろ「3.0 TFSI クワトロ」よりも路面へのあたり感がマイルドであることに驚かされた。とことん速く、とことん贅沢。それこそが、このモデルの狙う道なのだ。 A7 スポーツバック 3.0 TFSI quattro・主要スペック全長×全幅×全高=4990×1910×1430mm RS7 スポーツバック・主要スペック全長×全幅×全高=5010×1910×1425mm |
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