その名も“アイ アクティブ エーダブリュディー”CX-5にアテンザ、アクセラ、デミオ、そして最新のCX-3。スカイアクティブテクノロジーと魂動デザインが採用された新世代商品群が軒並みヒットを飛ばし快進撃が続いているマツダだが、じつはもう一つの注目ポイントは、これらすべてに用意されているAWDも渾身の力を込めて新開発されたシステムだということ。これまで声高にそれを主張することはなかったが、新世代商品が一通り出揃ったタイミングで、それを周知徹底させるべく雪道でのAWD試乗会が開催された。 マツダのAWDは基本的にはFFで走りつつ必要なときに後輪も駆動するオンデマンド式で、本格的なフルタイム4WDに対して「生活4WD」などと呼ばれて下に見られることもあるタイプだが、試乗してみると驚くほどの性能を発揮する。 駆動力配分にビスカスカップリングを利用した場合には前輪が滑ってから初めて後輪が駆動を開始するパッシブ(受動的)だが、マツダのAWDは電子制御多板クラッチを採用しているのでアクティブ(能動的)な駆動配分が可能。しかも、様々なセンサーの情報から車両や路面の状況、ドライバーの要求を読み取り、先回りして駆動力配分することによって、既存のアクティブオンデマンド4WDよりも高度な制御を実現する。 その名は『i-ACTIV AWD』。知能的にアクティブな制御をするという意味合いだ。 「AWDは燃費が悪い」の常識を吹き飛ばす!?コンセプトはどんな路面でもタイヤのグリップを確保して安心・安全を提供して走る歓びを感じてもらうことにくわえ、驚くことに「AWDは燃費が悪い」という常識を吹き飛ばすべく、FFと変わらぬ燃費性能をも目指している。 CX-3のJC08モードを見ると、FFが23.0km/Lなのに対してAWDは21.0km/Lと少し負けてはいるが、雪道など滑りやすい路面での駆動損失はFFの方が大きく、降雪地帯のユーザーならば年間トータルの実用燃費で考えれば同等かそれ以上になる可能性もあるという。 多数のセンサーを駆使して滑りを予測する『i-ACTIV AWD』が活用するセンサーはドライバーの意図を読み取るものとしてアクセルペダル位置、ステアリング舵角、ブレーキ液圧、路面状況用に前後ワイパースイッチ、外気温度、エンジン空気量/回転数、ステアリングコラムトルク、パワーステアリングモーター電流、前後加速度、そしてスリップ予兆を認識するスリップ比/前後回転差など。1秒間に約200回演算しているという。 もっとも重要なのは、タイヤが滑ったり何か事が起きてから反応するのではなく、次の挙動を予測し、素早くタイムラグゼロで反応して前後に駆動トルクを配分していくことだ。 ポイントは「対地速度」を正確に測る独自技術各センサー類はこれまでも車両安定装置などで用いられているものがほとんどだが、活用の仕方にアイデアが詰まっている。 例えば、路面の摩擦係数が下がってきたことを、パワーステアリングモーターが反力の小ささから判断しても、路面付近の外気温度が高ければ氷や雪ではなくウエットだと判断。最適なトルク制御をする。 そして、システムのなかでもっとも重要な前輪スリップ予兆検知は、前後回転差を見ているのはもちろんのこと、一般的にはタイヤの回転数から把握する速度情報ではなく、独自に正確な対地速度を測って用いているのが要。タイヤ回転数からの情報だけでは、とくに滑りやすい路面で誤差が生じやすいが、その他のセンサーからの情報も加味して対地速度を把握できれば、より正確に、素早い制御が可能となるわけだ。 フルタイムAWD並の性能を確保する小技もまた、これまではクルマ側もドライバーもスリップと判断していなかった、タイヤ1/50回転程度の微少スリップをも把握し、積極的に後輪駆動を行っているという。 スリップを察知してトルク制御するまでのタイムラグをゼロにするためには、リアに予め微少なトルクを伝えておき、駆動系のわずかな内部クリアランスを詰めておくという手法が使われている。 滑りやすい路面を走っていると判断している時は十分なトルクを伝えておくのはもちろんのこと、ドライでも低・中速域で1%、高速域で5%程度はリアが駆動しているという。燃費悪化を最小限に抑えつつ、フルタイムAWD並の性能を確保する秘訣だ。 いちばんわかりやすいのは登坂路の発進試乗で高性能ぶりが一番わかりやすかったのが雪の登坂路での発進だ。 斜度15°というFFだったら途中で停まることは避けたいほどにキツい登り坂で、あえてクルマを斜めに停め、ステアリングをいっぱいに切った状態でスタート。一番いじわるな状況だがほとんどスリップすることなくあっけなく発進できてしまった。 発進地点にクルマを停めたとき『i-ACTIV AWD』は、外気温やステアリングトルクで雪道であることを判断し、勾配のあるところで車速ゼロにしたので、次は滑りやすい路面で坂道発進することを予測。予め後輪へ40%ほどトルクをかける状態になっている。だから、最初のタイヤのひと転がりから後輪が路面を蹴ってくれるのだ。 試しに、他メーカーのオンデマンド式AWD車で同じテストをすると、前輪が空転してから後輪が駆動し始め、明確なスリップを感じさせつつ登っていった。路面がもっと滑りやすかったら危ういぐらいなうえ、ハンドルを切っているので意図したよりもラインがずれ、安心感を少し損なっていた。 ワインディングではFR的な走りも可能『i-ACTIV AWD』は発進が頼もしいだけではない。ワインディング路ではトラクションが安定しているだけではなく、減速時でも安心感が高いのだ。 雪道をいいペースで走りながらアクセルを戻すと、エンジンブレーキがリア側でも効いてくれるので姿勢が安定したまま減速がなされ、ステアリングの効きも確保しやすい。だからパドルシフトで積極的にシフトダウンしていく気にもなる。安心感が高いから走りの歓びも得られるのだ。 その気になってアクセルを積極的に踏み込んでいくと、リアを意図的に振り出し気味にすることさえ可能。ステアリング舵角やアクセルの踏み込みから、ドライバーがパワーオーバー気味の挙動を望んでいることを判断してくれるのだ。 逆に、コーナリング中にアクセルをサッと戻せばスーッとノーズを引き込むこともできる。ジムカーナ的なコースではまるでFRのように走れるのだった。 思った通りにクルマが走ってくれるAWDを利用してドライバーの思い通りにクルマが動いてくれるのは痛快。それは雪道以外でも効果を発揮するという。ドライでもある程度のスピードでコーナリングすれば、より加速を良くするべく後輪を駆動したり、突然ウエットに突入したことを察知したら後輪トルクを増大して安定性を増してもくれる。 素晴らしいのは、そういった制御をドライバーには感じさせず、ただひたすら、思った通りにクルマが走ってくれることだ。タイヤが滑ってしまえば、それ自体をドライバーは感じ取るうえ、滑ってからは制御も大げさにせざるを得ないのでクルマが何かをしようとしているのがわかってしまう。 だが、滑りそうだと予測して先回りし、ドライバーが滑っていると感じ取れない領域から制御し始めれば、何事もなかったかのように走れ、しかも高い一体感が得られるのだった。 AWD性能・走り・燃費の三拍子が揃う比較としてFFにも乗ってみたが、注意深く観察していると、たしかに挙動変化するわけではないが、微妙に前輪が滑っている領域がある。そこではたしかにエネルギーロスが生じているだろう。 『i-ACTIV AWD』で雪道を走ればそれが大きく低減できるのは体感的にもわかる。従来マツダで採用されてきたオンデマンドAWDと比較すると徹底的な軽量化、各ギア部で使うオイル量の最小化などでユニット回転ロス、機械効率ロスなども低減されており、トータルで79%ものエネルギーロスを低減することに成功したという。 フルタイム4WD並の性能にマツダならではの一体感の高い走り、そしてFFに迫る実用燃費。これをFFに比べて約20万円高で実現しているのでコストパフォーマンスも高い。世界的にみてももっとも賢いAWDシステムと言えるだろう。 スペック【 CX-3 XD ツーリング Lパッケージ(4WD) 】 【 デミオ XD ツーリング Lパッケージ 】 【 アテンザワゴン XD プロアクティブ 】 【 CX-5 XD プロアクティブ 】 |
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