Cクラス、3シリーズなどの競合モデル3月はじめに開通した首都高中央環状線渋谷線~湾岸線間。全区間トンネル(JCT付近を除く)で、用地買収を避けるために山手通りと目黒川に沿って掘られていて、途中で地下鉄を避けてもいるため、トンネルなのに上下左右にクネクネだというではないか。そんなタイミングで「2015年版のキャデラックATSでどこへでもどうぞ」という機会を得たので、同区間を走らせてみた。 ATSは2012年に新生GMの起爆剤としての役割を担って登場した。キャデラックはATSをエントリー・ラグジュアリー・スポーツセダンと分類する。要するにエンジン縦置きRWDのメルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズあたりとがっつり競合するモデルだ。この夏に日本導入が予定されているジャガーXEもここに属する。ライバルの多くと同じように、セダンのほかに2ドアクーペもある。 新ブランドロゴ「キャデラック・クレスト」が素敵今回、我々がテストしたのはセダンのプレミアムという仕様だが、2015年版からクーペも日本に導入されるようになった。これが端的に言ってセダン以上にカッコいい。セダンはペキペキとしたステルス攻撃機系のデザインで、ひと目でキャデラックとわかってこれはこれで悪くないのだが、クーペは同じ系統のデザインでありながら各エッジが少し丸みを帯びてエレガント。勘どころを押さえた美しさだ。 2015年モデルとなって、いくつかのアップデートが施された。セダンの見た目の変更は最小限で、フロントグリルとフロントバンパーのデザインが新しくなった程度。キャデラック・ブランドが新しく「キャデラック・クレスト」というロゴマークを使うようになったのに合わせ、ATSにもそのエンブレムが付くようになった。軍服の胸の略綬みたいでなかなか素敵だ。 最大トルクが向上、安全装備はさらに充実2リッター直4直噴ターボエンジンはそのまま搭載されるが、チューニングが変わって最大トルクが35.9kgm/1700~5500rpmから40.8kgm/3000~4600rpmに向上した。最大出力276ps/5500rpmは変わらず。数値だけを見ると最大トルクが向上した代わりに発生回転域が狭まったように見えるが、実際には2100~3000rpmでも最大トルクの90%、すなわち36.7kgmを発揮しているそうなので、全体的にトルクが太ったことになる。 また、デビュー当時としては充実していた安全装備が、2015年のラグジュアリーカーとしてふさわしいレベルに引き上げられた。衝突軽減ブレーキ、全車速追従機能付きのアダプティブ・クルーズ・コントロール、レーンキープアシスト、車線変更警告、後退時安全確認警告など、いわゆる先進的なデバイスは、日独の高級車に付いているものはほぼ全て備わる、というかアメリカ車が率先して採用してきた機能も少なくない。 全体として、ATSは昨年日本導入されたひとクラス上のCTSに準じる性能と装備を手に入れたことになる。 ワインディングでも安定した挙動聞いていた通り、中央環状線渋谷線~湾岸線間はなかなかのワインディングロードだった。高架の渋谷線と地下の中央環状線をつなぐ大橋JCTは、らせん階段のようにぐるぐる何周も回ることで高低差を埋めるのだが、クルマのハンドリングのよさを確かめるのに適している。 なかにはバランスが悪く一定のペースを保つのが難しいクルマもあるが、ATSは身体が反応するままにステアリングを切るだけで、安定してぐるぐると回り続けることができた。優れた前後重量バランスとサスペンション設計やセッテイングが最適なのだろう。ステアリング切り始めの挙動だけが異常に鋭い、誤ったスポーティーさもない。 1000分の1秒単位で減衰力を瞬時に変更走らせたのが真新しい舗装路なので、乗り心地と静粛性については多少割り引いて考える必要があるのかもしれないが、そのふたつがATSの最も得意とするところであることは間違いない。 乗り心地については、マグネティックライドコントロールという磁性体で減衰力を制御するダンパーの恩恵が大きいはずだ。キャデラックが好んで使うこのシステムは、必要に応じて1000分の1秒単位で減衰力を瞬時に変えられる。例えば、ギャップを乗り越える一瞬だけソフトな足まわりとなり、乗り越えると即座に引き締まった足に戻ると想像してもらってかまわない。 ジャーマン・プレミアムと比べても遜色ない出来栄え静粛性に関しては、オーディオメーカーのBOSEと共同で開発したアクティブノイズキャンセレーションシステムが明らかに効果を発揮している。これは車載のオーディオ用スピーカーから騒音を打ち消す音を出すことで人間が騒音を感じなくなるという仕組み。近頃、他メーカーもこぞって用いているやり方だ。この仕組みを使うことで遮音材を減らすことができ、軽量化にもつながるという。軽量化と静粛性改善はどちらかというと相反する項目のはずだが、音響によって両立を図るとは、ハイテクって素晴らしい。 前述したように最大トルクが10%ほど向上したが、ATSは元々トルキーなので明確な違いは感じ取れなかった。欧米のメーカーがこぞって採用する2リッター直4ターボの中でも、キャデラックのエンジンはレスポンシブで力強い部類に入る。振動も少ない。快適かつ安定感のある足まわりや充実した安全装備のおかげもあって、ついついアクセルペダルを踏み込んでしまいがち。理性が求められるサルーンだ。 左ハンドルしか設定されないことと、アイドリングストップが備わらないことは、日本市場でのビジネスを考えると多少不利と言わざるを得ない。ただ、逆にその2点が苦にならない人にとっては、ジャーマン・プレミアムと比べても遜色ない出来栄えでありながら、街でしょっちゅうすれ違う心配もない、渋い選択といえる。仲間に「その手があったか!」と言わせたい人にオススメしたい。 スペック【 セダン プレミアム 】 |
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