ホンダのセダン、グレイスに乗ってみたグレイスは、最近には珍しくファミリカーであることを前面に打ち出したモデルだ。近頃は、結果としてファミリー層に人気のあるモデルは存在するものの、売る側がはっきり“家族向け”などとターゲットを明確にするモデルは少ない。その点、グレイスは女性歌手がなかなか印象的にカバーするQUEENの「somebody to love」をバックにいろいろな家族のカーライフを紹介するテレビCMからもわかるように、はっきりと家族向けを謳っている。 はっきりファミリー層がターゲットどこにいるだれを狙ったのかよくわからないクルマが多い中、はっきりファミリーをターゲットにしたであろうグレイスは、だから迷いなく開発されていてすべてにおいて明快だ。“運転しやすい外寸でありながら家族4~5人が無理なく乗車できる車内空間が確保された、効率の高いハイブリッド・セダン”として、よくできている。見ても乗ってもまったくスポーティーじゃないし、スタイリングは潔いほどに少しの冒険も感じられないが、それもそのはず、そんなの目指していないのだ。 フィットハイブリッドのセダン・バージョン1.5リッター直4エンジンにモーターを内蔵した7速デュアルクラッチ・トランスミッションを組み合わせたパワートレーンは、人気モデルのフィットハイブリッドと共有…というか、このクルマは事実上フィットハイブリッドのセダン・バージョンであり、見えない部分は多くが共有されている。最大の違いは、向こうがハッチバックでこっちがセダンということ。グレイスは独立したトランクをもつ分、全長が50cm弱長い。 市街地のストップ&ゴーがイージー夕方の渋滞した都心から試乗スタート。モーターのみで発進し、ある領域からエンジンによる駆動に切り替わり、その後、モーターが必要に応じてパワーアシストしたり回生したりする挙動はフィットハイブリッドと同じ。サイズが大きい分、グレイスの車重は1200kgとフィットハイブリッドよりも数十キロ重いが、モーター駆動特有の発進直後の力強さがあるので、ストップ&ゴーを繰り返す市街地などでは一切痛痒を感じない。発進からしばらくして車速が20km/hくらいになるとエンジンが始動するが、その際の振動もうまく抑えこまれていて気にならない。 素直でくせがないハンドリングギアセレクター脇にスポーツボタンがついていて、押すとアクセルレスポンスが向上し、エンジンを高回転まで使い、積極的にモーターアシストされるようになるのだが、ノーマルモードでも十分に必要な力強さを得られるので、このクルマの性格を考えると、あまり必要性を感じなかった。ハンドリングはどこまでいっても素直。一切くせがない。特徴もない。それでいいと思う。トランク下に駆動用バッテリーが搭載されているせいで、コーナーを曲がるときに重心の低さからくる安定感を感じるあたりはプリウスにも通じるところがある。 フィットやライバルを上回る広い車内乗り心地はフィットハイブリッドよりもいくぶん落ち着きがあるようにも感じられた。前席、後席ともに快適だ。特に居住空間と荷室が分離されているため、後席はフィットハイブリッドよりも静か。それにしても室内が広い。室内長はフィットより約10cm長く、後席の足元が広々している。室内高はフィットよりも5cm低いが、セダンとしては十分な頭上空間が確保されている。同クラスのセダンであるカローラアクシオやニッサン・ラティオと比べても、室内長、室内幅、室内高のいずれもグレイスのほうが上回っている。トランクスペースは430リッターという絶対容量も優れているが、凹凸がなく使いやすそうな形状なのがありがたい。ゴルファーが喜ぶ形状だ。 高速道路も使ったテストドライブ燃費は20km/LJC08モード燃費は31.4km/L(試乗グレードのハイブリッドEX・FFの場合)とさすがのカタログ燃費。都心を数時間ぐるぐるしたほか、東名高速で東京~箱根を往復した結果、実際の燃費は20km/Lだった。ハイブリッドは高速道路での燃費をあまり得意としないが、東名を元気よく走らせたわりに好燃費を記録したという印象だ。 グレイスは、ユニークな機構でユーザーを驚かせてやろうとか、すれ違う人を振り向かせてやろうといった、なんというか貪欲な特徴は一切ないが、その代わりどこにもネガティブなポイントがなく、自分と同乗者を快適に、かつ経済的に移動させるというファミリーセダンの本分をまっとうしている。なんというか、そんなにクルマに興味があるわけじゃないものの、生活するうえでクルマは絶対必要だという、リタイアした親に薦めたいクルマの筆頭だ。 スペック【 グレイス ハイブリッド EX 】 |
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