トヨタ初のダウンサイズエンジンを搭載デザイン、燃費、価格の三種の神器が揃えば売れる風潮があるが、やはりクルマは走ってナンボ。楽しさ、快適性、気持ちよさ、心地よさなど、乗り味も大事だと考える人は、この試乗記に注目だ。トヨタは今まで以上に走りの価値に注力しつつあり、今回の4台はその好例なのだ。早速、千葉県は袖ヶ浦サーキットの試乗会から紹介していこう。 トップバッターは、オーリスのマイナーチェンジに合わせて設定された新グレードの「120T」。注目はトヨタブランンドとして初搭載となる直噴ターボ・ガソリンエンジン、通称ダウンサイジングエンジンを心臓としていることだ。 欧州市場では新世代のガソリンエンジンとしてすでに定番で、日本市場に入ってくる欧州車を見ても、ノンターボエンジンを探すのが難しいほど市民権を得ている。小さなエンジンでも直噴ターボ化すると低回転トルクが太り、効率よく走らせることができる。オーリス 120Tで言えば、アクセルの踏み込みが少ないときには1.2Lエンジンの燃費を、アクセルを踏んだときは最大トルク185Nmという2Lエンジン並の加速力を得られると理解しておけばいいだろう。 CVTの組み合わせはDCTよりスムーズ加速と燃費の両立が魅力のダウンサイズエンジンだが、この120Tは欧州のダウンサイジングエンジンと違い、燃費性能とスムーズさを優先してCVT(無段変速機)を組み合わせてきた。スムーズネスは驚きのレベルで、滑らかな走り出しや、速度コントロールのしやすさ、さらに変速ショックなくグイグイ加速する感触に、モーターを使ったハイブリッドかと勘違いをしたほどだ。 欧州車は直噴ターボにツインクラッチ式トランスミッションを組み合わせているが、発進や加速時にギクシャクしやすい欠点があり、CVTを組み合わせたオーリスのスムーズさは魅力だ。逆に、加速の高揚感や刺激は少ないと言えるが、それも狙いだろう。 フランス車のような、コシがあるのにしなやかな乗り心地や、高い静粛性能も備えている。こうした魅力に加え、メッキグリルや新内装も採用したオーリス 120Tは楽しく走れる高級コンパクトカーと言えそうだ。 トヨタの「G's」が目指す世界とは?次に紹介するのは、G'sラインナップに新たに加わったハリアーとプリウスα。 そもそも「G's」をご存知だろうか? トヨタは様々なレース活動を行うが、そのひとつ「GAZOO Racing」では“いいクルマづくり”には数値や机上論ではなく“乗り味”が大切で、まずはそれを仕上げる人とクルマを鍛えることが必要として、世界一過酷な耐久レース「ニュルブルクリンク24時間レース」などに参戦している。 ここで培われた技術や経験を使い、スポーツカーの楽しさをすべての人に届けるために開発されたのがG'sだ。自動車メーカーでなければできない溶接のスポット増しによるボディ剛性向上や、製造ラインで組みつける専用内外装の品質の高さはもちろん、タイヤ、ホイール、足回りなどに専用アイテムをおごり、それらすべてに保証も付く。購入後のチューンでは実現不可能な手頃な予算で、フロントのトヨタエンブレムさえ取り外された個性的なルックスや、ノーマルにはない乗り味が手に入るのだ。 では、G'sの目指す「乗り味(走り味)」とはなにか? G'sにはアクア、ヴィッツ、マークX、プリウス、そして今回のハリアーとプリウスαがあるが、共通しているのは意のままに動く事だ。もちろん、カテゴリーが異なればドライバーが求める要望も異なってくるから、一言で意のままに動くと言ってもその表現方法は異なる。興味深いことに、こうして生み出されたG's各モデルは「乗り味」もそれぞれ異なっていた。 ハリアーは乗り心地とスポーツ性を両立ボディの大きさと個性的デザインから、G's…いやトヨタ車でトップを争うほどの迫力を醸し出すG'sハリアーだが、走り出すと拍子抜けするほど乗り心地が良い。明らかに作り込まれた乗り味で、サーキットの縁石に乗り上げても足が見事なまでに吸収し、乗員は無駄にグラグラせずに乗車していられる。 柔軟な足回りにすると、ブレーキを踏んだ際や、カーブの曲がり始めでグラッとする動きが生じやすいが、ハリアーではそれが抑えられている。ブレーキ時に姿勢が安定すると、走っていて安心できるのはもちろん、同乗者もクルマ酔いしにくい。山道などで必要以上に同乗者に気を使わなくて済むこともまた、意のままに運転できる要素と言いたげな乗り味なのだ。 最も驚いたのは快適性を実現しながら、タイヤが鳴くほどハードなスポーティドライブにも耐えること。足回りはしなやかさの奥にしっかりとしたコシがある感覚で、ある程度まで動くが、動きすぎることがない。SUVは多人数でロングドライブする頻度が高く、乗り心地が良くないとそもそも楽しみが半減する。そんな作り手の声が聞こえてきそうだ。 名車プリウスαもお手本のような走りに似たようなテイストはプリウスαにもあるのだが、全高が低いことも関係してか、よりクルマの姿勢変化が抑えられ気持ち良く走れた。勘違いしてもらいたくないが、プリウスαの方が良いという話や観点ではなく、カテゴリーの違いが明確に出ている。 実は素のプリウスαが隠れ名車だ。バッテリーが後方の下側に積まれて前後重量配分に優れ、それでいて低重心。さらにはクルマ酔いの原因でもある加減速での前後の傾きをモーターを使って抑制するバネ上制振制御まで備わっている。こうした素性の良さを最大限まで活用した印象があり、ハッキリ言おう、この乗り味をこの価格で得られるのはすごい。 ボディがしっかりとしており、電動パワステの味付けも見事で、すべての操作に意のままに動く。特筆すべきはハンドル操作への反応の良さで、ハンドルを切る際は当然として、戻しに対しての反応がとても素直だ。連続するカーブでは、ハンドルの戻し操作は、次のカーブへの切り込み動作でもあり、意のままにクルマを操るための重要なポイントになる。姿勢変化を抑えると快適なだけでなく、4つのタイヤが的確に使え、足をガチガチにしなくても走りの味を洗練させられるお手本のような乗り味だ。 86もゴロゴロ感が減り走りは別物に最後に、私自身も所有する86がマイナーチェンジで進化していたので報告しておこう。クルマの進化は嬉しい限りだが、オーナーは複雑な心境になるときもある。正直に言えばというか、進化&洗練させたのだから当然だが、同じ86でも乗り味が別物だ。 走り出したときから即感じられたのが、タイヤのゴロゴロ感の少なさ。タイヤのグリップ感が掴みやすいので、ゴロゴロ感はあった方が良いと“今までの86”では思っていたが、適度にゴロゴロが抑制されたことで、よりグリップ感や乗り心地が洗練された。隣にいるのに大声で話されるよりも、適度な声で話してもらった方が聞き取りやすいし会話が楽しめるのと同じだ。 これを生み出しているのが、ボディ剛性の向上と電動パワーステアリングの洗練。やはりボディ剛性はすべての性能の源だ。スポーツをする人にとって、体幹の強さに値するもので、これがしっかりすると全てのパーツが的確に動き、機能しはじめる。クルマで言えば、意のままに動く原動力となる。前述したゴロゴロ感も、ボディがしっかりして足回りのダンパーに振動が集約され、効率よく的確に無駄なゴロゴロが抑えられている。 ドリフトが楽しみたければ前期型!?全体的な一体感やグリップ感も増している。特にリアタイヤの食いつきが良くなったのが素晴らしい。リアがしっかりと路面を捕まえているので、人間で言うと足を踏ん張ってフットワークが鋭くなるように、ハンドル操舵への反応が素直でダイレクトになった。電動パワステの中立付近の反力制御の精度も上がり、そのダイレクト感がそのまま掌に伝わってくるので、タイヤのブロックのヨレさえつかめそうな雰囲気まである。 旋回スピードが高まっているため、サーキットではタイムも期待できるはず。同時にリアが食いつくので、若干フロントタイヤが押し出される安定傾向の乗り味になったので雨の日も安心して気持ち良く走れるはず。簡単な話が、スバル BRZ寄りの味付けに近くなった。 新型はリアが一生懸命踏ん張るようになったので、リアタイヤの滑り出しに若干唐突感があるし、ドリフトに持ち込むには適正な操作が必要にもなった。何が言いたいのかというと…競技ドリフトは別として、たまにサーキットでドリフトまで楽しみたいという人は、意外にもマイチェン前もおすすめだ。今後は中古車で探すしかないが…。 スペック【 オーリス 120T 】 【 ハリアー エレガンス“G's” 】 【 プリウスα S“ツーリングセレクション・G's”(5人乗り)】 【 86 GT“リミテッド” 】 |
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